企業で起こりうるセキュリティにまつわるさまざまなトラブルについて、茂礼手課長と部下の布施木さんの会話形式で、わかりやすく説明する本連載。第11回のテーマはフリマアプリのリスク」です。 どうやら、茂礼手課長がフリマアプリでゲームソフトの偽物を落札してしまい、返金を求めたものの業者と連絡がとれないようです……。

主な登場人物

茂礼手太朗(もれて・たろう)
茂礼手課長と呼ばれている。なにかとやらかしては、布施木君に注意される。

布施木ます子(ふせぎ・ますこ)
布施木君と呼ばれている。なんだかんだと茂礼手課長をサポート。

ある日のオフィスにて

茂礼手: 「布施木君、僕が購入したゲームソフトがどうもおかしいのだ」

布施木: 「ん? 課長がゲームなんて珍しいですね」

茂礼手: 「いや、子どもがハマっていて、人気のゲームソフトがあるというので買おうと思ったのだが」

布施木: 「ああ、そのソフト、品薄って聞きますよね」

茂礼手: 「そうなのだ。それで、知人から教えてもらったアプリを使うことにしたのだ。ほら、クレーマーみたいな名前の」

布施木: 「クレーマー? もしかしてフリーマーケット? フリマアプリのことかしら?」

茂礼手: 「それだ、それ。そのクレーマーアプリで目当てのソフトが見つかったので、早速落札して、送られてきたのがこれなのだ」

布施木: 「(ソフトを見て)うーん、これは正規品ではなさそうですね……。出品者には連絡を取ったんですか?」

茂礼手: 「うむ。『ニセモノの場合は返金に応じる』というので、返金を求めたのだが、それから連絡が取れなくなってしまって……」

布施木: 「課長、それは雲行きが怪しいですよ。すぐにサービス事業者と国民生活センターに連絡したほうがいいです」

茂礼手: 「うむ、そうか」

布施木: 「個人間取引はトラブルのリスクを承知しないと。場合によっては警察に連絡したほうがいいですよ」


手軽に利用できるフリマアプリ。リスクを承知した上で利用しよう


スマホから手軽に利用できる個人間取引のアプリ(フリマアプリ)が人気を博しています。アプリを通じて商品を売りたい人と買いたい人をつなげ、手軽に取引できる利便性の高さから、多くの事業者がサービスを提供し、利用者が増えています。

その一方でトラブルの相談も増えており、国民生活センターに寄せられた相談件数は2012年度(173件)から2017年度(3330件)は約20倍に増えています。相談内容の約9割は、出品者と購入者間のトラブルで「商品が届かない」「壊れた商品やニセモノが届いた」といった相談が多いということです。

また、取引相手から「直接自分の銀行口座に代金を振り込んでほしい」など、サービス側で禁止されている行為を持ちかけられ、代金を振り込んだ後に相手と連絡が取れなくなったケースもあるとのこと。

こうしたトラブルを未然に防ぐには、信頼できる国内の事業者のアプリ(サービス)を利用すること、そして、サービス利用開始前に利用規約をよく読むことが大事です。大手事業者の中には、アカウント登録の際に個人情報を登録させるとともに、コピー品などのニセモノが出品されないようにチェックする機能を提供しているところもあります。

また、購入前に出品者の評価を必ずチェックすることも、リスクを回避する1つの方法です。

しかし、商品到着後のトラブルについては、基本的にサービス事業者は関与しないことが多いのが現状です。個人間取引は利便性だけでなく、リスクも承知した上で利用する必要があるのです。サービス事業者や警察、各地の消費生活センターなど緊急連絡先を確認しておき、万一の場合は、すみやかに連絡、相談するようにしましょう。

事後対応についての詳細については、以下の「セキュリティ7つの習慣・20の事例」も参照してください。

  • 習慣7(万が一、何か起きたときは早めに連絡、早めに相談しましょう)

著者プロフィール

NO MORE 情報漏えいプロジェクト(エムオーテックス株式会社)


「情報漏えいの自分ごと化」をコンセプトに、メディアを通じて、難しいセキュリティをわかりやすく発信。
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