テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が「会社の利益率を高める方法」について解説します。

  • 会社の利益率を高める方法

会社が掲げる大きな理由のひとつは、利益をあげることです。さらに、その利益をいかに効率的にあげるかということも重要です。会社の実力を総合的に評価する指標として、経営に投下した資金がどの程度効率的に運用され、利益を生み出しているかを見る必要があります。

今回、会社の収益性を見る上で、代表的な2つの指標を紹介します。

総資本経常利益率(ROA)

総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本(総資産)×100

「総資本経常利益率(ROA)」は、会社が投入した資本に対してどれだけの利益を上げたかを表す指標です。利益を上げるにあたり、どれほど資本を効率的に利用できたかを確認できます。ROAの目安は5%と一般的には言われていますが、業種によって異なります。

自己資本当期純利益率(ROE)

自己資本当期純利益率(%)=当期純利益÷自己資本(純資産)×100

「自己資本当期純利益率(ROE)」は、株主が投下した資本でどれだけの利益を上げたかを表すものです。会社として、株主の資本をいかに効率的に活用できたかを確認できます。ROEの目安は10%と一般的には言われますが、こちらも業種によって異なります。

単に利益の金額ではなく、効率よく利益を上げているか示す例を見てみましょう。

(例)下記の2社でROAを比較してみます
A社:経常利益10億円、総資産200億円
B社:経常利益5億円、総資産50億円

A社のROAは5%(計算式:10億円÷200億円)、B社のROAは10%(計算式:5億円÷50億円)となります。このA社とB社がどちらも同じ業種だったと仮定すると、利益額こそA社のほうが高いですが、ROAの高いB社の方が資産を効率的に活用して利益を稼ぐことができていると言えます。

ただし、業種により目安が異なるため、ROAは異業種間での比較には適していません。工場など大きな設備が必要となる業種では総資産も大きくなります。一方、IT産業のように大きな設備投資の必要がなければ総資産はそれほど大きくなりません。

これらを比較すると、設備投資を必要とする業種の方がROAは低くなりますが、だからといって「ROAが高くなる設備投資が必要な業種に投資することはダメで、IT産業に投資すべき」とはなりません。ROAは同業他社と比較して優劣を判断したり、同じ会社の年度別の推移を見て改善の状況を確認する、といった使い方をすると良い指標になります。

ROAとROEはよく似ていますが、計算式の分母に違いがあります。分母に「総資産」を用いたものがROAで、分母に「自己資本」を用いたものがROEです。ROEは出資(自己資本)に対するリターンを表す指標なので、異業種間で比較する際にも有効に用いることができます。

さて、これら2つの指標を改善(利益率を高める)方法は下記があげられます。

ROAを改善するには

ROAを改善するためには、分子である経常利益を増やすか、分母である総資産を減らすことが必要になります。

利益を増やす方法は会社によって様々な方法が考えられます。総資産を減らすには、在庫を減らす、滞留債権の処理、不要な設備の売却、業務とは関係のない投資を解約するほか、不要不急の資産を現金化し借入金を返済するなど、資産規模を圧縮することが考えられます。

ROEを改善するには

ROEを改善するためには、分子である当期純利益を増やすか、分母である自己資本を減らすことが必要になります。

例えば、余剰資金がたくさん残っているなら、減資や自社株買いをすれば自己資本を減らせるでしょう。また、無借金経営をしているなら、運転借入をして必要のない資金は同じように減資や自社株買いでて自己資本を減らす方法も考えられます。借入金をすることに抵抗があるかもしれませんが、株主のお金を有効に活用するという観点からは、借入もひとつの方法です。

利益の金額を単に大きくしていくことだけでなく、利益率を見て効率よく利益を上げていく方法に着目してみてはどうでしょうか。