先週の鉄道の話題はなんといっても「TWILIGHT EXPRESS(トワイライトエクスプレス)瑞風」の完成披露だろう。その陰に隠れてしまったけれど、JR東日本が小海線に投入する「HIGH RAIL 1375」も興味深い。どちらも観光列車の新しい時代を告げる列車だ。

JR西日本「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が2月23日にお披露目され、記念式典と報道公開が行われた

「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は、日本を代表する豪華寝台列車だ。それは設備やサービスが上質というだけではない。日本観光の必須となる京都発着。複雑な海岸線や稜線、川の恵みを受ける街並みは車窓をつねに変化させ、観る者を飽きさせない。これこそが日本という島国の特徴だ。茫洋な景観が続く大陸の風景とは異なり、海外の長距離クルーズトレインとの差別化ができている。海外の観光客にとって、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は「日本通好みのルート」といえそうだ。

先行するJR九州の「ななつ星 in 九州」や、JR東日本が投入する予定の「TRAIN SUITE(トランスイート)四季島」も魅力があるし、日本が誇るクルーズトレインである。しかし、日本を代表するという意味で「京都発着」の価値は段違いに大きい。

「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の「ロイヤルツイン」客室内

「ロイヤルシングル」のうち1室(402号室)に2段ベッドを設置した

「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の料金は、2泊3日の行程の場合、「ザ・スイート」(2名1室)が1人120万円以上、「ロイヤルツイン」(2名1室)が1人50万円以上、「ロイヤルシングル」(1名1室)が1人60万円以上。完成披露の報道写真や動画を見れば、期待に十分な設備のようだ。最近は「リーズナブル」という言葉を「安い」という意味で使う広告が多いけれど、本来の意味「価値に見合った価格」とすれば、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は「リーズナブルな列車」といえる。料金が高いから豪華列車、ではなく、最上のサービスだから、この値段だ。車両の披露で設備は納得できた。あとは最上のサービスを期待しよう。

JR東日本「HIGH RAIL 1375」キハ110系・キハ100系改造観光列車に注目

日本の観光列車を考察する上で、もうひとつ。JR東日本の「HIGH RAIL 1375」も注目したい。小海線で7月から運行開始する観光列車として、2月20日に列車名と車両デザインが発表された。時刻と車内のおもてなしなどは追って発表するという。車両はキハ110系・キハ100系を改造するとのことで、飯山線に投入した「おいこっと」の小海線版といえそうだ。小海線は車窓の眺めも清々しく、JR最高地点を通るなど話題性もある。観光列車の投入にふさわしい路線だ。

おそらく手本になるであろう「おいこっと」は3形態で運用されている。「通常の普通列車として車両のみ使う」「座席指定の観光列車として使う」「走る農家レストランツアーとして食事付き観光列車になる」だ。座席指定の観光列車はアテンダントが乗車し、沿線案内と車内販売を行う。野沢菜などのプレゼントもある。乗車券の他に指定席料金は520円。レストランツアーは車内で昼食が提供され、沿線の観光コースがセットになって、日帰り8,000円となる。「HIGH RAIL 1375」も同様の展開になるだろう。

小海線を走るキハ110系の普通列車

観光列車の中で「HIGH RAIL 1375」に注目する理由は、キハ110系・キハ100系の改造にある。2012年に登場した「POKEMON with YOU トレイン」、2013年の「TOHOKU EMOTION」、2014年の「おいこっと」に続き、「HIGH RAIL 1375」は4例目の観光列車向け改造車両となる。ここにJR東日本の観光列車に対する本気度が見える。

2010年頃から現在まで、全国で観光列車が増殖している。使用車両は国鉄時代の気動車キハ40系列の改造が多かった。第一線の定期列車から引退したとはいえ、まだ使える。ならばJR九州の観光列車の成功にあやかり、キハ40系を使って観光列車を作ろうとなったのだろう。しかし、もともと老朽化した車両だから、観光列車としては長持ちしない。

JR東日本は自社開発系列のキハ110系・キハ100系を使い始めた。JR東日本もキハ40系列を保有しており、観光列車に改造された車両もある。烏山線や男鹿線では蓄電池電車が投入され、キハ40系列が余剰になる。しかし、観光列車にはもっと新しい形式のキハ110系・キハ100系を改造している。

もともとJR東日本にはキハ40系が少ないし、山岳区間で早々にキハ110系・キハ100系に置き換えたという事情もある。現段階でキハ110系・キハ100系を使った理由は、「キハ40系では長期間の使用に耐えられない。もっと長く観光列車を活用していきたい」という意思の表れだと思われる。

もっとも、キハ110系・キハ100系にしても、製造から25年以上経過した車両が多い。「幹線に乗り入れても高速で走れて、冷房も付いた新型気動車」という印象だったけれども、第一線から退く時期になったようだ。JR東日本は前述のように蓄電池電車やハイブリッド気動車を投入し始めているし、新潟・秋田地区では電気式気動車の投入も発表済みだ。

JR東日本の非電化区間は新動力源の車両に移行し、新たな観光列車はキハ110系・キハ100系の改造型に移行していく。キハ40系の観光列車のうち、営業成績の良い列車もキハ110系・キハ100系が投入されるだろう。

筆者が数えたところ、2016年5月頃に列車名と運行区間が固定されていた観光列車は全国で90以上あった。2017年2月時点では、運行予定も含めて120以上になった。キハ110系・キハ100系のおかげで、観光列車の誕生ブームは続きそうだ。