前回は、海外のペーパレス化の現状について米国をはじめ、究極のペーパレス国家であるエストニアなどを事例に解説しました。今回は日本に話を戻し、データや調査結果を元にした日本のペーパレスの現状について、あらためて触れていきたいと思います。

世界でもトップクラスの日本の紙使用率

第1、2回目までは日本でペーパレス化が進まない要因についてお話してきましたが、実際にはどれくらいの紙が消費されているのでしょうか。まず、2016年ベースでの国別の人口一人当たりの紙消費量ランキングを見てみます(日本製紙連合会のWebサイトのデータを引用)。

  1. ベルギー
  2. スロベニア
  3. ドイツ
  4. オーストリア
  5. 米国
  6. 日本
  7. フィンランド
  8. アラブ首長国連邦
  9. ニュージーランド
  10. 韓国

ランキングを見ると日本は、米国に次いで全体の6位となっています。前回、ペーパレスの先進国として紹介した米国も急速に減っているものの、2016年時点での消費量は日本を上回っています。

また、地球環境に対して意識の高いヨーロッパの国々が上位を占めているのは意外でした。ちなみに、ベルギーは公用語として3言語(フラマン語、フランス語、ドイツ語)を使用しているため、同じ内容でも複数言語で印刷する必要があることから、消費量が多いと推測されます。

続いて、日本の紙消費の内訳は下図となります(日本製紙連合会のWebサイトのデータを元に独自作成)。

  • 日本の紙消費の内訳

    日本の紙消費の内訳

全体的な紙・板紙の需要とともに、印刷・情報用紙の需要も年々減少しています。つまり、オフィスでの利用を目的とした紙・板紙の需要は、2005年をピークに減少傾向に転じているのです。それでも、まだまだ紙の消費量が多く、データからも、コスト削減や環境問題対策を目的に両面印刷や裏紙利用が促され紙需要の絶対数は減少しても、働き方がオフィス中心であるが故に、紙主体の従来のビジネスプロセスは変化していないことがわかります。

ペーパレスに関する意識調査 - 紙文化は残りつつも、管理者、非管理者ともにデジタル化を希望

続いて、筆者が所属するドキュサインが外部調査会社に委託して実施した「ペーパレスに関する意識調査」の結果について触れます。調査は、2017年に日本企業の管理職201人、非管理職1007人を対象に実施しました。

まずは、管理者に対してペーパレス化への関心について質問した結果、ペーパレス化したい理由は以下のようになりました。

  1. 紙の費用圧縮のため : 45%
  2. 紙ベースの業務は視覚化できないため : 35%
  3. 紙はコンプライアンス問題につながる可能性があるため : 20%
  4. ペーパレス化の必要性または関心がない : 20%

複数回答可のため合計が100%を超過していますが、コスト圧縮目的以外に「業務の可視化」や「コンプライアンス強化」といった経営のデジタル化に直接つながる期待をペーパレス化に抱いていることがうかがえます。ここ最近、顕在化した企業や政治での問題を考慮しますと、現在はより多くの方々が2つのポイントを重視しているのではと想像できます。

続いて、非管理者向けに実施したペーパレスに関する質問結果ではまず過去12カ月間でのFAX利用について尋ねたところ、63%が経験しているとのことでした。また、仕事・個人のいずれかで、過去1年間にデジタルで処理した手続きなどの経験に関しては下記となります。

  1. オンラインストアの支払い手続きで口座情報やクレジットカード情報を入力 : 50%
  2. 銀行での送金手続き : 48%
  3. 保険加入・保険会社変更 : 18%
  4. 業務書類への署名 : 15%
  5. 携帯キャリアの変更 : 13%
  6. 電気・ガス・水道の契約先変更 : 12%

商品の購入や銀行振込は約半数が経験しているものの、携帯電話や公共サービスの乗り換え、保険や賃貸、ビジネスでの契約をデジタル上で行ったことがあるのは20%未満となり、まだまだ日常の業務や作業としてデジタル処理をするためのインフラや慣習を整備していないことが想定されます。

一方、デジタルでの契約処理や商品の購入を取引先に期待している方の割合が83%にも達しており、デジタル化への移行を歓迎していると言えます。紙処理に関する質問においても、重要書類を紙で送信することへの安全性について半数の50%が懐疑的に見ていているなど、紙ベースプロセスに以下のような懸念点を感じていることがわかります。

  1. 機密情報の紛失・漏洩 : 65%
  2. 誤記に伴う再記入時間の損失 : 20%
  3. 大量の紙消費による環境への負担 : 17%
  4. バックアップ/デジタルコピーがないこと : 16%
  5. 書類受理の通知手段無や相手先処理プロセスの不可視の問題 : 14%
  6. 重要な書類の将来の紛失リスク : 14%

このように企業が扱う情報の紛失や漏洩リスクに対して、紙ベースでの処理は脆弱性があると多くの人が認識し、将来の紛失・漏洩やバックアップといった点においても、懸念を抱いています。また、個人として複数の用紙に記入を求められるケースではどのように感じるかを質問したところ、手間がかかりすぎる、時代遅れといった紙への記入に対する不満足度が高い結果となりました。

デジタルトランスフォーメーションは加速するか

最後に、同調査で管理職向けに行ったデジタルトランスフォーメンション(DX)に関する質問結果について取り上げます。

DXの優先度が高いと回答したのは全体の64%の管理職で、日本企業におけるDXへの取り組みの重要性が確認できました。また、取り組みを推進しているのは、主に中間管理職以上といった結果も出ています。つまり、企業としてDXを全面的に推進していると言えます。

経営のデジタル化を推進する理由はについて、最も高い回答は「スピードアップ」が56%、「費用削減」が41%、「セキュリティの改善」が39%、「従業員の生産性向上」が30%となりました。企業は、ビジネスプロセスをデジタル化し、スピードアップと費用削減を実現して、デジタル化の恩恵であるセキュリティ向上と働き方改革による生産性向上を合わせて期待しているのです。

また、カスタマーサービスの向上や、データ入力の正確性改善も挙がっていました。顧客向けのサービス向上や、データ再入力の無駄の排除なども、経営のデジタル化を推進する理由となっているのです。

今回のデータや調査結果で述べてきたように実際の紙の使用量や、紙を使用する習慣はまだまだ残っていますが、企業としては経営のデジタル化といった観点、個人は利便性・満足度・安全性といった観点から、DX、ペーパレスに対して、非常に前向き、かつ肯定的な調査結果になっています。


ドキュサイン・ジャパン ソリューション・エンジニアリング・ディレクター 佐野龍也
ドキュサイン(DocuSign)は、電子署名とペーパレスソリューションのプラットフォームです。ドキュサインを使うことで、時間や場所、デバイスに関係なく、クラウドで文書を送信、署名、追跡、保存を可能とし、セキュアな環境の下、業務のペーパレス化を実現します。ドキュサイン・ジャパンは、米DocuSignの日本法人です。