フォトレジストおよびエッチング残渣除去セッション

高ドーズイオン注入フォトレジスト剥離の難しさは、長年にわたって大きな問題となっており、一般にはリモートプラズマ処理でレジスト表面のクラスト層を除去し、その後、昇温SPM(硫酸・過酸化水素混合液)で内側のレジストを溶解するドライとウェットの2段階プロセスが広く採用されてきた。今回、これに替わるプラズマやSPMを用いない方法を米Lam Researchが発表した。同手法は、熱活性化O3/O2ガスを用いた酸化+オゾン水処理という2段階プロセスである。ダメージの原因となるプラズマやSPMのような廃液処理が大変な薬液を用いない点で注目されるだろう。

プラズマエッチングの残渣除去に関しては2件の発表があった。FEOLでHigh-k膜のプラズマエッチングの際に生じるTa/Zr/Hf系ポリマー残渣をほぼ無水のHFで除去する手法を仏Technic France/STMicroelectronics/Leti(国立電子技術情報研究所)が共同報告した。STI(Shallow Trench Isolation)ギャップフィルに用いられるポリシラザン系無機酸化膜をNF3/H2O系混合ガスでドライエッチングする際に生じるケイ酸アンモニウム残渣を最小化する手法を韓Hanyang大学/SK Hynixが報告した。

BEOL洗浄での静電気除去技術

枚葉スピン洗浄では、高速回転するシリコンウェハと絶縁性の純水との接触で静電気が発生する。これを避けるためには炭酸水を用いることが有効であるが、Cu配線は炭酸水中で溶解消失してしまうので、BEOL(多層配線工程)では使えないということで、今回、Lam Researchは真空紫外線を数秒照射することでウェハ上の静電気を除去する方法を提案した。

また、BEOLでCu層を酸化剤の入った水溶液でライトエッチングすると表面ラフネスが発生する。それをエキシマレーザー・サーマルアニール(LTA)で平坦度を回復する手法をSCREENが発表している。

FEOL洗浄でのCMPポストクリーニングの最適化

シリカおよびセリアスラリーを用いたFEOL(トランジスタ形成行程)CMPのポストクリーニングの最適化について米GLOBALFOUNDRIES(GF)が発表した。

また、FEOLでシリコンの選択エッチングでしばしば使われているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)系シリコンエッチャントに別の有機溶媒を添加して異方性の低減する手法を米台Avantorが提案したほか、STMicroelectronicsとLeti(国立電子技術情報研究所)は、「CMOSイメージセンサにおけるディープトレンチのクリーン化」と題した講演を行い、SiN膜の選択エッチングを行う際に、伝統的なホットリン酸を用いるよりもホット希釈フッ酸を用いたほうが、イメージセンサの画面上の白点欠陥やリーク電流が減ることを報告した。

このほか、BEOLで配線材料として多用されているCuはFEOLではトランジスタ特性を劣化させる元凶であるが、酸化膜除去を目的としたDHF(希フッ酸)洗浄では、Cu汚染除去が困難であり、ほかの薬剤を添加してCu除去性能を向上させている。添加剤としてキレート剤や過酸化水素などを選択して実験した結果、過酸化水素を添加する方法がもっとも効果的にCu汚染を除去できることを、韓Hanyang大学と韓国シリコン結晶メーカーLG Siltronが共同で報告したほか、室温フォトルミネッセンススペクトロスコピーを使ってシリコン表面のクリーン度をインラインモニターする手法を、米Wafermasterが紹介。EUVリソグラフィ用マスクのRu表面からカーボン汚染を除去する洗浄法を韓国Hanyang大学がそれぞれ発表している。

次回は2019年10月の開催予定

なお、今回のシンポジウムで発表された26件すべての論文を収録した電子書籍が「ECS Transactions Volume 80, No.2」として、The Electrochemical Societyより発行済みである。今回、発表された個々の内容の詳細を知りたい人は、同論文集を読むと良いだろう。

ちなみに16回目となる次回のシンポジウムは2019年10月に米国ジョージア州アトランタで開催される予定だが、その前に、姉妹会議である「UCPSS(International Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces)」がベルギーのルーベンにて2018年9月に開催される予定である。

今回のシンポジウムのすべての発表論文を収録した「ECS Transactions Vol.80, No.2」の表紙イメージ