宇都宮市などが整備を進める次世代型路面電車(LRT)の西側延伸予定区間のうち、JR宇都宮駅西口周辺のルートを高架とすることが決まった。11月27日の市議会議員説明会で宇都宮市から示され、12月2日に行われた芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会で確定した。

  • 宇都宮ライトレールの計画図。赤の実線が優先整備区間、点線が次期延伸区間

宇都宮駅西側の延伸予定区間について、宇都宮駅東口に設置される停留場から在来線・新幹線の間を高架で通り抜けるところまで決まっていたものの、宇都宮駅西口の停留場や周辺のルートを高架にするか地上にするかは決まっていなかった。高架区間は駅前大通りの約300m先まで続き、LRTの定時性と速達性を上げるという。

宇都宮市は1990年代から宇都宮駅の東西を結ぶ東西基幹公共交通システムを構想し、2013年にLRTの導入を策定した。その後、東側区間について芳賀町が延伸を要望し、JR宇都宮駅東口(仮称)停留場から本田技研北門(仮称)停留場まで、約14.6kmを優先整備区間として整備することが決まった。

この事業は公設型上下分離方式で進められ、宇都宮市と芳賀町が線路施設を整備、保有する。営業主体として、2015年に宇都宮市、芳賀町、地元経済界、交通事業者などが出資する第三セクター方式の会社「宇都宮ライトレール」が設立された。停留所数は計19カ所。所要時間は約44分、快速運行の場合は最短約37分となる。2022年3月の営業開始に向けて工事が進んでいる。

宇都宮駅の東西を結ぶことを前提とした計画のため、宇都宮駅を横断する必要があり、その方法によってJR宇都宮駅東口(仮称)停留場の高度や向きなども変わる。宇都宮駅の建物と東北新幹線の構造物の関係で、「北ルート」「中央ルート1」「中央ルート2」「南ルート」の4案が検討され、結果として2016年に「北ルート」が有力となり、2018年に決定した。JR宇都宮駅東口(仮称)停留場は地上に設置され、向きはJR線に平行する。ここから勾配区間で高度を稼いで在来線をまたぎ、東北新幹線の高架下を通過する。

その先のルートについては、芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会の下、有識者らで構成される交通結節点等基盤整備部会が置かれ、宇都宮駅交差部から高架を延伸して停留場を作る案と、東口と同様に勾配区間で高度を下げて地上にする案が比較検討された。

地上案は歩行者やバスとの乗換えが便利な反面、軌道が駅前ロータリーなど複雑な道路交通を妨げる。高架案は宇都宮駅の新幹線・在来線コンコースから乗り換えやすく、他の交通機関と立体交差するため、LRTの定時性や高速性に優れる。建設費用は地上案の約80億円に対し、高架案は約100億円と見積もられたが、道路改良などでさらに上乗せされる可能性もあるという。

検討会は6回にわたり、軌道運行の安全性、LRTと鉄道の乗継ぎ利便性、周辺道路や駅前広場の交通処理、まちづくり、経済性などを比較して総合評価した結果、高架案が採用された。宇都宮駅西口に設置する停留場の高架をさらに延伸し、田川を越え、上河原交差点まで約300mを高架化する。これでバス、タクシー、自家用車、トラックなどと立体交差できる。駅周辺の公共交通や歩行者の通行、物流の障害を軽減できる。

ただし、高架橋の配置に設計上の制約が多く、暗がりを作り、周辺の建物に圧迫感を与えるという難点もある。これをデザイン・設計面で解決していくことになる。宇都宮市は今後、JR宇都宮駅西口地区まちづくり協議会、道路管理者や交通事業者など関係機関と協議しながら市街地再開発事業を検討していく。

  • 青線部分について、高架の構造で整備することが決まった

外野の鉄道ファンとしては、高架案を歓迎したい。路面電車は道路上の併用軌道区間が似合うとはいえ、短い高架区間でも街を展望できる。田川を渡る橋も車窓の見どころになりそうだ。その反面、市街地高架区間は周辺のマンションやホテルなどの窓も見えてしまうため、軌道に目隠し壁が作られてしまうかもしれない。

この西側延伸予定区間に関して、池上町交差点(東武宇都宮駅から北へ約300m)を経由して桜通十文字交差点までの約3kmが計画区間となっている。さらに約3km延伸し、栃木健康の森へアクセスする構想もあるようだ。

11月15日に投開票が行われた宇都宮市長選挙でも、LRTの可否は争点となった。LRT推進派の佐藤栄一氏が当選し、5期目の課題として工事認可を取り付けたいと意欲を示している。LRTは利便性重視の交通システムと承知しているが、どうか楽しい乗り物となって観光面でも貢献してほしい。