富山駅の駅弁「ますのすし」といえば、全国各地の駅弁大会でも定番の商品。箱から出すと丸い容器に入っている。慎重に竹からゴムバンドを外し、ふたを開ければ、鮮やかな緑の笹の葉に包まれた円盤が現れる。

  • 富山駅の駅弁「ますのすし」が、伝統の味を変えずに美味しくなる!?

この笹を剥がしてから切るか、そのまま切って食べるときに剥がすか。そこに大議論の余地がある。剥がせば、ピンクの鱒が載った白い酢飯が現れる。頬張れば、笹の香りもさわやかに、きっちり押し固められた酢飯が口の中でほどけていき、その甘みと鱒の旨みが合わさって……。それはそれは幸福になれる「ますのすし」だ。

その「ますのすし」を製造販売する源(みなもと)が7月4日、公式サイトに「特注炊飯機ライン リニューアルのお知らせ」を掲載した。そこに驚きの記述が!

6月下旬から、長年使用した独自の炊飯機ラインの入替工事を行っており、7月20日製造品よりより美味しくなった商品をご提供いたします。

「より美味しくなった商品をご提供いたします」とはどういうことか。販売開始は1914(大正3)年というから、106年も続く伝統の味。いまも美味しさトップクラスではないか。これより上があるのか……。気になって、いまの味を確かめに富山へ行きたい気持ちを抑えつつ、源の担当者に問い合わせた。

「炊飯器は、通常20年以上することも可能ですが、弊社は、ご飯の味の向上をめざすために平均15年ごと最新の炊飯器に取り換えています」(源の担当者)

  • 「より美味しく」がどれほどのものか。「味わわせてもらおうか、新型炊飯器の性能とやらを!」

なるほど、機械は経年によって性能が落ちることもある。そこで5年の余裕を残し、炊飯器を取り替えるというわけか。15年といえば、新幹線車両とほぼ同じ。これが変わらぬ美味しさの秘密だった。そして今回も炊飯器の入替えの時期になった。

「今までの炊飯器で炊いていたご飯よりさらに、より美味しいご飯を炊くために、有数のメーカーを視察に行き、実際にご飯を炊き、すし飯に重要なお米の『旨み』『弾力感』また、すしにあった『適度な粘り』などの評価を見ながら、最良と思われる機械を導入しました」とのこと。選定基準が非常に厳しい。しかし、新型炊飯器の導入をわざわざ公式サイトで告知するとは、よほどの自信作と思われる。

  • 新型炊飯器の生産量は時間あたり420kg。定番の「ますのすし 一重」に換算すると約2,550個に相当する

ちなみに、源の公式サイトでは、「ますのすし」に関するトリビアも紹介されている。

  • 発売当時の価格は45銭、いまの価格に直すと約1,350~1,800円。
  • 「ますのすし」に使われている竹は孟宗竹。竹林の周囲に無秩序に進出してしまうため、周辺の環境保全・生態系の保全のために伐採した竹を使っている。
  • 姉妹品「ぶりのすし」は新参に見えて63年の歴史がある。
  • パッケージのゴムバンドは押し寿司を押し続ける役目があり、木製の容器は染み出た水分を吸い取って逃がす役割がある。
  • ゴムバンドをかける作業は機械で行う。源はこの機械の特許を持っている。

新しい炊飯器は、「お米一粒一粒がしっかりした炊きあがりとなり、自信をもって提供できる」という。食べたい。もう食べたい。7月20日が楽しみだけど、その前に現在の「ますのすし」も食べておきたい。

いまは炊飯器の入替え期間のため、外部委託業者に炊飯を依頼してご飯を仕入れているという。もちろん「従来通りの味・品質を保てるよう、炊飯業者と打ち合わせを行いながら、鋭意努力している」とのこと。「ますのすし」ファンにとっては気になるレアもの商品だ。いままでの味と比べてみたい。なお、公式オンラインショップでは8月23日まで、購入金額に関係なく送料無料となる。