電車内や駅のモニターに表示される広告は、みなさんもお馴染みではないでしょうか? 株式会社ジェイアール東日本企画は、首都圏の鉄道の交通広告を扱っている会社です。

今回は交通広告と数学の関係について、メディア・コンテンツ推進センターの手老善さんにお話をうかがいました。

―さっそくですが、株式会社ジェイアール東日本企画という会社について教えていただけますか?

はい。ジェイアール東日本企画は、国鉄民営化でJRが発足した翌年の1988年に設立されました。それまでの日本国有鉄道は国の法律に縛られていて、鉄道以外の事業への展開がかなり制限されていたのですが、民営化されたことにより、鉄道以外の領域に事業を拡げていこうということで生まれた会社です。事業としては大きくわけて2つあり、1つはJR東日本グループの一員として鉄道関連の広告事業を受け持つこと。もう1つは通常の広告代理店としての事業です。

―電車内や駅のモニター広告なども担当されているんですよね?

そうですね。電車内や駅ホームのモニターなどは「デジタルサイネージ」と呼ばれる新しい媒体です。僕はもともと子会社で車内モニターの「トレインチャンネル」のシステム設計やコンテンツ配信などを行っていました。よく担当していたのはニュースや天気予報を流し込む作業で、JR東日本グループの一員であるジェイアール東日本企画だからこそできるという仕事です。

―現在、手老さんはどんなお仕事をされているんですか?

僕のいる部署は、新規案件、つまり新しいことをやるのがメインの部署です。最近では、さいたま市から委託をうけて、大宮駅周辺でのコミュニティサイクル事業の運営をはじめました。駅周辺などの拠点から自転車を貸し出すのですが、返却は複数ある拠点のどこに返しても大丈夫というものです。

また、山手線の各駅の情報をスマートフォン向けに配信する「山手線エキナカネット」というスマートフォンアプリの開発もしています。

―いろいろなお仕事をされているんですね!

僕の部署はなんでもやれる部署ですから(笑)。じつは、仕事としてJR東日本の車両基地の様子を映像化した『車両基地』というDVDを出したんです。山手線や新幹線の車両基地の映像が収録されているのですが、終電後の新宿駅の映像もおもしろいですよ。利用者数世界一の新宿駅にだれもいない映像はかなり衝撃的なんじゃないでしょうか。

いちサラリーマンなのに、自分の好きなものを出させてもらってとてもありがたいです。続編の『車両基地2』や『車両基地 東急バス』も発売しました。

車両基地のDVDパッケージ。 JR東日本商品化許諾済 (C)ユニバーサル ミュージック

―マニアックですね! でもファンにはたまらないDVDみたいです。それにしても手老さんは鉄道がお好きなんですね

好きじゃないと言ったら大嘘になるでしょうね(笑)。前職はバス会社で運行管理の仕事をしていましたので、バスも好きです。あ、飛行機も好きですね。とにかく乗り物全般が好きなんです。

鉄道は無機質な交通システムに見えても、たくさんの人が関わって動かしているというのが魅力に感じているのかもしれませんね。

―手老さんのお仕事で、数学が役に立っているのはどんなところでしょうか

僕は法学部政治学科出身の文系なのですが、社内には経営工学や生物系など、広告会社ながら理系大学出身の人間も多いんです。実際に、マーケティングの部署は統計調査の結果を広告プランに生かしたりもするので、お客さまの感性的な好みといったものもくみ取ってプランニングしなければなりません。そういうところでは数理的な知識が必要だと思います。

また、今の広告業界には思考回路を自ら組み立てられる人間が求められている気がするので、そういった意味でも理数科目を学んだ人は強いかもしれませんね。

―意外と理系の人が多い分野なんですね!

デジタルサイネージの実験を担当したこともありますよ。テレビでいうところの視聴率調査のようなことを、駅ナカのモニターによるデジタルサイネージでできないかを実験したんです。何曜日の何時くらいが良く見られているのか、男性と女性だと異なるのか、といった具合にです。

すると、おもしろいことに休日の午後帯の女性の注目率が高いという数字が出たんです。そうなると、休日の午後に女性向けの広告提案が効果的なのではないか、となります。こういったマーケティングにも数理的な知識は不可欠だと思います。

―先ほど紹介してくださったDVDの撮影スケジュールも組み立てるのはなかなか難しそうですね?

そうですね。DVD撮影の際は、終電と始発の間の時間で撮影をしなければならない場合もあり、時刻表を確認して計算しながら撮影スケジュールを組まなければなりません。数字の話としては、時刻との関わり合いも大いにあると思います。

―手老さんは昔から理系科目が得意だったんですか?

化学などは好きでしたし、得意でしたね。数学だと幾何学や図形などが好きです。僕はそもそも電車などの交通機関が好きでした。初めてしゃべった日本語が、家の前を走っているバスを見て「バス」と言ったという話があるほどです(笑)。

だから幾何学や図形は、車両の形や線路の分岐といった自分の好きなものからのインスピレーションで興味をもてたのかもしれませんね。

―好きなことを自分の仕事に生かせるなんて、とても幸せなことだと思います。本日はありがとうございました!

手老さんのお話から、ふだん目にしている交通広告も、展開するには理数的な知識が生かされていることがわかりました。手老さんは、役立てるだけではなく、自分の仕事をもっと楽しくするために理数の知識を生かしているように思いました。手老さんのように、数学によって仕事を豊かなものにする、なんてこともできるんですね。手老さん、仕事を豊かにする数学のお話をありがとうございました。

今回のインタビュイー

手老 善(てろう ぜん)
1982年東京都出身。
2010年、株式会社ジェイアール東日本企画に入社。現在、メディア・コンテンツ推進センター 開発・推進第二部に所属。

ジェイアール東日本企画

このテキストは、(公財)日本数学検定協会の運営する数学検定ファンサイトの「数学探偵が行く!」のコンテンツを再編集したものです。

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