企業広報責任者を経て、2015年に独立した志賀祥子さん。働く女性を応援する広報ブランディング・女性活躍支援企業「MaVie」を創業し、誰もが諦めることなく"らしさ"を追求・確立できる社会を目指してチャレンジしています。

本連載は、マイナビニュース女性会員から持ち寄った"ワークライフバランスの悩み"について、起業家兼子育てワーカー志賀祥子さんと一緒に考えていくお悩み解決企画。

Q.コロナを機に、働き方を変えたいと考えるようになりました。フリーランスのような場所にとらわれない働き方が気になりますが、会社員を辞めるのは不安が残ります(20代・未婚)

在宅勤務やリモートワークの普及で、場所にとらわれない働き方を経験する人が増えましたね。満員電車に乗らなくて済む、通勤時間を家族や自分の時間にあてられるなど、メリットを実感された方も多いのではないでしょうか。

実際、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の調査でも「今の仕事や働き方の問題を解消する、または満足度を高めるための取り組み」としてフリーランスを検討する人が見受けられるようです。

出典 : 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
コロナ禍でのフリーランス・会社員の意識変容調査

同調査では、働く時間や場所にとらわれないという点のみならず、「自分の技能(知識や経験)を充分に発揮できる」というフリーランスの魅力もあり、ニューノーマル時代の新しい働き方として注目を集めているようです。

「場所にとらわれない働き方」としてフリーランスという選択肢は非常に魅力的なもの。私自身、現在の会社を創業する前はフリーランスとして働いていましたが、場所のみならず、時間も自分でコントロールしやすいフリーランスは、ライフイベントにキャリアが左右されやすい女性にとって、思っている以上にメリットの多い働き方だと感じています。

でも一方で、安易に会社員という立場を捨ててフリーランスに!という選択がベストかというと、そうでもありません。会社員とフリーランス、それぞれの働き方は二者択一のものではなく、あくまでも、複数ある選択肢のひとつにすぎないからです。

「フリーランスになる」を目的化していませんか?

今回の場合、あくまで目的は「場所にとらわれない働き方をしたい」ということであり、「会社を辞め、フリーランスになる」ことではありません。会社に所属しながらも、場所にとらわれず働くやり方もあるはず。実際に、新型コロナウイルス感染拡大以降、在宅勤務やリモートワークに切り替えた会社も多いでしょう。

また収入面を考えると、いきなり会社員からフリーランスに転身するというのはちょっと考えもの。会社員とは異なり、フリーランスになると自分の力でクライアントを獲得し、スケジュールを守った上で、細かな事務作業までの責任を、ひとりで負うものです。正直、容易いものではありません。勢いで独立し、働き方は自由になったものの、生活が立ち行かなくなってしまっては、本末転倒ですよね。

そうした場合は、いきなり会社を辞めるよりも、副業やプロボノなど、今いる会社以外で自分の経験値を積んでからフリーランスの道に進んでも遅くないのではないかと思います。

まずは自分の経験値を積むところから始めてみよう

副業・兼業のいいところは、会社員という安定したポジションを保持しながら、自分のスキルが社外でどのくらい通用するのか試せるという点です。本業での収入を確保しながらであれば、自分の実力に応じて適切なペースで仕事をすることも可能でしょう。

もし、会社の副業解禁がこれからであっても、自分の所属している部署以外の仕事を手伝いながらボランティアとして自分のスキルを提供し、何かプロジェクトに関わってみるなど、できる範囲で視野を広げるための活動をしてみるのもおすすめです。

「自分のキャリアの現在地」を知ることの大切さ

一方でフリーランスになる!と行動に移す前に、まずできることがあります。それは「自分のキャリアの現在地を知る」ということ。私の会社で運営している「M freelance salon」では、プロフェッショナルを目指すビジネスパーソン向けにカリキュラムを提供しています。その中でお伝えしているノウハウを少しだけご紹介しますね。

まず、自分のキャリアの現在地を知るために大切な「3つの軸」があります。 その3つとは、「自分の人生の満足度」「価値観・モチベーション」「人生の優先順位」です。それぞれの軸について、以下のように考えてみましょう。

【1】人生の満足度
自分の人生に点数をつけてみましょう。「キャリア」「人間関係」「お金」など様々な視点があると思います。それぞれの項目を10点満点で採点してみてください。時には自分の人生について立ち止まって振り返り、自分が現状にどのくらい満足しているかを考えてみるのはとても重要です。

【2】価値観・モチベーション
人生において、何を優先して生きるかを考えるのはとても大切です。したいこと、したくないこと。なりたい姿、やりたいこと。本来は「なりたい姿」を描くのがベストですが、いきなり「自分がどうなりたいか」を思い描くのは難しいものです。そういう場合は、自分の「したくないこと」「なりたくない姿」から洗い出し、消去法で自分の価値観を浮かび上がらせるという方法もあります。

【3】人生の優先順位
自分は何について時間やエネルギーを使いたいのか、今ある前提をすべて白紙にして考えてみましょう。会社員であることや、妊娠出産などこれから起こりうるライフプランなど、状況は変わっても、自分が一番大切にしたいことは何か? 自分が何をやりがいにしているか? 何をしているときが楽しいか? といったポイントは大きくブレないもの。もっとも「自分らしい」と思える時間はどんなときか? を想像してみてください。

手段の目的化を避けるために、「ありたい姿」を思い描こう

上記の3つの軸をもとに、「自分の現在地」が可視化できたら、理想とする「ありたい姿」へ向けて、何が足りないのかを考えてみるとよいでしょう。今回の相談者さんの場合、「場所にとらわれずに働く」ために、どんなスキルを身につければよいのか、どういう選択肢があるのかを考えると、おのずと見えてくるのではないかと思います。

このように、自分の「ありたい姿」から導き出した未来へ向けて、ベストな選択肢がフリーランスという方法ならそのためにできること、不安の解決へ向けて準備しておくべきことが分かってくるというステップになります。

これらを自分ひとりで答えを導き出すのは難しいという場合は、今回ご紹介した私たちの「M freelance salon」のようなカリキュラムを受講したり、コーチングなどのサービスを活用したりするのもよいでしょう。

まずは自分の「ありたい姿」を思い描き、自分の現在地を知る。この2つを準備しておけば、不安も解消されるのではないかと思っています。より「自分らしく」働けるよう、心から応援しています。

フリーランスに限らず、自分のキャリアの現在地を知る方法は、こちらでもお伝えしていますのでぜひご覧ください。

【あわせて読みたい】
自分の「現在地」を知ることで「理想のキャリア」と「目的地」を考える