会社に縛られることなく、もっと自由に生きるために。漠然と憧れる人も多い「セミリタイア」。その実現の方法として、"ごく普通の"サラリーマンにこそ「不動産投資」がおすすめで、物件そのものの価値ではなくどれだけ手元にお金が残るかという「キャッシュフロー」で物件の良し悪しを見極めるべきだと話をしました。

今回は5つの物件例をもとに、気になるキャッシュフローをのぞいてみたいと思います。

  • キャッシュフローが一番良い不動産物件は?

新築・中古・区分・一棟、キャッシュフローを比較してみると……?

不動産投資と一口に言っても、物件のタイプはさまざま。今回は代表的な以下の5つのパターンについて見ていきます。

・都内の新築マンション(区分)
・都内の築浅マンション(区分)
・首都圏の築古マンション(区分)
・都内の築古マンション(一棟)
・地方の築古マンション(一棟)

中には1億円の物件も出てきますが、今回は「フルローン」、つまり銀行から全額お金を借りることを想定しているので「私はそこまで貯金がないから無関係だ」などと思わず、「もしかしたら自分もいつか手にするかも」と思って読んでみてください。銀行からお金を借りる際の金利は、年2.0%と仮定します。

※実際のキャッシュフロー計算には、物件の運営に関わる諸費用等を考慮する必要がありますが今回は省略しています。

■case1 都内の新築マンション(区分)

・購入価格:3,000万円
・間取り :1LDK

東京都内の好立地の新築分譲マンションです。通勤するにも通学するにも非常に便利。一人暮らしの人が使いやすい人気の間取りで、借り手もすぐに見つかりそうなこの物件。さて、キャッシュフローはどうでしょうか?

想定家賃:約10万円(年間 約120万円)
返済額 :約11万円(年間 約133万円)
返済期間:30年
利回り :4%

巨大ターミナル駅から徒歩圏内の新築マンションといえば誰もが憧れる物件ですが、得られる家賃10万円に対して毎月の返済金額は11万円。つまり、空室にならずとも毎月赤字になるという、キャッシュフローNG物件なんです。

「ここなら借り手は常にいそうだからきっと大丈夫」。そんな思いだけで買うことは、実は危険極まりないことなのです。

■case2 都内の築浅マンション(区分)

購入価格:2,000万円
間取り :1LDK

こちらも最初の物件と同じく、東京都内の好立地の分譲マンション。新築ではありませんが築年数は浅め。人気の間取りのため借り手もすぐに見つかりそうです。

想定家賃:約85,000円(年間 約102万円)
返済額 :約74,000円(年間 約89万円)
返済期間:30年
利回り :5%

収支は月々プラス1万1,000円、年間のキャッシュフローは13万円強です。都心の築浅物件であることから、空室リスクの低い物件で、購入には安心感があります。

ですが、セミリタイアを目指すサラリーマンにとって、キャッシュフローが月々1万円ちょっと、とはどうでしょうか。年間500万円の生活費が必要な人であれば、同じような物件を40室以上持たないといけない計算になります。

■case3 首都圏の築古マンション(区分)

購入価格:1,000万円
間取り :3DK

今度は東京から離れてみましょう。近隣の県のターミナル駅から自転車で15分ほどのところにある築28年の物件。都心へのアクセスの良いファミリー向けマンションです。

想定家賃:約85,000円(年間 約102万円)
返済額 :約50,000円(年間 約60万円)
返済期間:20年
利回り :10%

収支は月々プラス3万5,000円となり、年間のキャッシュフローは42万円強です。先ほどの2つの物件よりは設備面では見劣りし、間取りも古いのですが、家賃をあえて抑えることで集客は可能そうです。

■case4 都内の築古マンション(一棟)

購入価格:1億円
間取り :1K~2LDK

次は一棟丸ごと購入するパターンを見てみましょう。1Kから2LDKまで全10室からなる、築20年の中古マンションです。

想定家賃:合計約60万円(年間 約720万円)
返済額 :合計約38万円(年間 約450万円)
返済期間:20年
利回り :7%

収支は月々プラス22万円、年間のキャッシュフローは260万円強です。23区外ではありますが、駅近の立地で付近には大学も多く、学生を中心とした需要が見込めそうです。この物件は購入価格が1億円を超え、年間のキャッシュフローも桁違いになりました。

経験のない人がいきなり1億円の物件となるとハードルが高いですが、不動産投資は実績を積むことで、徐々に億超えの物件を狙うことは十分可能。一気にセミリタイアに近づいた気がしませんか。

■case5 地方の築古マンション(一棟)

購入価格:1億円
間取り :2K~4LDK

では、一度首都圏から離れてみましょう。新幹線のぞみも停車する地方都市の物件です。車で30分圏内にある1棟マンションで、2Kから4LDKまで全35室、ファミリー層向けの部屋が大半を占める築37年の中古マンションです。

想定家賃:合計125万円(年間1,500万円)
返済額 :合計約53万円(年間約640万円)
返済期間:25年
利回り :15%

収支は月々でプラス72万円。年間のキャッシュフローは860万円強です。この物件は立地や古さが心配され、ローンの金利は他より高い年4%を想定しています。ですが、非常に利回りがよく満室にさえできれば、一棟所有するだけでセミリタイアが十分可能なキャッシュフローが得られるという理想の物件です。

セミリタイアするためには、選んではいけない物件がある

いかがでしたか。誰もが住みたがるような物件=セミリタイアに適した物件、ではないことは、よくお分かりいただけたかと思います。

念の為、補足しておきますが、case1のような物件を購入した方が良い人も、世の中にはいます。こういった物件を自宅として持つことで、所得税を圧縮できることは十分考えられるからです。

ただ、セミリタイアを考える人が重視すべきは「キャッシュフロー」だから、その場合は不向きだ、ということです。

case 5のようなキャッシュフローがすばらしい物件をいきなり手に入れることは、やや難易度が高いかもしれません。ですが、今は不動産投資の経験がなく、元手となるお金もあまり多くないという人でも、融資をうまく使いながら手頃な物件から少しずつ買い進めることで、セミリタイアに必要なキャッシュフローを「足し算」で作ることも可能です。

どのタイミングでどんなタイプの物件をまずは買おうか、どんなエリアで探してみようか、いくつくらい持つのが理想か。知識は必要ですが、一人ひとりがワクワクできる不動産購入ストーリーを描き、それを実践することで、セミリタイアの実現には確実に近づくことができるのです。

最終回では、セミリタイアを実現するために欠かせない「成功のポイント」をお伝えします。

ファイナンシャルアカデミー

お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて18年間で延べ59万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、全くの初心者でも投資の基礎知識をわかりやすく学べる「株式投資スクール体験セミナー」「不動産投資スクール体験セミナー」などを無料提供している。