富山地方鉄道は2月3日、3月21日から実施する運賃改定について、国土交通省北陸信越運輸局に認可申請した。富山ライトレールを吸収合併し、南北接続による直通運転を開始するためだ。昨年10月に発表した通り、南北接続後は富山ライトレール区間を含めた路面電車全区間の運賃を据置きとする内容だ。

  • 富山地方鉄道市内軌道線の3系統(環状線)で活躍する「セントラム」

当連載第171回「富山地方鉄道・富山ライトレール合併、富山港線が77年ぶり地鉄に」でお伝えしたように、富山地方鉄道と富山ライトレールは2020年2月22日に合併する。存続会社は富山地方鉄道で、富山ライトレール富山港線は富山地方鉄道の路線になる。

富山地方鉄道市内軌道線は、富山駅の南側に路線網を持ち、南富山駅前~富山駅間の1系統、南富山駅前~大学前間の2系統、「セントラム」を使用する3系統(環状線)を運行中。富山ライトレールは富山駅の北側、旧JR富山港線を引き継いだ路線で、各駅を低床車両に対応した低いホームとし、富山駅付近を道路併用軌道経由にするなど大改造を行った。現在は「ポートラム」を使用して運行されている。

富山地方鉄道市内軌道線も富山ライトレール富山港線も、軌間はJR在来線と同じ1,067mm。電化方式は両路線とも直流600Vとなっている。かつてのJR富山港線は直流1,500Vで電化されていたけれども、富山ライトレールの路線として改造するにあたり、直流600Vに変更された。将来の直通運転を見越して備えていたわけだ。

北陸新幹線長野~金沢間延伸をきっかけに、富山県と富山市は富山駅周辺の在来線高架化に着手。人とクルマの南北方向の往来を確保し、線路によって分断された街の南北を一体として整備していく。その計画の中に、富山地方鉄道市内軌道線と富山ライトレール富山港線の南北接続も盛り込まれた。

2015年3月に北陸新幹線富山駅が開業し、同時に富山地方鉄道市内軌道線は富山駅の高架下まで延伸され、富山駅停留場が開業した。それから5年を経て、2020年3月21日から富山港線も富山駅停留場に乗り入れ、直通運転が始まる。

  • 富山ライトレール富山港線の車両「ポートラム」

当連載第194回「富山市の路面電車『南北接続』は2020年3月21日に決定」では、富山ライトレール富山港線と富山地方鉄道市内軌道線の南北接続に向けたスケジュールに加えて、富山地方鉄道の意向とする運賃も紹介していた。

今回、認可申請された改定後の運賃も、昨年10月の発表と同じ体系になった。運賃は直通区間均一制で大人210円・小人110円、ICカード乗車券の場合は大人180円・小人90円。南北接続まで富山ライトレール富山港線、富山地方鉄道市内軌道線のそれぞれで運賃支払いが必要だったけれども、南北接続後は全区間で1乗車あたり大人210円・小人110円となるため、いままで富山駅で両路線を乗り継いでいた人にとっては実質半額になる。

定期券も全域共通となり、通勤定期券は1カ月7,950円に。市内軌道線の全線定期券が1カ月8,280円だから、乗車エリアが増えるにもかかわらず安くなる。富山ライトレールの全線定期券は1カ月7,440円で、新運賃のほうが少し高くなるけれど、乗れる範囲は約2倍になり、市街地のある富山駅南側へ足を延ばせるから、これもお得な設定だろう。

なお、通勤定期券は3カ月2万1,900円、6カ月4万1,200円で、1カ月定期券と同様、市内軌道線の全線定期券より少し安くなり、富山ライトレールの全線定期券より少し高い。通学定期券は1カ月6,060円、3カ月1万6,400円、6カ月3万1,000円、年間5万5,000円となった。現在使用中の定期券については、3月21日以降も有効期限まで全線定期券として利用できる。ただし、市内軌道線の定期券は割高になってしまうため、払戻しにも対応するとのことだ。

  • 南北接続後の運行系統図。富山港線は3月21日以降、蓮町駅を「蓮町(馬場記念公園前)」、大広田駅を「萩浦小学校前」に変更する

富山地方鉄道からの運賃認可申請を受けて、国土交通省北陸信越運輸局は適正な審査を行うことを目的としたパブリックコメントを受け付けている。受付期間は2月17日まで。ここでよほど重大な指摘がなければ、申請通りに認可される見込みだ。

■南北接続後、フリーきっぷはどうなる?

ところで、筆者も含む「乗り鉄」にとって、1回1乗車の運賃だけでなく、フリーきっぷの料金も気になる。現在、富山ライトレール単体のフリーきっぷは販売されていない。富山地方鉄道と共同で、市内電車とバス(富山駅前から280円区間)、「ポートラム」(富山ライトレール)が1日乗り放題の「富山まちなか・岩瀬フリーきっぷ」(大人820円・小人410円)を販売している。

富山地方鉄道は「富山まちなか・岩瀬フリーきっぷ」の他に、市内軌道線に乗れるフリーきっぷとして、「鉄道線・市内電車1日フリーきっぷ(冬)」(大人2,100円・小人1,050円)、「鉄道線・市内電車1日フリーきっぷ(夏)」(大人2,600円・小人1,300円)、「富山地方鉄道・アルペンルート5日間フリー乗車券」(大人2万1,700円・小人1万850円。特急料金を含む)、「地鉄観光列車フリーきっぷ(1日フリーきっぷ)」(大人1,500円・小人750円。特急料金を含む)、「ぐるっとグルメぐりクーポン」(1,000円)、「地鉄電車2日ふりーきっぷ 」(大人4,600円・小人2,300円)、「市内電車・バス1日ふりーきっぷ」(大人620円・小人310円)を販売している。

これらの料金や有効区間について富山地方鉄道に問い合わせたところ、正式決定ではないものの、「富山まちなか・岩瀬フリーきっぷ」を廃止する代わりに、他のフリーきっぷに関して、市内電車区間に富山港線も含める方向で検討中とのことだった。料金も変更しない考えだが、消費税率が引き上げられた後も据置きとしていた「鉄道線・市内電車1日フリーきっぷ(夏)」などに関して、消費税転嫁の運賃改定を実施予定だという。

なお、報道されていた「3月21日は南北接続を記念して路面電車運賃無料」については正式に決定したようで、南北接続事業公式サイト「富山 つながる、ひろがる。」でも案内されている。富山市内の松川で運行する遊覧船「松川遊覧船」も、「3月21日は乗船料無料」と公式サイトで発表した。これらの他にも、「TOYAMA SOUTH WIND FESTIVAL(富山地方鉄道の車両基地の特別見学会)」「南北接続記念スタンプラリー」「Celebration Night -スカイランタンと花火の夜祭り-」など、多数のイベントが開催される。3月21日の富山市内はお祝いムードになりそうだ。