20代の私は、仕事を受験勉強のような「個人競技」のようにどこかで思っていたのだと思います。

ですから、なんでも自分が知っていなければいけないと考え、何事も自分一人の力でやろうとする、といった「しなくていい努力」を重ねてしまいました。

(仕事は団体競技だった)
(いい人脈、いいネットワークを持てるかどうかが、仕事の成否を決めるんだ)

30歳を過ぎて、私はやっとそのことに気付きます。そして、今度こそうまくいくかと思ったら……、またまた、「しなくていい努力」をしてしまうのです。

  • 人脈の作り方を勘違いしていませんか?

「自分だけが得する人間関係」は人脈ではない

「全部自分で知ろうとせずに、人に聞けば良かったんだ!」、「自力でなんとかしようとせずに、他人の力を借りればいいんだ!」。そう考えた私はなにをやってしまったかというと、そうです。今度は、「自分に"だけ"有益な人間関係」を築こうとしてしまったのです。

具体的に言えば、「いざとなった時に教えてくれる人」、「困ったら力を貸してくれる人」、「最先端の、面白い情報を提供してくれる人」、人脈というものを、そのようにとらえ、「自分にとって有益な人」とだけつながろう、と考えてしまったのです。

これが、いかに「しなくていい努力」か、もうお分かりですよね。「一方的にもらえる人脈」など、相手の立場に立ったら、有りえないのです。

「いつも一方的に助けを求めてくる人」、「いつも一方的に教えてもらおうとする人」、「いつも一方的に情報をもらいにくる人」、そのような人を、相手は人脈だとは決して思わないのです。

「貸し」が多いくらいの人間関係でいい

借りてばかりのキャリアは、どんどん自分を苦しくさせていきます。人脈とは、むしろ「自分から与える人間関係」のこと。

日ごろから「貸し」をたくさん作っておくから、いざというとき、教えてくれたり、助けてくれたりしてくれるのです。

例外的に、一方的にもらうだけの人間関係が成立してしまう場合があります。例えば、「仕入部」や「親会社」「上司」といった、立場の強いポジションに自分がいる場合です。 このような場合であれば、一方的にお願いしたり、教えてもらったりしても、相手は(表面上は)喜んで対応してくれるでしょう。

しかしこれも、真の人脈ではありません。「立場の力(ポジション・パワー)で人を動かしているだけです。その証拠に、その立場(ポジション)を離れた瞬間に、相手も去っていってしまいます。

「人生の貸し勘定を増やせ!」。阪急電鉄創始者の小林一三氏の言葉です。

本連載はこれで終了となります。ご愛読いただき、ありがとうございました。

3月26日に『しなくていい努力 日々の仕事の6割はムダだった!』(集英社)を出版する運びになりました。これも皆さまがたのおかげです。この場を借りまして、あらためて感謝申し上げます。

仕事の現場から、「しなくていい努力」が少しでも減ることを願っております。