Aさんは7名ほどのメンバーが所属するヘアサロンの店長兼オーナー。

美容師の世界は、かつては「少ない休日・長時間労働・厳しい指導」が当たり前のカルチャーだったそうですが、今の時代に合わず、人材が定着しないと認識し、人事制度の変革などさまざまな手を打っています。

目下の悩みは若手の育成で、中でも20代前半の新人Bさんが「あまりに打たれ弱い」と感じ、特にフィードバックでの難しさを感じていました。

  • 打たれ弱いタイプに対する効果的な叱り方は?

フィードバックを間接的に伝える方法

勉強熱心なAさんはマネジメントに関する本から学んだ、「相手に一方的な感情をぶつけるような『怒る・怒鳴る』といったNGなアプローチ」は一切取っていません。感情的にならず、具体的で的確な仕事の進め方をフィードバックしているそうです。

そうした効果的とされる教科書通りの伝え方にもかかわらず、極端に萎縮するBさんに悩んでいました。とはいえ、若手メンバーの成長に的確なフィードバックは必要です。

そこで信頼する中堅メンバーのCさん(30代)に打ちあけたところ、以下のような提案があったそうです。

「(Bさんに)学んでほしい、伝えたいアドバイスを、Bさんの前で、私に対して伝えてみるのはどうでしょう。そうすれば、Bさんにも、その内容が伝わるのでは」

本人に対してフィードバックする内容を、別の人にフィードバックして、間接的に伝える方法です。Aさんはこの提案を採用しました。

例えば、「シャンプーをするときは、もっと●●という風にすると良くなる」といったアドバイスを、Bさんの目の前でCさんに伝えます。Cさんは、そのアドバイス通りにBさんの目で実践するのです。

結果、Bさんもそのアドバイス通りにシャンプーするように変わってきたと言います。

自己肯定感は成功体験の積み重ねで高まる

この方法は理に適っています。応用行動分析学に「代理強化:他人がうまくいったことを観察することを通じて、人はその行動を身に付けることができる」という概念があります。

今回のケースはこの概念通りの方法なのです。打たれ弱い人には、こういった「間接的にフィードバックする」という方法も効果的です。

とはいえ、「こういったアプローチは『甘やかし』だ」という捉え方をする方もいるかもしれません。しかし、育成において、まず考えるべきことは、「相手にどう成長してもらうか」という点。であれば、相手に合わせたアプローチを取る方が効果的ですね。

現状、打たれ弱いのであれば、その事実を受け止め、相手に合ったアプローチを取る方が良いのではないでしょうか。

「打たれ弱さ」は、「自己肯定感(=自己に対して肯定的で、好ましく思うような態度や感情)の低さ」にその要因がある可能性が考えられます。自己肯定感は「うまくできた経験」の積み重ねで高まるのです。

今回のように、まずは一旦、「間接的にフィードバックする」という方法を採り、うまくできた経験を積んでもらう。その後、ある程度メンタルが強化されたところで、本人に直接フィードバックする形に変える。

こうした「2段構え」でアプローチを変えることも一つの手なのです。