本連載は2016年および2018年に改訂を行いました

前回はオシロスコープとは一体どういったものなのかについて述べました。今回はオシロスコープの基本的な使い方について解説していきます。

表示画面の見方

オシロスコープ

前回も述べたように、オシロスコープは「電圧の挙動」を「時間の経過」にそって線表示するものです(図1)。表示画面に波形を描く方法は心電図の描き方と似ています。波形は左から右へ等速で移動しながら電圧の大きさに応じて上下します。プラスの電圧が大きくなると上に向い、小さくなると下に向います。左が古い時間、右が新しい時間です。オシロスコープの表示画面は、基本的に縦方向が電圧、横方向が時間を表した2次元表示です。表示画面の縦方向は電圧軸として電圧目盛、横方向は時間軸として時間目盛が刻まれています。

  • 「電圧の挙動」を「時間の経過」にそって線表示

    図1 「電圧の挙動」を「時間の経過」にそって線表示

多くのオシロスコープでは表示画面の上から下までは8分割されており、例えば8分割された1目盛あたりを1ボルト(1V/div:「1ボルトパーデビジョン」と呼ぶ)だとすると、その画面には8ボルトの電圧区間を表示できます。時間軸もある幅を持った時間区間として表示されます。表示画面の左端から右端まで10分割されており、例えば10分割された1目盛あたりを1μs(1μs/div:「1マイクロセックパーデビジョン」と呼ぶ)だとすると、その画面には10μsの時間区間を表示できます。

ツマミの働き - 波形を見やすくする

波形が垂直軸(電圧軸)からはみ出す場合や、波形の高さ(波形振幅)が小さすぎて上下変動がよく判別できない場合には、垂直軸Scale(スケール)ツマミで波形を見やすい大きさに調整することができます。

調整後、波形振幅が目盛のいくつ分であるかを知ることにより、波形振幅を測定できます。仮に1V/divで波形振幅が6.4目盛分あったとすると、6.4Vの波形振幅だと分かります(図2)。

波形が水平軸(時間軸)においてギュッと詰まり過ぎた場合や、逆に間延びし過ぎた場合、水平軸Scaleツマミを操作して波形を観測しやすい形に調整することができます。

調整後、波形の繰り返しが目盛のいくつ分であるかを知ることにより、波形の周期(繰り返し時間)を測定できます。例えば1μs/divで波形が8.4目盛ごとの繰り返しだった場合には、8.4μsの周期だと分かります。

  • オシロスコープの表示画面

    図2 オシロスコープの表示画面

また垂直軸Position(ポジション)ツマミと水平軸Position(ポジション)ツマミにより、波形を上下左右に位置させ、見やすくすることができます。

トリガの掛け方

オシロスコープの画面を見ていると、そこに巧みな技が隠されていることに気付きます。それが「トリガ」という技(機能)です。波形を表示画面に何度も何度も重ね描くとき、このトリガ機能が働いています。水平軸上の同じ位置にその波形たちが重ね描かれるように、横方向にその波形たちがズレたりしないように、トリガ機能が働いているのです(図3)。

  • トリガが掛かっていない場合(左)とトリガが掛かっている場合(右)

    図3 トリガが掛かっていない場合(左)とトリガが掛かっている場合(右)

同じ位置にその波形たちを重ね描くようにトリガを操作することを「トリガを掛ける」と表現します。トリガを掛ける基本は、トリガツマミによりトリガレベルを上下させ、トリガレベルと波形を重ねることです。シンプルな繰り返し波形ならばトリガを掛けることは簡単です(図3)。しかし、周期性が複数混在した複雑な繰り返し波形については、トリガを掛けるためのコツが必要です。まず、波形をざっと見て、混在した複数の周期の中から一番長い周期を見つけます。そして、一番長い周期を持つ特定部分にトリガレベルを重ねます(図4)。

  • 周期性が複数混在した複雑な繰り返し波形にトリガを掛ける方法

    図4 周期性が複数混在した複雑な繰り返し波形にトリガを掛ける方法

信号へのつなぎ方

測定する信号(被測定信号)をオシロスコープで観測するには、まず、その信号をオシロスコープの入力端子(多くの場合はBNCコネクタ)に導かなければなりません。この方法は2つあります。

1つは同軸ケーブル(多くの場合はBNCケーブル)を介して、オシロスコープの入力端子に導く方法です。そしてもう1つは「プローブ」と呼ばれる入力ツールを介して、オシロスコープの入力端子に導く方法です(写真1)。

  • 被測定信号をオシロスコープで観測する方法

    写真1 被測定信号をオシロスコープで観測する方法

同軸ケーブルを使用するケースは、被測定信号が同軸形状の出力端子を持っている場合でかつ被測定回路のインピーダンスとオシロスコープの入力インピーダンスが問題を起こさない場合に限られます。同軸ケーブルによる接続は信号を劣化させる要素の少ない優れた方法ですが、多くの場合はプローブが使われます。プローブは特殊な先端形状と高いインピーダンスを持つことにより、形状とインピーダンスの対応力が高く、被測定回路の多種多様なポイントにアクセス可能です。

プローブは利便性が高く、ほとんどのオシロスコープでは標準付属品となっています。被測定信号を正しく表示し正確に測定する過程において、プローブは非常に大きな役割を担っています。

今回はオシロスコープの使い方について説明しました。ここで説明した内容は基本中の基本ですが、少し難しいと感じた方もいることでしょう。次回は、そんな方もびっくりするような簡易かつ便利な機能を紹介します。お楽しみに。

著者プロフィール

稲垣 正一郎(いながき・しょういちろう)

東洋計測器
前職では、テクトロニクス社にて、10年にわたりテクニカルサポートセンター長を務めた。