今日の見積りにおいてファンクションポイント法は重要であることから、複数回にわたってじっくりと解説してきましたが、最後に、ファンクションポイント法における2つの課題について考えてみたいと思います。

FP専門家の拡大

異なる組織間、企業間でファンクションポイント法を使用する場合、そのルールの解釈に違いが出てしまうことがあります。そのような問題を防ぐために、きちんとルールに従っているかを判断する専門家が必要です。

IFPUG法を定めているIFPUG(International Function Point Users Group)ではCFPS(Certified Function Point Specialist)というFPの専門家の認定制度を設けています。CFPSの計測したFPの誤差は5%以内と言われています。世界では1,000名以上、各国では百名単位のCFPSが認定されていますが、日本ではまだ10数名と極めて少なく、レアな資格となっています。

日本ファンクションポイントユーザ会(JFPUG)

ちなみに、お隣の韓国では400名以上のCFPSが認定されているそうです。業界のグローバル化に対応するためにも、国際的な有資格者を増やす必要があると痛感しています。

筆者が事務局長を務める日本ファンクションポイントユーザ会(JFPUG)ではCFPS試験を開催しておりますので、ぜひチャレンジしてください。

ベンチマークデータの充実

受発注者間のコミュニケーションツールとしてファンクションポイント法を使用するためには、FPをベースとした生産性データなどの材料となる情報が必要です。FPをベースとしたベンチマークデータを発行している団体として有名なのはISBSG(International Software Benchmarking Standards Group)というオーストラリアの非営利団体です。

ISBSGでは、国際的に生産性データを収集分析しており、そのレポートを販売していますので活用してみてはいかがでしょうか。

しかし、まだ課題もあります。ベンチマークデータを活用するには、そのデータの収集に関するルールが統一され、遵守されていなければなりません。例えば、工数に非機能要件に関わる部分が含まれているか否かによってFP/人月の数値は大きく変わってきます。各自バラバラに計測していては、収集分析したデータも有効な参照情報にならないのです。

FPの計測ルールは国際標準として整備されていますが、ベンチマークデータの計測ルールはまだこれからです。これは、今後取り組むべき大きな課題だと思っています。

ファンクションポイント法はこれからのソフトウェアの尺度として有効なものですが、取り組むべき課題も多々あります。しかし、使ってみないことにはその効果を実感することもできないでしょう。

「FPかプログラム行数か」という択一の議論ではなく、双方の特性を考えた上で使い分けていくことが必要なのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

藤貫美佐 (Misa Fujinuki)
株式会社NTTデータ SIコンピテンシー本部 SEPG 設計積算推進担当 課長。IFPUG Certified Function Point Specialist。日本ファンクションポイントユーザー会の事務局長を務める。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは 異なる場合があります。ご了承ください。