元国税局職員 さんきゅう倉田です。今年、サンタクロースにお願いするクリスマスプレゼントは『税務相談事例集(大蔵財務協会/5,800円)』です。

以前、贈与税と相続税の違いを記事にしました。今回は、贈与税について更に深く、役に立ちそうで役に立たないところまで解説します。

贈与税とは?

贈与税は、財産をもらったらかかる税金です。財産とは、お金だけではなく、土地とか株とかモノです。意外かもしれませんが、友人や家族、他人からでも、モノをもらったら贈与税がかかります。使い古した車でも時計でも、新品のポケットティッシュでも贈与税がかかります。

ただ、1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引いた残りの額に対してかかるので、高額なモノや多額の現金をもらわない限り贈与税はかかりません。110万円を超えたときだけ、贈与税の確定申告をしてください。

このように、確定申告は所得税だけではないのです。贈与税も相続税も確定申告が必要なときは、それぞれの確定申告書を自ら手に入れて、書いて提出しなければいけません。税務署から親切に送られてきたり、「申告が必要だよ」と電話があったりしません。

贈与税が財産をもらったらかかる税金ならば、お給料とか宝くじとかギャンブルはどうなるのでしょうか。

勤務先から働いてもらえるお金は給与所得、ロト6やスクラッチは非課税、パチンコ・競馬・競艇は一時所得となり、すべて所得として扱われます。所得になるものは、贈与税がかかりません。宝くじは、通常であれば所得税がかかりますが、バファリンより優しい国税局が非課税にしてくれています。考え方として、贈与税は、基本的に人間から財産をもらったときにかかります。会社からもらったときは所得になることがほとんどです。

高級なプレゼントを貰うキャバ嬢はどうなる?

ここまでで、とにかく人からお金やモノを110万円以上もらったら贈与税がかかることが分かりました。

では、高級なプレゼントをもらう人気キャバ嬢はどうなるのでしょうか。誕生日には、多くの太客を店に招き、盛大に祝ってもらうことでしょう。客が入れたベル・エポックやドン・ペリニヨンは、店の売り上げになり、その後給与として支払われるので、贈与税とは無縁です。しかし、彼女たちは、ハリー・ウィンストンをもらったり、バーキンをもらったり、ルブタンをもらうかもしれません。その金額が110万円を超えれば、贈与税の確定申告が必要です。アフターに行ったときのタクシー代も、もらった財産に加えなければいけません。

彼女たちが申告するかしないかは置いておいて(所得税の確定申告もしない方が散見される業界で、贈与税の確定申告をするような奇特な方はほとんどいないと思いますが)、一般の方も同様です。誕生日プレゼントをたくさんもらったら贈与税の確定申告が必要です。

お年玉やクリスマスプレゼントはどうなる?

誕生日と同様に、お年玉とかクリスマスプレゼントも同じように扱われるのでしょうか。日本の伝統的な習わしであるお年玉や、子供たちの夢と希望のトップではないけれど先頭集団のクリスマスプレゼント、これらにも税金をかけるなんて、お役所はそんなに頭が固いのでしょうか。

否。国税庁は贈与税がかからない財産のうちの一つとして「香典等」をあげています。

「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」
(国税庁 タックスアンサー 贈与と税金 No.4405 贈与税がかからない場合 8)
この中に、『年末年始の贈答』とあります。年末年始の贈答にどこまで含まれるかは定かではありませんが、お歳暮、お年玉、お年賀の贈り物は 年末年始の贈答と扱って差し支えないと考えます。ここに、果たしてサンタさんからの贈答が含まれるのか。

赤い服に白い髭のサンタさん、プレゼントに贈与税はかかる?

クリスマスプレゼントに贈与税がかけられたという話は聞いたことがありません。現段階では、「年末年始の贈答」に含まれていると思われます。しかし、「社会通念上相当」な金額を超えた場合は注意が必要です。社会通念上相当とはいくらなのか。これまた曖昧な基準ですが、税法とはそのような曖昧なものの集まりなのです。それぞれの環境や年収、社会の状況によって判断されます。 お子さんがかわいくても、プレゼントをあげすぎないようにご注意ください。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら