“闇バイト”による強盗事件が横行し、人々の防犯意識も高まりつつある。今後は、“AI”が各家庭のセキュリティをサポートしてくれる時代が訪れそうだ。

積水ハウスは11月22日、新たな防犯サービス「駆けつけホームセキュリティ」を発表した。住まい手の防犯に関する行動習慣を可視化し、その評価に応じて価格に反映する世界初のサービスで、パートナーには博報堂、アルソックを迎えた。12月13日から受付を開始するという。

世界初、評価ランクで料金が変動する「駆けつけホームセキュリティ」

  • (左から綜合警備保障(アルソック)常務執行役員・宮島裕氏、積水ハウス常務執行役員 プラットフォームハウス推進部長・吉田裕明氏、博報堂常務執行役員コマースデザイン事業ユニット長・青木雅人氏)

積水ハウスは2021年末からスマートホームサービス「プラットフォームハウス タッチ」を提供してきた。新築戸建ての契約者を対象に、現在4100戸以上に提供しているという。

プラットフォームハウス タッチとは、窓のシャッターの開閉や玄関のドアの施解錠、室内照明のオンオフなど、自宅での行動データを「生活ログ」として蓄積し、AIで解析することで「生活モーメント」(住まい手の特徴的な生活意識が現れる瞬間)を推測。住まい手の生活習慣や潜在意識を可視化しながら、より安全で快適な生活をサポートしていこうとするサービスである。

2023年9月からは博報堂とも協業を開始し、改めてプラットフォームハウス タッチ利用者へのアンケート調査を実施。その調査結果と「生活ログ」データを合わせて解析したところ、住まい手の意識と行動のあいだには大きなギャップが見られることがわかったという。

例えば、アンケートでは「防犯意識が高い」と自覚している人でも、実際の生活ログデータと照らし合わせてみると玄関の施錠をたびたび忘れているなど、無意識で防犯対策を怠っている瞬間があるという。

他にも、寝室などの電気をこまめに消しているつもりが、実際には消し忘れていることも多いといった、意識と行動のあいだにあるさまざまなギャップを博報堂は「つもりギャップ」と位置づけ、今回の新サービス「駆けつけホームセキュリティ」の開発につなげた。

駆けつけホームセキュリティとは、プラットフォームハウス タッチの設備(窓鍵センサー、玄関ドア錠、火災警報器)が異常を検知するとアルソックに自動で通報し、ガードマンが駆けつけるという仕組みで、自宅から離れた場所にいても、ガードマンによる警備状態をアプリでリアルタイムに確認できる。

さらに、日々の生活ログに基づいて住まい手の防犯行動を「ノーマル」「グッド」「エクセレント」の3段階で評価。評価ランクが高ければ高いほど、サービスの利用料金がリーズナブルになる仕組みを世界で初めて採用した。

また、防犯行動に改善の余地がある場合などは、「夜間に窓が開いており、クレセント錠が施錠されていないことが多いようです。窓をしっかり施錠することで、夜間の窃盗犯の侵入を防ぎ、防犯性をさらに高められます。」といったメッセージがアプリに届くなど、住まい手の防犯行動をサポートする機能なども盛り込まれている。

11月22日の記者発表会で登壇したアルソックの常務執行役員・宮島裕氏は、「住宅への侵入窃盗の約4割は『無締り』の窓や玄関ドアから侵入している。」と指摘。防犯意識向上の重要性を訴える。

「彼らは間違いなく、狙う家の下見をしている。鍵をかけ忘れている玄関や窓はないか、周囲に気づかれずに破ることはできるか、朝のゴミ出しのときに玄関の鍵を閉めない家はどこか……そういったところを彼らは見ている。住まい手が意識して、必ず自宅の鍵をかける。これを習慣化する。 行動習慣を変えて、防犯意識を向上することが防犯性を高めることにつなげる。」(宮島氏)

博報堂の常務執行役員、青木雅人氏は、「防犯意識が高いと自覚している人も、施錠を忘れてしまうことが多々ある。ここにサポートが必要なのだと我々は考えた。」と明かす。

さらに、「『つもりギャップ』が生じるのは、来客頻度が多い人、外出が多い人、孤独感を抱かない生き方をしたい人など、社交的な人が多いことがわかった。また、22時以降まで働く人や子育てで大変な人など、疲労が蓄積している場合も施錠を忘れるケースが多い。時間帯でいうと、15時から17時ぐらいの帰宅直後に施錠漏れが発生しやすいこともわかっている。」と説明し、「包括的に生活者を捉える分析をしながら、 新しいサービス開発に今後またつなげていきたい。」と語った。

積水ハウスの常務執行役員、吉田裕明氏は今回の駆けつけホームセキュリティについて、 「このサービスを提供することによって、ただのデータからお客様の無形資産の価値につなげられた。」と主張。そのうえで、「今回はアルソックとご一緒させていただいたが、今後はこのプラットフォームを使いながら各業界、各サービス提供者の方々と共にサービスを量産していきたい。」と展望を述べた。

  • 積水ハウス常務執行役員の吉田裕明

現時点で、プラットフォームハウス タッチを契約できるのは積水ハウスの新築戸建ての契約者のみだが、将来的にはグループ外やマンションなどにも拡大していく見込みだ。