「銚子電鉄のぬれ煎餅」「まずい棒」など、自社ブランドのユニークなお菓子でも知られる銚子電鉄が新商品「バナナ車掌のバナナカステラ」を発表した。7月13日から同社の各駅売店、千葉県内のお土産・食品を販売する小売店で販売する予定。銚子電鉄によれば、従来製品と同様、オンラインショップでも販売するとのこと。

  • 銚子電鉄は銚子~外川間6.4kmを結ぶ(写真:マイナビニュース)

    銚子電鉄は銚子~外川間6.4kmを結ぶ。2000形は元京王2010系が伊予鉄道へ渡り、銚子電鉄に譲渡された車両

6月28日現在、銚子電鉄オンラインショップのトップページには、「新商品 7/1(月) 13:00 公開予定 COMING SOON」の文字と、なにかバナナを擬人化したかのような画像が黒で塗りつぶされて表示されている。ティザーキャンペーンのつもりらしいけれど、「バナナ車掌のバナナカステラ」の告知を見た後では、とてもわかりやすい。

銚子電鉄は昨年8月3日(破産の日)に発売した「まずい棒」のコーンポタージュ味が好調で、今年3月9日にチーズ味が追加された。発売から約10カ月で、両方合わせて100万本を売り上げたという。今年8月3日には、かつて同社の危機を救ったぬれ煎餅の味の「まずい棒」も発売する予定。経営危機脱出をめざしている。

  • 新商品「バナナ車掌のバナナカステラ」。1箱8袋入り1,000円(税別)

「まずい棒」はぬれ煎餅のブームが過ぎ、「売上が低めで安定」した時期に登場した。そのため、銚子電鉄の菓子事業としては売上の谷間ができてしまった。その反省もあってか、「バナナ車掌のバナナカステラ」は「まずい棒」が上り調子のうちに、次の手を打っておきたいとの目論見があるようだ。

「まずい棒」の「まずえもん」に続き、今回も新キャラクターとして「バナナ車掌」とその家族が登場している。「バナナ車掌」の名は「バナナ健」。大阪生まれの千葉育ち。将来は駅長になりたいらしいけれど、まずは運転士をめざして奮闘中。バナナ車掌の妻は「バナナ千恵子」。高校時代に銚子電鉄で通学中に健と出会った。2人の娘は「バナナ苺」。バナナという枠にとらわれずに育ってほしいと、あえて「苺」という名が付けられた。むしろ苺の枠にとらわれないか心配だ。

銚子電鉄によると、「バナナ車掌」はバナナカステラを売り出すために作られた新キャラクターとのこと。設定にこだわりが感じられるあたり、もしかしたら実在の人物のプロフィールかもしれない。しかし、それが事実だとすると個人情報の取扱いに困るため、確認は遠慮した。

  • バナナカステラの個包装は3種類のデザイン、1個150円(税別)

個包装のバナナカステラは、3人が1人ずつデザインされた袋に入っている。箱入り商品の8袋の種類はランダムだ。中身はすべて同じで、バナナ餡のたっぷり入ったバナナカステラだ。それにしても、なぜバナナなのだろう。

「ぬれ煎餅」は沿線地域でもともとあったお菓子。「まずい棒」はコーンパフで、沿線の畑でトウモロコシを植える農家が多いことから関連性はある。ちなみに銚子電鉄沿線の名産は春キャベツで、その休耕畑にトウモロコシやヒマワリを植えて、春キャベツの土壌育成に役立てていると聞いた。

バナナはどうかというと、じつは千葉県でもバナナの生産が行われている。国内生産量は沖縄県が約66%、鹿児島県が約33%と圧倒的。消費については輸入バナナが圧倒的に多い。ただし、千葉県産バナナは温室でていねいに育てられた高級品。その中には、皮ごと食べられる「奇跡のバナナ」もあるそうだ。

いや、そうはいっても、カステラの中にバナナクリームとは。東京駅あたりで売られている有名なバナナのお菓子を連想してしまう。あのお菓子の売上げにあやかろうとしているのではないか……とも思ったけれど、ちょっと恐くて聞けなかった。

  • 「バナナ車掌のバナナカステラ」ポスター

鉄道はお堅い職場と思われがちだ。しかし銚子電鉄は運輸業にしっかり取り組む一方で、ノリがいいというか、ユニークな副業も真面目に取り組んでいる。ぬれ煎餅が有名になる前は、観音駅のたいやきが評判だった。発売は1976(昭和51)年。童謡「およげ! たいやきくん」のヒットにあやかった。以来、40年にわたって親しまれてきたけれども、2017年3月に閉店。3カ月後に犬吠駅で復活した。

飲食関係以外の取組みとして、「自転車操業なので自転車を操業します」との触れ込みで、電動原付自転車「Stigo」を犬吠駅で貸し出している。「Stigo」は折りたたみ式の電動バイクで、キャスター付きスーツケースのように持ち運びできる。銚子電鉄の観音駅、笠上黒生駅、犬吠駅で電車に乗せて移動可能とのこと。また、地元の電力会社「銚子電力」は「チョウシeデンキ 銚子電鉄プラン」を設定した。電気料金を節約しながら銚子電鉄を経済的に支援できるという。

さらに、銚子電鉄は「超C(銚子)級エンターテインメント」映画『電車を止めるな!』を2019年8月3日公開予定で制作中だ。興行収入を老朽化した変電所の大規模修繕費用にあてる目論見で、制作費用の500万円はクラウドファウンディングで調達した。出演はオリエンタルラジオの中田敦彦さん、 怪奇漫画家の日野日出志さん、女優の村井美樹さん、鉄旅タレントの木村裕子さん、鉄道演劇『銚電スリーナイン』の女優、谷口礼子さんほか。

この映画に、新キャラクター「バナナ車掌」は登場するのか。銚子電鉄に聞いてみると、「着ぐるみなどの出演はありませんが、誰かがバナナカステラを食べるシーンがあると聞いています」とのことだった。物語で重要なアイテムになるかも!?

経営危機脱出のため、真面目に面白いことをする銚子電鉄。いろんな意味で目が離せない。