AOKI銀座本店では9月27日、店舗内のオーダースーツコーナーをリニューアルオープンした。消費の二極化とインバウンド需要に対応したもので、来店者は落ち着くラウンジでオーダースーツの生地選定、採寸、試着などを行える。改装の背景と狙いについて、AOKI 取締役副社長執行役員の小出大二朗氏があらためて説明した。
オーダースーツ注文の流れ
銀座中央通り沿いにあるAOKI銀座本店。売り場面積が広く、ビジネスから、カジュアル、レディースまで幅広い商品を揃えている。
その店舗の中央にあるオーダースーツコーナーがリニューアルとなった。個室のような演出で、広々としたスペースに大きなテーブル、壁際にはソファも用意されている。昔の店舗写真(看板に「紳士服センター アオキ」などと書いてある)が額縁に入って飾られており、窓辺にはアンティークな仕立てミシンが置いてある。
さて、実際に「パターンオーダー」で注文するときのデモも見せてもらった。既製のスーツサンプルから自分の体型に近いものを選び、生地やサイズなどを調整して作るスーツとなる。来店すると、まずは販売員が用途、仕上がりまでの期日、予算などの必要な情報を尋ねる。続いて、希望の色、柄、スタイルなどを丁寧にヒアリング。そのあとで生地の選定に移る。
生地が決定したら採寸。まずはボディサイズを5か所で採寸し、細め、ゆったりめ、などの希望も聞きながら仕上がりのスタイルを絞っていく。その後、測定した長さにぴったりな型紙で作られたゲージ(サンプル)を試着。袖丈、着丈、ウエスト、裾の幅、裾の長さなどの微調整を行う。これが終わったら、パンツの採寸へ。
このあとオプションも確認。裏地、ボタン、ボタンホール、ポケットなどをカスタマイズして、自分だけの一着に仕上げる。ちなみにAOKI銀座本店には、オリジナルの表生地を約900種類、裏地を約100種類も揃えているという。
最後に会計。オーダースーツの商品ラインナップは、3万円~100万円までと幅広い。なお、引き渡しまでは平均で1週間ほどかかるそうだ。
ライフ&ワークスタイルのAOKIへ
コロナ禍を経て人々の生活や行動様式が変わり、リモートワークの浸透などで働き方もガラリと変化した。AOKIの小出副社長は「企業もビジネスモデルの変革を迫られています。そこで私たちは従来の郊外型紳士服店から脱却し、ワークウェアだけでなく、ライフウェアまで網羅する企業、ライフ&ワークスタイルのAOKIを目指していきます。」と説明する。
具体的な施策として、全体の売上を伸長させながらもメンズビジネス、メンズカジュアル、レディースの売上構成比を従来の「7対1対2」から「4対3対3」まで変革させていく。メンズカジュアル領域については『パジャマスーツ』など、スーツを作る技術を転用したカジュアル商品を拡大。またレディース領域においては、働く女性をターゲットにした高機能ウェアを展開するなどし、売上を大きく伸ばしていきたい考え。
そのうえでオーダースーツを強化する。なぜ、いまオーダースーツに注力するのだろうか? その背景には3つのポイントがあるという。「ひとつはインバウンド需要の拡大です。銀座は訪日客にとって重要なショッピングエリア。高品質なmade in Japanブランドを求めて海外からやって来るインバウンド層を、こちらの店舗で取り込みます。」
2つめのポイントは富裕層の増加。ファッション業界においても、オーダースーツのような高付加価値商品への需要が高まっているようだ。そして3つめのポイントとして「お客様の買い物動向がモノ消費からコト消費に変化してきました。そこで特別な体験をご提供し、新しい価値を届けることで顧客満足を高めることができると考えました。」と説明する。
AOKI銀座本店には、オーダーのフィッティング技術に優れた全国トップクラスのスタイリストがそろう。「お客様の体型やお好みに合わせたオーダースーツ作りをご案内します。初めての方でも注文しやすい環境づくりを心がけました。」と小出副社長。AOKIでは時代の変化、顧客ニーズの変化に即応することで、これからも顧客満足の追求に力を尽くしていく、とまとめた。