意外な盲点、それは液晶ディスプレイ

その昔、自ら発光するプラズマディスプレイを備えたラップトップPC(東芝のJ-3100GTやNECのPC-9801LSなど)が存在したが、消費電力が大きそうだから、これをバッテリ駆動にするのは現実的ではなさそうだ。現在の主流は、バックライト付きのカラー液晶ディスプレイである。

ところがこれ、場合によっては画面が非常に見づらくなることがある。読者の皆さんも実際に経験しておられると思うが、例えば屋外では視認性が格段に落ちるし、屋内でも背後から光が差し込むと一気に見づらくなる。

そういった場面では、バックライトの輝度を高めることで問題をいくらか緩和できるの。だが、ノートPCで消費電力の多くを占めるデバイスがバックライトだから、バックライトの輝度を高めれば、それだけバッテリの減りが速くなる。車中で電源を確保できていれば問題は緩和されるが、常にその手が使えるとは限らない。それに、都市部の通勤電車の中では電源の確保は無理だ。

だから、列車・バス・飛行機の中でノートPCを使う場合、直射日光などの外光が差し込んでこないような場所を選んで席を占めるほうが、画面の視認性が高まり、バックライトの輝度を高めずに済む分だけバッテリが長持ちするというわけだ。これは交通機関に限らず、喫茶店などで席を選ぶ場合も適用できる原則と言える。

外光の有無は車体構造と進行方向で決まる

では、外光が差し込んでこない場所をどのように判断すればよいか。その際に関わってくるファクターとしては、以下の2点が挙げられる。

  • 車体や機体の構造
  • 進行方向と太陽の位置関係

まず前者。例えば、都市部の通勤電車であれば、窓に面した席よりも壁に面した席のほうが外光が入ってこない。最近は乗降用の扉を引き込む戸袋部分に窓を設けない場合が多いので、その戸袋の部分にある席に座れば、背後から外光が差し込んでくる事態を避けやすい。都市部の通勤電車、特にロングシート車では覚えておきたいポイントだ。

新幹線やその他の特急列車はクロスシートであり、(たまに例外はあるが)基本的にすべての座席に、しかも座席と窓の位置関係を揃えるようにして窓を割り付ける設計をするのが常識なので、わざわざ「窓のない席」を求めるような酔狂な(?)需要には対応しがたい。もっとも、窓のカーテンを下ろす方法で対処する手も考えられるが、これとて完全に遮光できるわけではない。

そこで気にしたいのが、進行方向と太陽の位置関係だ。例えば、東北新幹線は大宮以北の区間で大半の線路が南北方向、あるいはそれに近い方向で走っている。ということは、朝のうちに東北新幹線に乗ると、右手の窓から低い位置にある太陽からの直射日光が差し込んでくることになる。これがノートPCの画面を直撃すると、かなり見づらい(経験談)。

そのことを考慮に入れると、朝のうちに東北新幹線に乗って出張するのであれば、海側(東側)に当たる席、特に窓に近いA・B席を敬遠して、通路側のC席、あるいは反対側のD・E席を選ぶ手が考えられる。もっとも、意図的にA席を選んでおいて、目の前にあるカーテンを下ろしてしまうという「逆転の発想」もある。

これが東海道・山陽新幹線であれば、基本的には東西ないしはそれに近い方向を走っているから、海側の席、つまりこれまたA・B・C席が「太陽側」ということになる。ついでに余計なことを書くと、トンネルが多い山陽新幹線・北陸新幹線・九州新幹線などは、それだけ外光と縁遠くなるので、相対的に有利である(なんのこっちゃ)。

ただ、本連載の第1回目でも書いたように、電源コンセントを設置している席は車端や窓側のことが多いので、それとの兼ね合いが難しいところではある。

ここでは新幹線を引き合いに出したが、在来線・飛行機・バスでも、基本的には同じ考え方を適用できるはずだ。もっとも飛行機の場合、窓のサイズが小さいうえに座席の位置と合っていないことが少なくないので、あまり問題にはならないかもしれない。

なお、問題になるのは主として外部から差し込む直射日光であり、内部の照明によって画面が見づらくなることはないと言える。だから、天気が悪い日、あるいは夜間であれば、こんな調子で外光について神経質になる必然性は薄い。