この1~2年で中国語の迷惑電話が米国で社会問題化している。私のところにもよくかかってくるのだが、そうしたテレマーケティングの悩みが、GoogleのAIを活用したコールスクリーニング機能でスッキリと解決した。

中国語の迷惑電話なんとかならんかな…。

電話がかかってきてローカル番号だから取ってみると、突然中国語でまくし立てられる。何を言われているのか分からないし、ロボコールだから切るのだが、それが数日おき、多い時は1日に何度もかかってくる。その番号を迷惑電話に指定しても、数日後には別の番号から中国語の電話だ。調べてみると、中国領事館を装って荷物が届いているから受け取りにこいというような詐欺電話、移民手続き代行のセールス電話など様々であるようだ。中国語の迷惑電話がかかってくるのは私がアジア人だからではない。人種や出身国を問わずかかってくるから、ちょっとした社会問題になっている。それだけ米国で中国人コミュニティが拡大しているということでもあり、色んな方向に議論が広がっている。

個人レベルの話をすると、私の番号はどれも全米電話勧誘拒否登録制度 (National Do Not Call Registry)に登録してあるのだ。それでも中国語迷惑電話を含めセールスの電話が途絶えない。「どんだけ頑張るんだ、テレマーケター…」とあきらめ気味で、家族や一部の友達を除いて電話を取らないようにしようとも考えたが、未知の番号で学校関係、保険や病院、税金関連の急ぎの電話がかかってきたりすることがままあるのだ。電話はレガシーなコミュニケーション手段になろうとしているとはいえ、今でもまだ欠かせないコミュニケーション手段である。

そんな悩みがスッキリと解決した。10月にGoogleがPixel 3シリーズで提供を開始したコールスクリーン機能のおかげだ。

コールスクリーニングは、春にGoogle I/O 2018でGoogleアシスタントがレストランやヘアサロンに電話をかけ、自然な会話で予約を取るデモで話題になった技術「Duplex」を用いている。

有効にすると、電話がかかってきた時の画面に「Answer (応答)」「Decline (拒否)」の他に「Screen Call」と書かれたボタンが表示される。Screen Callをタップすると、Gogoleアシスタントが代わりに電話を受けて「これはGoogleによるコールスクリーンサービスです。名前と用件を述べて下さい」というようなメッセージを相手に返す。

  • 最近は家族や一部の友達を除いて、即「Screen Call」をタップ

スゴいのは、相手が話し始めるとリアルタイムでテキスト化されて、コールスクリーンの画面に表示されることだ。それを見て、重要な電話だったら「応答」ボタンをタップすると、Googleアシスタントが「ありがとうございます。少しお待ちください」と相手に述べて電話をつないでくれる。迷惑電話だったら、そのまま終了させるか、またはスパム報告のボタンをタップする。

  • 電力会社からの電話、「電力使用量が急に上がっているのをお知らせ……」という風に、向こうの話し言葉がリアルタイムでテキスト化され、画面で用件を確認できる

迷惑電話の多くはロボコールなので、自分で受けて確認して切るのとかかる時間が大して変わらないように思うかもしれないが、実際にはポンとタップするだけ、あとはチラッと様子を見るだけで済むので負担がかなり軽くなる。

間違い電話、そしてまだまだ根強いリアルなセールス電話への対応の負担はさらに軽減される。最近はスパムコールも巧妙になっていて、以前のように州外からのいかにも怪しい番号ではなく、今は多くが"ちょっと気になる"ローカル番号でかかってくる。「Spam likely」が表示されないことも珍しくない。それで国税庁や政府機関、銀行やクレジットカード会社を装って、何かトラブルがあるかのように話し始めるのだが、話が長くて回りくどい…。電話に出てしまったら、ひとまず相手の説明が終わるのを待つだけでもムダな時間を過ごすことになる。それをGoogleアシスタントが代わってくれるというのは、まさにソリューションである。何より、そうした電話を回避して、本当に重要な電話をミスらずに受けられるようになったのがうれしい。これまでだとメッセージを聞いてからかけ直したら、今度は相手が出ないというような不毛なやり取りがよくあった。

もちろん便利、便利! と喜んでばかりはいられず、こうした技術は表だけではなく裏もある。「読むべきニュースの選別が自動化されたら便利になる」が悪い方向に出てしまったのが、ここ1~2年のフェイクニュースやソーシャルメディアの問題である。

しかし、こうして確かなソリューションとしてAIを活用できるサービスの便利さを実感すると警戒感がやわらぐ。Duplexによるレストランなどを予約する機能にしても、これまで興味以上の気持ちは湧かなかったが、「実際に便利か?」という期待感を持って試してみたいと思うようになった。米国では一部のPixel 3シリーズ・ユーザーから提供が始まっているようなので、使えるようになったら試そうと思う。

人気を博したWebの広告ブロッカーがマーケティング会社に転じた例もある。こうしてGoogleアシスタントを使うことで形成されていくユーザーからのデータが、どのように管理され、使われていくかは気になるところだ。プライバシー保護規制はテクノロジーの進化の妨げになるという見方がテクノロジー産業には根強い。しかし、ネット大手などが収集するパーソナルデータについて、個人が「知る権利」「アクセスを求める権利」「削除を求める権利」、そして「セキュリティの確保」といったプライバシー保護規則が、欧州だけではなく広く一般的に確立されない限り、利用する上での不安は払拭されない。ひいてはAIを良い方向に活用するソリューションの普及が鈍ることになると思う。