よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属、結成7年目を迎えたお笑いコンビ・空気階段。過去には「キングオブコント」準決勝まで2度も勝ち進み、TBSラジオ「マイナビ Laughter Night」のチャンピオンライブでは2連覇も達成している。

今年3月24日には、ヨシモト∞ホールにおけるランキングシステム最上位「ファーストクラス」の顔となる5組「TOP5」にも新加入。同じくTOP5の座に就く横澤夏子・コロコロチキチキペッパーズ・おかずクラブ・ゆにばーすと並び、さらなる活躍を期待されている。

そして昨年、ボケを担当する鈴木もぐら氏は結婚し、さらにはパパになったという。順風満帆な芸人ライフを歩んでいるようにも見える同氏だが、一方では“借金600万円”など、なかなか気合いの入った「クズ」っぷりも話題になっているのだとか。

本連載では、そんな鈴木もぐら氏が自身の生活を見直し、新たな人生を歩んでいくためのエッセンスを探る過程を追いかける。

  • 「借金を返そうにも何からどう手を付けていいかわからない状態」と嘆く鈴木もぐら氏(左)は、芸人でありながらファイナンシャルプランナーとしても活動するさんきゅう倉田氏(右)のもとを訪れた(写真:マイナビニュース)

    「借金を返そうにも何からどう手を付けていいかわからない状態」と嘆く鈴木もぐら氏(左)は、芸人でありながらファイナンシャルプランナーとしても活動するさんきゅう倉田氏(右)のもとを訪れた

禁煙への挑戦を始めた前回に続き、第3回となる今回は「借金を返済するためにはどうすればいいか」をファイナンシャルプランナーに相談しにいく様子をお届けする。

鈴木もぐら氏が相談を持ちかけたのは、芸人でありながらファイナンシャルプランナーとしても活動しているさんきゅう倉田氏。芸人としては鈴木もぐら氏の先輩にあたるというさんきゅう倉田氏ならではの、ストレートなアドバイスの数々をお見逃しなく。

  • さんきゅう倉田 芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに入社


借金額の大きさも納得のギャンブラー気質

さんきゅう倉田氏(以下、倉田):じゃあ、まずは借金の額から聞こうかな。

鈴木もぐら氏(以下、鈴木):早速ですか……。

倉田:そこがやっぱり一番気になるじゃん。でも、そんなに借金があることを苦にしてないでしょ?

鈴木:いや、苦にしてないというか、見ないようにしてる感じですね。考えてしまうと苦になるので。

倉田:考えると苦なんだ! さすがのもぐら君でも?

鈴木:そりゃ苦ですよ。だってこうやってる間にも利息増えてるんですから。

倉田:まあそうだよね。で、いくら借りてるの?

鈴木:正直、だいたいしか把握できてないっす。600~650万円の間ぐらいですね。

倉田:そんなに借りられるものなの!?

鈴木:半分ぐらいは知り合いからの借金なので。芸人の同期とか先輩、以前働いてたバイト先の店長とか、社長とかですね。

倉田:貸してくれるもんなんだね。じゃあこの人たちから借りた分は利息がないってことだ。

鈴木:そうですね。その人たちに関しては、いつまでに返すかもきっちり決まっていないというか。いつでもいいよと言っていただいてて。

倉田:そしたら、サラ金から借りてるほうを先に返したい?

鈴木:んー……気持ち的には知り合いの方たちから先に返したいんですけどね。

倉田:信頼してもらってるわけだし、もぐら君に対してめちゃくちゃ売れる可能性を感じて貸してくれてるってのもあるだろうしね。ちなみに、利息はいくらぐらい把握してますか。

鈴木:もはや利息もわからないんですよ……。

  • 倉田氏がメモをとる様子を不安げに見つめるもぐら氏

倉田:多分だけど、年利で12~14%の間ぐらいじゃないかな。利息は把握したほうがいいね。元金が300万円だとしたら、年利10%だとしても30万円でしょ? 月に3万円返しても全然減らないよ。

鈴木:たしかに、減らなさ加減から考えるとそのぐらいだったと思います。

倉田:毎月ちゃんと返してるの?

