2030年度末に開業予定のなにわ筋線について、今月中の工事開始が明らかになった。大阪府議会本会議で大阪府都市整備部長が議員の質問に答えた。なにわ筋線は大阪駅北側に新設される地下ホームから南下し、JR難波駅と南海新今宮駅を結ぶ路線。JR西日本、南海電鉄が乗り入れ、関空と大阪中心部を直結する。

  • なにわ筋線のルート(赤)、東海道支線(青)と直通するほか、阪急電鉄も十三駅から新線を建設して乗り入れる構想(点線)がある(地理院地図を加工)

10月6日に行われた大阪府議会本会議で、加治木一彦議員(公明)がなにわ筋線の意義、効果、工事の進捗について質問した。大阪府の谷口友英都市整備部長による回答を要約すると次の通り。

「梅北地下駅の整備と合わせて、関空~梅田間の主要時間が10~20分程度、短縮される。新大阪および大阪南部と関空のアクセスを改善する。また、大阪梅田、中之島拠点の開発が促進され、大阪・関西の成長に不可欠な路線だ。2020年に国土交通省により認可取得以降、これまでに整備主体である関西高速鉄道株式会社が、用地交渉、鉄道施設の詳細設計、工事説明会など、工事着手に向けた準備を進めてきた。今月中には(仮称)中之島駅、(仮称)西本町駅で本格的な工事に着手する予定。2030年度末(2031年3月)の開業に向けて関係者一同取り組んでいく」

関西高速鉄道の公式サイトによると、府議会の回答で挙げられた(仮称)中之島駅、(仮称)西本町駅については、それぞれ2021年6月に工事説明会が行われた。さかのぼって4月から試掘調査が行われており、既設埋設管の位置を把握する。その後、道路上の分離帯を撤去し、信号機を移設、車線の変更をするなど準備工事を実施する。工事用地を確保した後、現地に高さ30mの機械を組み上げ、土留め用の杭と擁壁を打ち込んでいく、この段階が「本格的な工事」を指すようだ。

このほか、南海新難波分岐トンネルおよび千日前通シールドトンネル土木工事にともない、湊町駅前東西線地下横断歩道「26-D」出入口が10月1日から2032年春頃まで閉鎖される予定だった。しかし、関係機関との協議によって閉鎖開始時期は延期されている。

■なにわ筋線の開業で期待することは

なにわ筋線は2025年開催予定の大阪・関西万博には間に合わない。ただし、内閣府が定める「日本国際博覧会(大阪・関西万博)に関連するインフラ整備計画(案)」では、「大阪・関西の成長基盤となる広域的な交通インフラ」のひとつに挙げられている。開業すれば、大阪周辺の人々の流れを変え、国内外から来阪する人々にとっても便利になる。

起点となる大阪駅は、JR大阪駅高架ホームの西側地下にある。JR西日本が地上にある東海道貨物支線を移設して地下化し、2面4線の駅を新設する。従来、東海道貨物線支線を経由するために大阪駅に停車できなかった特急「はるか」「くろしお」の大阪駅停車が実現する。また、新大阪駅で折り返しているおおさか東線を延伸する構想もある。

新設される大阪駅地下ホームは、これまで「北梅田駅」「うめきた新駅」などと呼ばれ、関西高速鉄道でも「北梅田駅」と表記されている。しかし2020年3月、JR西日本は駅名を「大阪駅」に決定し、既存の大阪駅と改札内通路で乗換え可能な同一駅として扱うと発表した。開業は2023年を予定している。2031年3月開業予定のなにわ筋線も大阪駅地下ホームに乗り入れる。西側で東海道貨物支線と分かれ、大阪環状線福島駅付近の地下から南へ向かう。

なにわ筋の地下を走るなにわ筋線の次の駅は(仮称)中之島駅。単式ホームの二層構造になる。すでに京阪中之島線が達しており、京阪電気鉄道も関空への新たなアクセスルートとして期待しているはず。中之島は堂島川と土佐堀川に挟まれた中州で水運に恵まれていることから、江戸時代に淀屋が米市場を開くなど、長らく商都大坂の中心地だった。現在は再開発が進んでいる。

次の駅は(仮称)西本町駅。Osaka Metro中央線の本町~阿波座間に位置するものの、中央線の駅は新設されず、なにわ筋線の単独駅になる。いわば鉄道空白地帯に設置される新駅で、御堂筋線、四つ橋線、千日前線線の利用者がなにわ筋線に移ることで、混雑緩和も期待できそうだ。西本町駅の構造は島式ホーム1面2線。この駅の南側でJR難波方面と南海新今宮方面が分岐する。南海電鉄の線路が両側へ分かれ、中央の複線がJR難波駅へ向かって20パーミルの勾配を上っていく。

一方、南海電鉄の線路は35パーミルの勾配を下り、既存の地下鉄路線の下を通って(仮称)南海新難波駅に到達する。阪神高速道路の両側に独立したトンネルを設け、44パーミルの勾配を上ると地表区間、さらに高架区間になって、南海新今宮駅の手前で南海本線と合流する。

列車ダイヤなど運行面は未発表だ。JR西日本としては、特急「はるか」を大阪環状線経由からなにわ筋線経由に変更することで経路を短絡でき、新大阪~大阪~関空間の最短ルートになる。南海電鉄も難波駅の北へ進出できるが、乗入れ先は大阪駅地下ホームまでにとどまるか、あるいは新大阪駅までの乗入れをJR西日本が認めるか。今後の施策発表が注目される。

鉄道ファンとしては、南海電鉄の関空特急「ラピート」の行方も気になる。車両は1994年製で、先頭車に非常扉がないため、地下鉄走行に対応できていない。なにわ筋線が開業する頃には、製造から40年近くになるから、関空特急向けに新型車両を投入するはず。こちらも期待したい。