いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令され、店舗営業をするお店が限られているため、しばらくはテイクアウト特集。今回は、阿佐ヶ谷の和菓子店「うさぎや」です。

  • 本格的な老舗の和菓子店「うさぎや」(阿佐ヶ谷)(写真:マイナビニュース)

    本格的な老舗の和菓子店「うさぎや」(阿佐ヶ谷)


質のいい餡がたっぷりの「どら焼き」を求めて

妻が和菓子好きだということもあり(そして、僕もいつしか影響されていたため)和菓子を食べる機会は決して少なくありません。特に多いのは、たい焼きとどら焼きかな。

とはいえ、和菓子屋さんならどこでもいいというわけではありません。かといって、なにかにこだわっているわけでもないのですが、好きなお店があるのです。

中央線沿線であれば、たい焼きなら三鷹の「すえき」(旧たかね)、どら焼きだと阿佐ヶ谷の「うさぎや」。

それぞれ違った個性を持つお店ですが、共通する部分があるとすれば、餡の品質の高さ。どちらのお店の餡も素材の持ち味が活きている気がするので、安心して食べられ、満足感を得られるのです。

ということで、今回はどら焼きを購入すべく阿佐ヶ谷の「うさぎや」へ。電車を利用する場合は、僕が住んでいる荻窪から一駅。でも近いので、いつも自転車で伺っています。

阿佐ヶ谷駅北口、阿佐谷新進会商店街。有名な喫茶店「gion」を通り過ぎてすぐ右側。調べてみたら、開店当初は西荻窪で7年間営業していて、1957年に阿佐ヶ谷へ移ってきたのだとか。つまり阿佐ヶ谷歴は今年で63年、西荻時代も含めると70年ということになります。

落ち着きある建物と店舗も魅力のひとつなのですが、つまりはそれだけの時代を乗り越えてきたからこそ、この風格が身についたということなのでしょう。

  • ほどよい奥行きのある店頭

しかし今回伺ってみたところ、ちょっとした変化がありました。商品やお金の受け渡しをするショーケースの上に、ビニールシートが下がっていたのです。いうまでもなくコロナ対策で、ぬかりのない心遣いはさすがという感じ。

でも新型コロナの恐ろしさを痛感せざるを得ないというか、ちょっと複雑な気分ではありました。

  • ビニールシートにコロナの影響が

ショーケースのところで購入したい商品を告げると、お店の方が奥に下がって用意をしてくれます。その間は右側に並んでいる椅子に座って待つことになるのですが、奥にはテーブル席も用意されているので、そこでお菓子をいただくことも可能。

少し前に訪ねたときには、ボーダーのカットソーを着た女の子がひとりでお菓子を食べていたりして、「センスいいなぁ」と感じたものです。が、よく見れば、いまはそのテーブル席も撤去されていますね。店内でいただくには、コロナが収束するまで待つ必要があるようです。

  • 椅子に座って待ちましょう

さてさて、そんなわけで購入後はまた自転車を走らせ帰宅。お茶を入れて、どら焼きをいただくことにしましょう。

ちなみに商品は、プラスチックのフードパックなどを使用せず、きちんと包装紙に包んでくれます。些細なことではありますが、見た目にも品があるだけに、こういうところも高ポイントだと言えるのではないでしょうか?

  • 昔ながらの包み紙も魅力的

そして半透明の包装パッケージには、筆で描かれたのであろう、うさぎのシンプルな絵が印刷されています。丸いどら焼きと相まって、うさぎが丸まっているようにも見えます。

  • ていねいな包装

  • シンプルなうさぎのイラストがかわいい

割ってみると、ふっくらとした皮のなかに餡がたっぷり。先にも触れたとおり、甘すぎない餡の味が絶妙です。やっぱり、これを食べてしまうと、他のどら焼きは食べられないなぁ。

  • ときどき無性に食べたくなる味です

  • 適度な甘さの餡もたっぷり

阿佐ヶ谷に足を運ぶことがあったら、ぜひ訪ねてみてください。


●うさぎや
住所:東京都杉並区阿佐谷北1-3-7
営業時間:9:00~19:00
定休日:土曜・第三金曜