鈴木:今は返せてないんですけど、返していたころはまさに月3~4万円ぐらいで元金減ってないみたいな状態でしたね。

倉田:そうだよね。まずはそこを少しでも減らしていかないと。急なんだけど、アンケート的なことをしてもいいですか?

鈴木:はい、お願いします。

倉田:あなたはギャンブルで3万円勝ちました。今3万円持っていて、AかBか選べます。Aは「50%の確率でさらに1万円もらえるけど、50%の確率で1万円失う」、Bは「それをやらない」。どっちを選びますか?

鈴木:(食い気味に)いやそりゃAですね。

倉田:なんで?

鈴木:まず3万円勝ってるんですよね? そしてニブイチでさらに1万円手に入る。ニブイチで失う。AとBで両方とも確率は同じように思えるんですけど、勝って3万円手にしてるんで「勝ち運」っていうのが付いてるんですよ。だからつまり、これはそうですね……まあ7割方1万円もらえる流れというか。

倉田:そうなんだ(笑)

鈴木:ここでA行かなかったら、3万円勝ったのも否定されるぐらいの感じですね。ここで負けても2万円になるだけですし。

倉田:じゃあもう1個聞きましょう。もぐら君は今3万円負けてます。さっきと同じAかBが選べます。どう?

鈴木:あー負けてんすか……。ちなみにこれパチンコですか? パチンコだったらやりますね。

倉田:あ、そう!?

鈴木:パチンコって、まず319分の1を引かないといけなくて、さらにそこから~(以下略)。

倉田:パチンコ以外だったらどうですか? 競馬とか。

鈴木:や、やりますね。

倉田:じゃあなんだってやるじゃん。

鈴木:50%で1万円は相当デカいんですよ! 予想とかをしていろんな視点で見ることによって、勝率はさらに上がりますんで。いわゆるゾーンに入ると100%勝てますね。負ける気しないときって、負けないんですよ。

倉田:めちゃくちゃ名言みたいに言ってるけど(笑)。じゃあ、今100万円が手に入ったとして、それをすぐに返済に回せば将来の利息分で200万円得するとわかってた場合、それでもその100万円を今ギャンブルとかに使う?

鈴木:使いますね。1年後の200万円よりも今の200万円を追いたいです。

倉田:なるほど。50万円だったらどう?

鈴木:50万円でも100万円を狙って……

倉田:ギャンブルやりたいだけじゃん(笑)

  • もぐら氏の徹底した勝負師っぷりに倉田氏も思わず崩れ落ちる

鈴木:お金を借りてる皆さんに早く返したいんですよ。なおかつ平等に返したいというか。仮に僕が50万円を持ってて、この50万円を皆さんに均等にお返ししますって言っても、割合からいって3,000円とかの方が出てきちゃうかもしれない。そしたら、あいつ50万円持ってるのになんで俺んとこには3,000円しか返ってこないんだよってなるじゃないですか。できれば耳を揃えて返したい。っていうことを考えると、この50を100に、100を200にっていう勝負を重ねちゃって……。

倉田:ど、どこで止めるの?

鈴木:1回悩むとしたら、トータルの借金額、600いくらになったときですよね。その600を一気に全部返すか、それともこの600を800にして、皆さんに色を付けるか。

