職業 :会社員・漫画家・家庭教師
現住所:エジプト・アラブ共和国

異国エジプトで、ダブルワークならぬトリプルワークをこなす「おろぐちともこ」が、仕事を含む現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃない、どこか憎めない国「エジプト」をご堪能ください。(毎週火曜更新予定)

【「バワーブ」というお仕事】

エジプトの多くの建物には「バワーブ」という人がいます。彼らは門番兼雑用係のような役目を果たしていて、建物に出入りする人のチェック、簡単なおつかい、洗車、部屋掃除など住人から頼まれた仕事を行います。前回お話した雑用係のおうちバージョンのようなものだと考えていただければよいでしょう。

周りを見る限りバワーブたちは建物の中の一角を与えられ、住み込みで働いているようです。単身の場合もあれば、一家で住んでいるということも。私の住むフラットが入った建物のバワーブは6人家族で、夫婦が協力しながら仕事をこなしています。

彼らは頼まれた仕事は大体やってくれるのですが、お願いするにはチップが必要です。例えばゴミの回収。バワーブ夫婦は毎日部屋までゴミを取りに来てくれるのですが、その手間賃を彼らへの給料に上乗せして支払う必要があります。

思い返せば、私がこのフラットへ引っ越してきたとき、大家さんは「買い物や用事などは彼らに頼めばいいわよ、楽だから!」と言ってくれました。けれども、日本ではチップを払って雑務をお願いするという習慣はありません。洗濯や買い物は自分でできることですし、お願いするのは逆に手間がかかるため、仕事を頼む必要性を感じないというのが現状です。

しかしながら、そこで引き下がらないのがうちのバワーブ。頼んでいないけど「ゴミある? やってほしいことは??!」と超積極的に営業をかけてきます。 この前はいきなり「鍋」を売り込みに来ました。全くそんな素振りを見せた覚えはないのですが、彼女には私が鍋を欲しているように見えたのでしょうか……。

そんなうちのバワーブ夫妻の攻めの姿勢、日本の営業マンも見習う必要があるかもしれません。とはいえ、まずは顧客のニーズをつかむことから始めた方が良いのでは……、と思う日々なのでした。

ホウロウ鍋でエジプトのおふくろの味「マハシー」を作っているところ。野菜にお米を詰めてスープで煮込みます


おろぐちともこ
大学時代古代エジプトを勉強していたためエジプトの地を踏むこと6回。7回目に踏み入れた2011年よりエジプト在住。日々、エジプト人観察に励む。
現在はWebやエジプト人による日本語雑誌を中心に漫画を描いたり、漫画のデジタルアシスタントしたりと、漫画の活動の幅も国境を越えて拡大中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながら、ぼけっとお茶をすること。
生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。