順調に事業を伸ばしてきた経営者や、部署・チームを持たれるマネージャー、人事、意欲的な若手社員の方々から、「私の会社で色々な組織課題が出ており、手を打っているがうまくいかない」という相談を頂くことがあります。場当たりの施策をとる前に、まずは「なぜ私達の会社・組織は変わらないのか?」、課題を分析していくことが大切です。

前回は、場当たりな人事施策を打っていく前に、組織人事の課題を分析していくことの重要性をお話ししました。今回から具体的なケースをもとに、組織人事の課題分析の観点をお伝えしていきましょう。

あるベンチャー企業の人事責任者が直面した課題

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先日、社員数100名規模のベンチャー人事責任者の方からこのような相談を頂きました。

弊社は多角的に事業を展開し、事業が成長してきています。
社員数も私が参画してから数年で、100名を越えました。
しかし、人事部として、事業側へ提言を行うという形ではなく、
代表、執行役からの意見をもとに人事企画を組んでいます。
ただ、漠然とですが当方で人事領域の企画をうまく設計できている感覚がありません。
場当たり的に代表のアイデアで施策が進んでいる感覚があり、一貫性がなく、効果も見えていない状況と感じています。
どのように進めていくのが良いのでしょうか。

印象的だったのは、経営者の「社員の育成への強い思い」です。さまざまに試行錯誤をされながら取り組まれておりながら、思うように成果に繋がっていない様子が伺えました。

それはなぜでしょうか。

企業組織の成長における「100人の壁」

企業組織の成長に関して「100人の壁」という言葉があります。

創業後、社長が一人で全社社員をマネジメントする所から始まり、事業の売上が立ち始め、マーケティング、セールスの勝ちパターンができると人員拡大を進めることで、さらに事業の拡大を進めます。

このタイミングで、社長個人が全社社員を直接マネジメントする段階から、事業の各機能(営業やサービス提供チーム等)に責任者を置く、即ち、幹部やマネージャーを採用します。

ここで、社長と幹部陣の間で事業方針や人事評価などの経営思想が揃った人材マネジメントが行われると、まずは組織人事面で表面的な課題は生まれず、事業成長に即して役割・業務が増えるため、社員の採用を進めます。そして、幹部の傘下にメンバー/スタッフを配置し組織拡大が進みます。

しかし、組織拡大と同時に、役割や業務も複雑化していきます。幹部陣もだんだんと一通りの社員のパフォーマンスが直接見えづらくなる局面が訪れます。

そのタイミングで、退職者が出始めます。弊社で退職者インタビュー(社員数50名~300名規模の企業を退職した経験のあるミレニアム世代社員/25-30代)を実施したところ、下記のような退職理由を多く伺いました。

人事評価や昇進制度の不透明・不公平さ

・優秀な上司の部署でなければ評価、昇進できない

・上司が私情、感情で評価、指示やアドバイスをする。人事評価制度も整っておらず社内に基準がない。その状況を経営幹部陣も認識しておらず、正しい人事評価がされていると認識している

・人事部が、経営陣や成果を出している幹部の御用聞きとなっており、社員が成果を生むための企画取り組み、自社としてのあるべき評価の基準創りにコミットしていない。

そして、上記のような理由で転職し、転職先で活躍していらっしゃる方は多数いらっしゃるでしょう。

幹部陣が社員一人一人のパフォーマンスを見れなくなる状況の前に、企業・事業部横断での人事組織の課題分析を行う「経営企画、ないしは人事企画機能」が企業には必要となるのですが(緊急度は低いが、重要度高の領域)、多くの企業様では、売上を創る営業、サービス提供(緊急度が高い領域)に優先的に時間や資金を投下しています。

このタイミングが「100人の壁」です。

社長のカリスマ性や、事業の先進性などで「100人の壁」を越える企業もありますが、稀なケースです。競合の登場、市場変化により、途中から売上、従業員数が停滞するケースが目立ちます。

持続的な成長の基本原則は「三方よし」

企業の持続的な成長の基本原則は「三方よし」。企業、顧客、社員があって成り立ちます。

顧客について「Customer Success(顧客成功)」という考え方があります。マーケティング、セールス、サービス提供の目的は「自社の商品の売りつけ」ではなく、「顧客の期待の達成・課題の解決」に置き、施策を設計し顧客の声をもとに改善していくという考え方です。

社員についても「Employee Success(社員成功)」という考え方が重要になってきます。

具体的な施策ありきで考える前に、表面化している課題について、経営陣、現場、人事、若手を交え、はじめに「私たちは何を目指しているのか」を共有し、その上で各自の課題感を腹を割って共有し、一緒に創っていく議論から入っていく必要があります。

人事施策や方法論は色々とありますが、結局は運用定着し、自社・社員・顧客の成功につながらなければ意味がありません。それぞれが自分の責務を盾にしてコミュニケーションを取らない状況が続いていると、組織は変わりません。

前提として、まず社内の各ステークホルダーが企業、社員、顧客、3者の成功に向けて、協力関係になっていること、「一緒に組織(チーム)を創る状態を創ること」ことが大切です。

経営陣でも、人事でも、現場でも、課題に気づいた方から旗揚げし、人事組織戦略の会議体を設け、この流れ作りを始めていくことが重要なのです。