前回はウイルス対策やシステムのアップデートといったソフトウエアの対策を述べた。今回は、サーバを運用していくにあたり、「いざ」というときのために備えておきたいハードウエア環境やサーバ保守サービスに関して解説していく。

本連載で使用するサーバについて

本連載では「NEC得選街」で購入できるタワー型サーバ「Express5800/110Gd」(写真)を例に、サーバのセッティング方法を解説していく(6月現在、NEC得選街では後継機種となる「Express5800/110Ge」が販売されている)。サーバの基本構成は次のとおり。CPU:Celeron D(2.93GHz) / メモリ:1GB / HDD:80GB / OS:Windows Server 2003 R2 Standard Edition。より詳細な構成情報については連載第2回を参照してほしい。

突然のトラブルに備えよう

サーバを運用していくにあたって一番重要視される点は、『安定してサービスを提供し続けること』だ。

システムの調子が悪く、頻繁に止まったり、何かしらの不具合で重要なデータが消えてしまったりするようでは、ユーザ側としても安心して利用できない。

また、サーバ用として信頼性のある部品を採用し、今は安定動作していたとしても、使い続けていくうちにハードウエアは劣化することもある。そうなった場合、十分な性能を発揮できなくなったり、最悪故障につながったりする可能性がある。

サーバの故障以外に、外的要因による事故も起こりうる。例えば、設置場所によっては誰かが足を引っかけてケーブルが抜け、マシンの電源が落ちてしまうかもしれない。この場合は、設置場所やケーブルの取り回しの工夫でなんとかなるが、突然の停電や、電圧低下等が起こってしまった場合にもマシンの電源は落ちてしまう。

では、どのように対処すればよいだろうか。

商用目的で備えておきたい機器

ここからは、トラブル回避のための冗長化の種類と無停電電源装置(UPS)の導入、ハードウエアメンテナンスサービスをパック化したサービスである「保守パック」を紹介する。

冗長化に関して(RAID)

「冗長化」とは、最低限必要な設備よりも多くの設備を用意することによって、一部が故障したとしても、サービスが継続できるようにすることである。

今回の連載では、ファイルサーバやWebサーバとして活用できるよう解説を進めてきたが、マシントラブルが発生するところは、主にハードディスク、続いて、電源である。

そこでまず、ハードディスクの冗長化を考えていこう。

ハードディスクにはあらゆる情報が書き込まれているので、システムの一番の"キモ"となる。そのため、ハードディスク内のデータさえ取り出せれば、時間はかかってもシステムを復旧できる可能性がある。ならば、システムに複数のハードディスクを搭載し、その複数のハードディスクへ分散してデータが書き込まれれば、たとえ一つが故障しても、他のハードディスクから復旧作業に取りかかれる。

このように、複数のハードディスクを用意し、冗長化することを、RAID(レイド:Redundant Arrays of Inexpensive Disks)という。RAIDは数種類あり、その構成の仕方によってRAID 0/1/0+1/5/6などがある。

RAID 1は、同じデータを複数のハードディスクに一度に書き込み、仮に片方のハードディスクに故障が起きても、データの救出ができる方式で、ミラーリングとも呼ばれている。この場合は、一度に2つのハードディスクに書き込みを行うため、書き込み速度は若干低下する。

RAID 1のイメージ図。データを2箇所に書き込む。ハードディスクの利用効率は悪いが、障害に強い

なお、冗長化にはならないが、データを分散して複数のハードディスクに書き込みをし、高速に処理する方式がある。これは「ストライピング」といい、RAIDのシステムにはミラーリングとストライピングの両方を組み合わせたシステムも存在する。

そして、RAIDの現在の中心といえるのが、RAID 5である。複数のハードディスクにデータを分散して書き込み、パフォーマンスを上げる一方、ハードディスクが故障したときに書き込み記録を修復するための「パリティ」という冗長コードを全てのディスクに分散して保存するのだ(ただし、一度に2台以上のハードディスクが故障した場合は修復できない)。

