早稲田塾は、東京および神奈川に15校を展開する現役高校生のための大学受験予備校だ。そこでは社内SNSを、拠点間をつなぐ情報ツールとして、いわゆる一般のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とは一風違う使い方をしているという。それは一体どんな使い方なのか。早稲田塾 アドミッションズ・オフィス責任者の赤坂俊輔氏にお話を伺った。

なぜ早稲田塾にSNSなのか

早稲田塾 アドミッションズ・オフィス責任者 赤坂俊輔氏

早稲田塾は、現役高校生専門の大学受験予備校で、浪人生はいない。雑誌『ダ・カーポ』の2006年度版塾・予備校ランキングや、オリコンによる顧客満足度の高い大学受験塾・予備校ランキングで第1位を獲得するなど、予備校として高い評価を受けている。生徒たちが「偏差値」や「レベル」などで大学を選ぶのをよしとせず、将来何をしたいのかを考えた上で入る大学や学部を選ばせるというポリシーを持っている。また、AO(アドミッションズ オフィス)入試・推薦入試に最も力を入れている予備校と言われている。

社風として、上司/部下などの上下なく、プロジェクトごとに必要な人を集めるというやり方で仕事を進めている。そんな早稲田塾の「ネットワーク経営」の理念にマッチしたツールが"SNS"だったという。「そもそも全員主役の運営というSNS的な仕事の仕方をするグループなので、しっくりきたのかもしれません。今ではすっかり業務ツールとして定着しています」(赤坂氏)。

2006年4月からトライアルを開始し、同年8月から本格的に開始。導入したのはビートコミュニケーションの「ビートプロ」だ。後に、社内向けとして発売された「ビートオフィス」に切り替えた。ビートコミュニケーションは、顧客の考え、目指す方向をスピーディーに的確に理解してくれたことが導入したポイントだったという。「ノウハウが蓄積されていて、システムの性質をよく理解しており、提案が適切。過剰な提案がないところがよかった」(同氏)。

時間と空間を超えた情報のやりとりが可能に

早稲田塾本社(インスティテュート)にはそもそも、ごく一部の社員を除いて、個人用の机、パソコンがない。ほとんどの社員はいくつかの現場(校舎など)をまわって仕事をしているため、必要ないからだ。それ故に、特定の人間に連絡を取ることは他の会社以上に難しくなる。

そこで、パソコンの代わりに社員全員が同じ携帯端末を持ち、即時に会話やメールができるようにしている。端末用のアドレスは全員が持っており、仕事上の連絡は端末中心だ。メールやスケジュールのリマインダは端末に飛んでくるようになっている。しかし、端末でのやりとりだけでは簡単な連絡しかできず、複雑な話をするには向いていない。そこで現在は、この端末と社内SNSがセットで定着している状態になっているのだ。

都合がいいのは、社員間だけではない。社員はフルタイムで働いているが、インターンシップ生として校舎の運営に関わる大学生達(プレップ・インターン)は特定の曜日だけシフトに入る。当然、デイリーで顔を合わせることはできないが、SNSがあれば、情報を共有したり企画・立案を一緒に行うといったコミュニケーションが可能になる。つまり、空間と時間を超えて情報という軸でつながることができるというわけだ。

開始当初からSNSにはプレップ・インターンも参加し、現在は社員とインターンを含め、500名以上が利用している。参加は強制していないが、そのほとんどが、最初から面白がって積極的に参加したという。赤坂氏は「プレップ・インターンは、ほとんど早稲田塾出身の大学生ばかりなので、後輩の高校生たちのために何とかしてあげたいという気持ちが強い。早稲田塾出身者は期の伝承の意識が強いので、それが良い方向に働いたようだ」と語る。

インターンたちは、違う曜日のインターンとコミュニケーションを取ったり、業務の引き継ぎなどに、積極的に自発的にSNSを活用している。「いわばアルバイトである彼らを社内システムに入れるのは、彼らと共に塾を創っていきたいという意識があるからです」(同氏)。

ただし、セキュリティの観点から、コミュニティによっては特定の人間しか見られないように設定してリスクをマネジメントする。また、SNSでは業務内容のやりとりのみにし、個人情報保護の観点から、生徒の個人名は出さないようにというルールを設けている。

次回は、早稲田塾での具体的なSNS活用例について話を訊く。

【基本データ】

  • 使用製品: ビートコミュニケーション ビートオフィス
  • 使用時期: 2006年8月から
  • ファシリテーター: なし
  • 参加方法: 申告制
  • 直近1週間で登録ユーザーの7割がログイン
  • 機能別利用状況: 日記平均5本、コミュニティトピックコメント数100 - 200、メッセージ50 - 100、Wikiの書き込み10 - 50、スケジュール設定100 - 200