ノードの消費電力のバラつきによる誤差の低減

第2のルール改定は、ノードの消費電力のバラつきによるシステム電力の推定誤差を低減するための変更である。

スパコンシステムが大規模になるとその給電には複数の配電盤が必要になり、全システムの消費電力を測定するための電力計の設置や、複数の電力計の測定タイミングを同期させる必要が出てきて、測定は容易ではない。このため、レベル1の測定では、システム全体の1/64の部分を実測して、比例的にシステム全体の電力を求めればよいという規定になっていた。

しかし、製造バラつきなどによって、次の例に示すようにノードの消費電力にはバラつきがある。したがって、実測するノード数が小さいと、たまたま(あるいは意図的に)消費電力の小さいノードを測定してしまい、本当のシステムの電力よりも小さい消費電力値が得られてしまうということが発生する。

ノードごとの消費電力のバラつきの例

この誤差を無くすには全システムを実測するのがベストであるが、測定が簡易であるべきレベル1では、測定の困難さを勘案して、システム全体の1/10あるいは15ノードのどちらか大きい方のノードの実測を行うというルールに改められる。この1/10という値は、いろいろなシステムでのバラつきを測定して検討した結果で、ランダムにノードを選択した場合は統計的に誤差が2%以下になるように決められている。

また、Green500を始めたころには、ノード間の通信に必要なインタコネクトの電力は比較的小さかった。このため、簡易なレベル1測定では、計算ノードの消費電力だけを測定し、通信に必要なスイッチやルータなどの電力は無視していたが、今回の改定では、スイッチやルータの電力も含むということになる。

2015年11月のGreen500は理研の菖蒲が連続して1位を獲得

今回のGreen500では、理化学研究所(理研)のSHOUBU(菖蒲)が7031.58MFlops/Wで1位となった。この値は前回と同じ値であり、今回は新しい値を登録せず、今年7月の値が残った結果である。

そして、第2位には、東京工業大学のTSUBAE-KFCが返り咲いた。TSUBAME-KFCはアクセラレータをNVIDIAのTesla K80にアップグレードして性能/電力を改善している。3位のドイツのLattice-CSCも今回は新しい値を登録せず、2014年11月の測定値で3位に返り咲いた。

2015年11月のGreen500の1位から10位の発表

Green500 2位の表彰を受ける東工大の額田准教授。左はGreen500主催者のバージニア工科大のWu Feng教授

Green500 1位の表彰を受ける関係者。左から、主催者のWu Feng教授、理研情報基盤センターの姫野センター長、黒川ユニットリーダー、ExaScalerの鳥居CTO、PEZYの齊藤社長、ExaScalerの木村社長

前回は1位から3位までExaScaler/PEZYのShoubu、Suiren Blue、Suirenの3システムが独占したのであるが、Suiren BlueとSuirenは今回は姿を消している。Green500リストに載るためにはTop500の500位よりも高いLINPACK性能を持っていなければならないという条件があるが、今回は中国による大量のTop500への登録があり、500位のLINPACK性能が予想より上がってしまった。その結果、Suiren BlueとSuirenは足切りに引っかかってしまったからである。

なお、前回まではExaScaler/PEZYのシステムは、ExaScalerであったが、今回はZettaScalerと改名された。これは海外の会社がExaScalerの商標登録を行っていることが判明し、ExaScalerの商標が使えなくなったことから、システムの総称として発展的にZettaScalerを使うことに変更したためである。