倉田:じゃあ一撃で800とかもらわないとギャンブルはやっちゃうんだ。

鈴木:かもしれないですね。でも僕、ギャンブルはしばらくお休みしてるんですよ。

倉田:あ、そうなんだ。ちなみに、さっきの質問で両方Aを選ぶ人は、ギャンブル依存症の可能性が高いです。

鈴木:依存症……いや僕もう抜け出してるつもりなんですけど。

倉田:でも思考がそっち側だよ。心は持ってかれてる。回路は当時のまま。

鈴木:めちゃくちゃ損してるじゃないですか。ギャンブルしてないのにギャンブルしてる人間の思考回路って。

倉田:その損してるって考え方がまさにそう(笑)。多いパターンは、3万円勝ったときだけAを選ぶっていう。

鈴木:なるほど。みんな余裕があるからやってるんですね。

倉田:趣味の範囲内に収まるぐらいならギャンブルも否定はしないんだけどね。確実にそれを超えるぐらいお金つぎ込んじゃうでしょ。例えば、貯金とかは収入の2割を目安にするのがあまり無理なく続けられるラインだと言われてて。借金返済もできれば2割ぐらいずつ回したほうがいい。ちなみに、毎月の収入はどれぐらいですか。

(※ 一部、大人の事情により具体的な金額は伏せさせていただきます)

鈴木:芸人で●万円、バイトで●万円ぐらいっす。

倉田:家賃と携帯代はいくら?

鈴木:家賃が6万円、携帯代が1万円ぐらいですね。

倉田:あとは何にお金使ってる?

  • やっとのことで本題に入り、倉田氏の表情も一層真剣に

鈴木:実は今、奥さんとは一緒に住んでいないんですよね。子どもがまだ5カ月なんですけど、なんせ今の家が狭くて3人一緒には住めないので、奥さんは実家に子ども連れて帰ってまして。で、そちらに月●万円の仕送りをしてる状態です。

倉田:それだと自由に使えるお金もほとんど残らないね……。

鈴木:ですね。遊びっていったら携帯でやる将棋のアプリぐらいな感じで。

倉田:そうだなぁ、仕送りの分を家賃に回して、今より広い部屋に引っ越すとか。

鈴木:貯金ゼロなので初期費用とかが用意できないんですよね。都営住宅にも応募したんですけどハズレちゃって。

倉田:ギャンブル運ないね。

鈴木:まあ都営はギャンブルじゃないですからね。

倉田:ギャンブルとの違いって何?

鈴木:ヒリつかないというか。ゾーンがない。っしゃーいけー!! みたいなのもないですし、当たるかなぁ当たってほしいなぁぐらいの感じですからね。

倉田:そこは普通の人と同じ感覚なんだね。ファイナンシャルプランニング的にはさ、働いてて貯金ができないっていう人に対して節約できる部分を考えたりとかするんだけど、なんかもう絞るところがないもんね。雑巾としてもカラッカラ。

鈴木:雑巾としてもカラッカラとか心がギャンブル依存症とかもう……どうしたらいいんすか。

倉田:これはもう収入を増やすしかないよね。バイトよりは芸人としての収入のほうが増やしやすいと思うんだけど。賞レースも結果出してるし、世間的にも実力が認められてきてるんじゃない? こないだ●●っていう経済誌の取材を受けたんだけど、そのときも記者の人が「お笑いが好きで、鈴木もぐらさんのファンです。ラジオいつも聞いてます」って言ってたよ。

鈴木:マジすか。だってそれって一流経済誌ですよね。僕でも名前知ってるぐらいですから。いや、ちょっとお金くださいよ!

倉田:まあまあ(笑)。もぐら君がどれぐらい貧乏かってみんな把握してないんじゃない?

鈴木:お金くれってのはちょっとあれですけど、仕事欲しいですよ。この世を回されてる皆さんの潤滑油になれるような仕事があれば何でもやりますんで。肩もむとか。

倉田:お笑いじゃないじゃん(笑)。バイトはけっこう両立ギリギリな感じでしょ。営業とかはないの?

鈴木:全然ないんですよね。去年、学園祭を1本入れていただいたんですけど、そのときに僕が寝坊して。舞台には間に合ったんですけど、入り時間には遅れちゃったんですよね。そこから1本も入ってきてないです。あのときは本当にすみませんでした。

倉田:おもしろさももちろん大事だけど、事務所の社員さんとのつながりで芸人としての収入はまだまだ増やせるんじゃないかな。

鈴木:政治ですね。政治力が足らない。