若手社会人でこれから資産形成をしたいと考えているなら、まず活用したいのが、つみたてNISAです。長期間の積立の効果は大きいものですが、今からつみたてNISAをはじめると、一体、将来どれくらいの資産を作れるのでしょうか? シミュレーションしてみました。

  • 若手社会人が今からつみたてNISAをすると、20年後はいくら得をする?

    若手社会人が今からつみたてNISAをすると、20年後はいくら得をする?

■つみたてNISAでどれだけおトク?

つみたてNISAは年間40万円、月換算で3.3万円まで積み立てができます。そこで、毎月の積立金額0.5万円、1万円、3万円、利回りが3% と5% の場合で資産の増え方、節税できる金額をシミュレーションしてみました。

<20年積み立てた場合>

  • 20年積み立てた場合の試算表(筆者作成)

    20年積み立てた場合の試算表(筆者作成)

積立金額/月 : 0.5万円
元本総額 : 120万円
3%…(運用益)44万円(最終金額)164万円(節税額)9万円
5%…(運用益)86万円(最終金額)206万円(節税額)17万円

積立金額/月 : 1万円

元本総額 : 240万円

3%…(運用益)88万円(最終金額)328万円(節税額)18万円
5%…(運用益)171万円(最終金額)411万円(節税額)35万円

積立金額/月 : 3万円

元本総額 : 720万円

3%…(運用益)265万円(最終金額)985万円(節税額)54万円
5%…(運用益)513万円(最終金額)1,233万円(節税額)104万円

20年続けると元本だけでも大きな金額になりますね。それに対して利回りがつきますから、節税額もかなり大きくなることが分かります。

ここで節税額について少し説明すると、通常、投資などで利益を得た場合、利益に対して20.315%の税金がかかります。これは銀行預金についても同じことが言えます。銀行預金の場合、低金利なので利息自体が少なく、税金がかかっているとしても気にならない金額です。100円の利息がついたとしても税金は約20円ですからね。それほど気になりません。

ところが、投資になると話は変わります。利益が大きくなると、税金も高くなるからです。しかし、つみたてNISAだと税金はかかりません。表の「節税額」は、本来ならかかるはずの税金を表しています。

今回、3%と5%で利回りを設定して計算していますが、つみたてNISAは元本保証がありませんから、もちろんこの利回りで運用できるとは限りません。

しかし、金融庁の資料(*)では20年間、国内外の株式、債券に投資をした場合の収益率は2~8%に収まっているというデータがあります。したがって3%や5%の利回りは非現実的な数字ではありません。これらの利回りでシミュレーションすると、節税額だけでもトクした気分になれますね。

■積立期間が10年の場合はいくらおトク?

では、積立期間が10年だとどうなるのでしょうか。積立期間のみ変更してシミュレーションしてみました。

<10年積み立てた場合>

  • 10年積み立てた場合の試算表(筆者作成)

    10年積み立てた場合の試算表(筆者作成)

積立金額/月 : 0.5万円
元本総額 : 60万円
3%…(運用益)10万円(最終金額)70万円(節税額)2万円
5%…(運用益)18万円(最終金額)78万円(節税額)4万円

積立金額/月 : 1万円
元本総額 : 120万円
3%…(運用益)20万円(最終金額)140万円(節税額)4万円
5%…(運用益)35万円(最終金額)155万円(節税額)7万円

積立金額/月 : 3万円
元本総額 : 360万円

3%…(運用益)59万円(最終金額)419万円(節税額)12万円
5%…(運用益)106万円(最終金額)466万円(節税額)22万円

10年でも節税できるなら、ありがたい金額になりますが、積立期間20年ほどのインパクトはありません。運用益も比較してみると、積立期間10年の場合の金額は20年の場合の半分というわけではありません。

積立期間が半分だから、利益も半分になるということではないのですね。これは複利の効果が働くためです。期間が長ければ長いほど、複利の効果が働き、金額が大きくなっていくのです。

■若手社会人からつみたてNISAをはじめたい理由

積立期間が10年の場合と20年の場合をシミュレーションしましたが、20年積み立てたほうが、メリットが大きいことがわかりました。20代の若手社会人なら、今から20年積み立てをしたとしても、20年後はまだ40代。一般的には40代、50代は教育費やマイホーム資金等で出費がかさむ年代です。その時に20年間積み立て、育てたお金があれば、家計を良好に保てます。

しかも、つみたてNISAは永久に続く制度ではなく、20年間積み立てができるのは2023年までの予定です。今すぐにでも、つみたてNISAをはじめたほうが良いですね。

■何に投資をすれば良い?と迷ったら

つみたてNISAをはじめようと口座を開いたものの、どの投資信託を選んで良いか分からないと迷うかもしれません。金融機関によっては、つみたてNISAの商品数が150以上ある金融機関もありますから、迷うのは当然です。

迷った時は、世界の株式に投資をする投資信託を選びましょう。アメリカがいいか、日本がいいか、あるいはインドやブラジルなどの新興国がいいのか、運用初心者が判断するのは難しいものです。ですから、世界経済がこれからも成長し続けるという前提に立ち、世界中の株式に投資をするのが良いでしょう。

また、投資をする前に勉強しないといけないと思う人も多いものです。勉強すると投資や経済への理解が深まりますから、勉強できるならしたほうがいいでしょう。しかし、投資の勉強は数カ月で終わるものではありません。投資環境は常に変化しますし、数年あるいは生涯勉強することになるかもしれません。

勉強してから投資をスタートしようと考えていると、いつまでたってもスタートできないこともあります。積み立て商品や積立金額はいつでも何回でも変更できますから、勉強が終わるのを待たずに、まずはスタートしてみましょう。早く始めることが大切です。

■積立金額は少額でよい

つみたてNISAで積み立てられる上限金額は、毎月約3万円ですが、下限は金融機関によって異なります。SBI証券、楽天証券、松井証券なら100円から積み立てが可能です。大きな金額を積み立てる余裕がないなら少額からでも問題ありません。続けること、スタートすることが大切です。将来のために今からはじめてみてはいかがでしょうか。

(*)平成29年7月金融庁「つみたてNISAについて」より
シミュレーションについて
・年1回の複利計算です
・積立期間は、制度上最長20年ですが、積み立て可能期間が設けられているため、実際には20年間積み立てられない可能性があります