RAID 5のイメージ図。パフォーマンスに優れ、障害にも強い

表1 RAIDにおける構成と必要ディスク数

RAID 方式 ディスク数
RAID 0 ストライピング 2
RAID 1 ミラーリング 2
RAID 0+1 ストライピング+ミラーリング 4
RAID 5 パリティ分散記録 3

連載で使用しているタワー(デスクトップ)型サーバ「Express5800/110Gd」は、このRAIDシステムは0と1に標準で対応し、RAID 5はオプションで利用できる。高速性を求めるならばRAID 5を採用し、そうでない場合は、RAID 1の導入をオススメする。

一方、電源の冗長化は、電源を2系統搭載し、片方の電源が故障してもシステムを動かし続けられるシステムである。ただ、「Express5800/110Gd」では電源の冗長化はできない。ラックマウント型のサーバではオプションで選択できる。

無停電電源装置(UPS)に関して

UPS

無停電電源装置とは、UPS(Uninterruptible Power Supply)とも呼ばれ、電池や発電機を内蔵し、もしもの停電時においても、しばらくの間(数分~数十分)サーバに電気を供給できる装置のことである。いざという時に、ユーザは安全にシステムを終了することができる。もしくは、一定時間の停電が感知された場合は自動的にサーバシステムをシャットダウンすることで、突然の停電にも対応できるようになる。

これら無停電装置も、「NEC得選街」→「PCサーバ」→「周辺機器」→「UPS/UPS制御ソフト」で購入できる。

「NEC得選街」で購入できるUPS

製品名(型番) 110Ge 110Gd-S 110Gc-C 120Gd 得選街価格(税/送料込)
無停電電源装置(500VA)(N8180-49A) 51,450円
無停電電源装置(750VA)(N8180-50) 51,450円
無停電電源装置(1000VA)(N8180-45A) 68,250円

「NEC得選街」では、UPS制御ソフトのセットで5万円台から購入できる

保守パック「ExpressSupportPack G2」に関して

トラブルはいつ発生するかわからない。かといって、サーバ管理者が24時間サーバを見続けているわけにもいかない。そこで、なにかトラブルがあった場合に管理者に知らせてくれたり、もしくは管理者の代わりにトラブルに対処したりしてくれる保守パック「ExpressSupportPack G2」というサービスを紹介しておこう。

この保守パックとは、Express5800シリーズのハードウエアメンテナンスサービスを、手軽に導入できるようさまざまな保守サービスをパッケージ化したものであり、NECが提供している。面倒な契約書による手続きが必要なく、申込用紙による登録のみで、一定期間のサービスを受けられるものだ。購入先は、「NEC得選街」→「PCサーバ」→「保守パック」となっている。

この保守パックには、24時間365日対応など、ニーズに合わせて選べるサービスが用意されている。また、「当日2時間対応の迅速サポート」というサービスは、NEC営業日の8:30~17:30に対応依頼を受け付け、出張修理が必要と判断した場合、当日2時間以内に現地到着して対応してくれるものだ。これも、全国400以上のサービス拠点を持つNECならではのサービスといえる。

さらに、「NEC得選街」などで購入する際、Express5800シリーズ本体に内蔵または直接接続される純正オプション機器の追加であれば、それらの機器も同一料金で保守サービスを受けられる。

別途申し込みが必要だが、サーバのハードウエアのアラーム(故障の兆候)を監視し、万一アラームが発生した場合には、NECの保守センターからユーザへ電話連絡してもらえる、というサービスもある。

詳しくはNECのWebサイトで確認して欲しい。

「NEC得選街」で保守パックを購入できる

これらサービスを利用することによって、なにか問題が発生した場合にサーバ管理者の負担がぐっと少なくなるはずだ。特にサーバの運用に慣れていない場合は、心強い味方になるだろう。

トラブルは忘れた頃にやってくる。転ばぬ先の杖と思って、実際にWebサービスを始める頃には、導入を検討してもらいたい。

次回は、サーバの拡張やバックアップ機器などを解説していく。

(文 : 徳永卓司/デジカル)