自治体が補助金や助成金を出すケースはいくつかありますが、以前にご紹介した「結婚祝い金制度」や前回の「子育て世帯の転入・転居支援金制度」は、人口増加を狙ったものでした。

より範囲が広いと思われる「定住奨励金」などの対策となると、人口が減少しているほぼすべての地域が行っているのではないかと思います。しかし、その対策がうまく機能しているという情報はあまり入ってきません。

過疎地域の現状や対策の問題点を、移住したいと考えている側の人間が分析することは、事前にその地域や過疎の現状をよく理解できるうえ、自分たちの移住への意思をより深く検証するのに役立つはずです。今回は定住奨励金についてご紹介します。

  • 過疎に悩む地域は定住奨励金を用い、県外などから移住者を募るが……(※写真と本文は関係ありません)

事例をいくつかご紹介する前に、過疎対策の問題点を考えてみましょう。各自治体の定住促進サイトを見ていると、その地域の魅力をいろいろ紹介しています。

しかし、その地域の住民が本当に自分たちの地域を「魅力的」だと考えているでしょうか。過疎という結果には、少なからず自分たちも関わっているはずです。魅力がないと去っていく子どもたちを見送ったのも、自分たちにほかなりません。

被害者的な取り上げ方もされがちな過疎問題ですが、「被害者でもあり加害者でもある」ということからスタートしなければ問題はみえてきません。胸を張って魅力的な地域だと言える住民がいないところに、移住してくる人は少ないでしょう。

あるテレビ番組で「富山県南砺市では、人口が減少しているのに外国人の移住者が増えている」と紹介していました。異国の人たちの新鮮な目によって魅力を発見してもらうのは何とも寂しい話です。まずは、自らの口で我が子たちに住む土地の魅力を語れるようになってほしいです。それが実現してこそ、地縁のない第三者にも魅力を理解してもらえるようになるでしょう。

移住者のニーズ把握が大切

実際に移住を考えている人たちが、最も気になるものは何でしょうか。人によって価値観は違うので、別の要素や順番もあるとは思いますが、まずは「仕事」ではないかと思います。次に「住むところの確保」で、その次はファミリーであれば「子どもの教育」、単身者であれば「結婚」などがくると考えます。

ただ、やりたい仕事があったとしても、そこからいきなり移住となると、かなりのハードルがあります。植え付けや収穫期の土日のお試し体験や、数カ月ないしは1年間のインターン制度、農家などでのアルバイトなど、ハードルが低く気軽に移住先に触れ合う機会を数多く用意することが大切ではないでしょうか。地元企業などでの体験アルバイトでもよいでしょう。

そうした手軽な体験を多く用意した中で、もう少し踏み込んで移住を考えたくなった方々のために、次のステップを用意すればよいと思います。わずかな「にんじん」を目の前にぶら下げても、それで移住を決定する人は少ないでしょうし、いろいろなお試し体験などで足元を固めていない移住の定着率は高くならないと思います。

どこがどのような制度を設けているかは、総務省の「移住ナビ」や「移住・交流情報ガーデン」、一般社団法人移住・交流推進機構などで探してみてください。