「嫌いな発明を発表しなければならないなら、私は(携帯) 電話を選びます」という小学2年生の作文が米国で話題になった。

Facebookからの個人情報流出が社会問題化する中、ルイジアナ州の小学校で発明の功罪について考える授業が行われた。議論を深めるために生徒にいくつかの質問が用意されていた。その中の「あなたが嫌いな発明な何? それはなぜ?」に対して、クラスの4人の生徒が「電話」を挙げたという。子ども達が「phone」としているから「電話」と訳したが、子ども達が嫌っているのは「スマートフォン」である。

「なぜなら、お父さんとお母さんが毎日電話を使っているからです。電話は本当に悪い習慣になることがあります。私はお母さんの電話が嫌いです。お母さんが電話を持たなければ良かったのに、と思います。だから、私が嫌いな発明は電話です」

皮肉にも、この授業の内容を先生がFacebookで公開したことで瞬く間に26万回以上も共有され、全国ニュースにも取り上げられた。あまりの反響の大きさに驚いた先生はすぐに投稿を削除した。Facebookの問題について考える授業だったのに、生徒の手書きの文章を撮影した画像まで共有したのは不用意だったように思う。

しかし、その文章はスマートフォンが「悪い習慣」になり得ることを人々に強く印象づける大きなインパクトを残した。

  • スマートフォンのユーザー年齢が下がってペアレンタルコントロールの重要性が増しているが、子ども達のデバイスのアクティビティを管理する保護者にもスマートフォン中毒は広がっている

5月31日にMicrosoftが、Microsoftアカウントで提供するペアレンタルコントロール機能をAndroidデバイスにも拡大した。その中にはデジタル機器を使った子どものアクティビティを確認する機能も含まれる。サービスをクロスプラットフォームで広く提供する戦略の一環であり、実際Androidデバイスにも広げることで多くのモバイルユーザーをカバーでき、Microsoftのペアレンタルコントロールがより実用的なものになる。

でも、コントロールが必要なのはティーンエイジャーや子ども達だけではない。家族が揃ってるレストランで料理を待っている間にスマートフォンを眺め続けるティーンエイジャーが珍しくないが、小さい子どもがいるのにスマートフォンを使い続けている保護者だって珍しくない。

Googleも今年秋にリリースするAndroidの次期メジャーアップグレード「Android P」に、スマートフォンの長時間使用を防ぐ機能を組み込む。この原稿はWWDC 2018が始まる前に書いているので噂の話になってしまうが、AppleのiOSの次期メジャーバージョンでもスマートフォン依存対策が目玉機能の1つになると言われている。

Android Pでは、デバイスの使用時間、アンロック回数、通知数、各アプリに費やしている時間などをユーザーがダッシュボードで簡単に把握できる。使いすぎを抑えるように「App Timer」を用いてアプリごとに1日の使用時間の目標を設定することも可能。就寝時間など使用を控えたい時間帯に画面をグレイモードにする機能も用意した。「グレイモード?」と思うかもしれないが、画面の色が無くなるだけでスマートフォンを使う意欲が減退することが実験調査で明らかになっている。

でも、依存症と呼べるほどスマートフォンの使い続けているユーザーが自ら夜にスマートフォンをグレイモードに設定するだろうか?

そうした対策機能は、スマートフォン中毒を何とかしたいと一念発起して取り組み始めた人をサポートする機能である。そうした対策機能がプラットフォームに組み込まれる以前から「Forest: Stay focused」のような優れた依存症対策ツールが存在していた。それなのにスマートフォンの長時間使用の問題は深刻化してきたのだ。

スマートフォン依存症を減らすには、ツールも大事だが、それ以上にスマートフォンの使用が中毒化することの害にユーザーが気づき、自発的な対策を促す必要がある。スマートフォン依存症については、孤独への恐怖といった心理的な悩みを埋めることが動機になっているという指摘もあり、少し前に話題になったアルコール依存症と同じように、本人が無自覚のまま依存の深みにはまってしまうリスクがある。

スマートフォンが悪い習慣になり得ることをストレートに訴えた小学2年生のエッセイは、特に小さな子どもを持つ多くのスマートフォンユーザーに依存症の害を気づかせた。子どもとの時間にスマートフォンを取り出すのを控えようと多くの人が考えただろうし、スマートフォン中毒対策の機能に人々が興味を持つきっかけにもなったと思う。

ちなみに私もスマートフォンとタブレットのヘビーユーザーだが、なるべく価値のあるアプリに集中して、ただ時間を消費するだけのアプリに費やす時間を減らすように努めている。たとえば、すぐに使いたくなるところにKindleアプリを置き、YouTubeアプリやTwitter用のアプリはアクセスが面倒くさい場所に置いている。また、ブラウザに登録してあるブックマークは仕事用と必要最低限のものだけにしている。きっかけは、スマートフォンやタブレットを使う時間が増え始めてから読みたい本があるのに本を読まなくなったからだ。それだけだったら改心しなかったかもしれないが、ある日、よく読んでいたころの読書ペースに基づいて平均寿命までに自分が本をあと何冊読めるか計算してみた。その結果が漠然と思っていたよりもはるかに少なくて愕然とした。人の時間は有限であり、やりたいことに取り組める時間は限られることに気づかされた。価値のない情報に時間を奪われるのは本当にもったいない、そう思うようになってからモバイルデバイスの使い方が変わった。