システム要求をモデリングする際、まずは業務フローを作成します。業務フローをモデリングする目的は主に3つあります。前回、1つ目として「システム化の対象業務を理解する」を紹介しました。以下、残りの2つを紹介します。

システム化により業務改善する

業務改善の目的から課題を見極めて解決策を定義することも、業務フローを作成する目的の1つです。そのために、改善したい業務の業務フローをモデリングしながら課題を洗い出します。課題に応じて、どの業務をモデリングするのか、どの業務を詳しくモデリングするのかということを計画/コントロールしなければなりません。

荷物の集荷から配達までの時間を短縮したいのであれば作業と人と機材に着目したモデリングが必要であり、売上予測の精度を高めたいのであれば情報と情報の蓄積作業に着目したモデリングが必要です。

残念ながら、モデリングから解決策を見つけることはできません。ただし、見つけた解決策をどのように業務に適用するかを検討して表すことに、業務フローは役立ちます。

また、解決策を採用することで、業務フローに何かしらの変更が生じるはずです。予想外の副作用があり、そのための解決策が必要になるかもしれません。そこで、解決策を取り入れた業務フローをモデリングし、その業務フローが実際に運用できるものかどうかを検証する必要があります。

システム要求を見つける

最後の目的は業務フローの各要素からシステムに要求されているものを見つけ、より詳細にモデリングすることです。システムの機能を使う作業、その作業の入出力となるオブジェクトノードとその状態、前後の作業は詳細に、それ以外は簡略化するなどメリハリの効いたモデリングが必要です。システム化を検討して初めて出てくる作業(バッチ、マスタメンテナンス)もあるので注意して下さい。

以下の図は、問題(届け先不在)の解決策(配達予約)とシステム要求をモデリングするための業務フローです。配達予約を行うためには、営業所に配達事前連絡先申込書を郵送し、届いた申込書をシステムに登録することなどが必要であることが表されています。また、システムの機能が必要になる作業を色付けして区別しているほか、輸送・ピッキング・配達など配達予約に関係がない業務は簡略化しています。

 問題の解決策とシステム要求をモデリングした業務フロー

なお、配達事前連絡先申込書が帳票、配達予約先確認メールが電子メールのアイコンで示されていますが、UMLに帳票や電子メールがあるわけではありません。今回の業務フロー用に、オブジェクトノードの一種として帳票や電子メールを追加したのです。このように、UMLを拡張して追加した要素をステレオタイプと呼びます。以下の表に示したように、ステレオタイプには3種類の表記法があるので、用途に応じて使い分けます。UMLは特定の業種、アーキテクチャ、開発工程に特化した要素までは用意していないので、組織やプロジェクトに応じてステレオタイプを定義するとよいでしょう。

ステレオタイプの分類

 

用途

 

独自アイコン

読み手がピンとくるアイコンがある場合

帳票(オブジェクトノード)
紙のアイコンにすれば帳票とわかる

UMLの表記の右上に用いる独自アイコン

読み手がピンとくるアイコンがあり、かつUMLの要素内に書きたい情報がある場合

システム(パーティション)
サーバのアイコンにすればシステムとわかるが、パーティションの中に作業などを書く必要がある

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読み手がピンとくるアイコンがない場合

自動化(アクション)
自動化を想像させるアイコンがない

『出典:システム開発ジャーナル Vol.3(2008年3月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。