東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンス! そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「ウエイトリフティング」。競技解説はウエイトリフティング世界マスターズ選手権優勝、パワーリフティングジャパンオープン優勝の実績のある伊藤知彦さんです。

  • ウエイトリフティング

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ウエイトリフティングの特徴

ウエイトリフティングは「いかに重いバーベルを挙げるか」を競う競技です。体重別に男女それぞれ「10階級」に分かれており、東京2020ではこのうちの「7階級」で競技が行われます。全日本や世界選手権と比べて3階級も少ないため、オリンピックを目指す選手たちは体重を増減させながら「自分に合った階級」を戦略的に選択しています。

バーベルを持ち上げる方法は2種類あります。それぞれ3回ずつ、申告した重量にトライすることができ、成功した最高重量の合計である「トータル」を競い合います。1つ目は、バーベルを床から頭上まで一気に持ち上げる「スナッチ」です。バーベルの移動距離が長いため、バーベルを上げる方向が少しずれるだけでキャッチできずに落としてしまいます。失敗も多く、非常に高い集中力が求められる種目と言えます。2つ目は、床から肩にバーベルを乗せて、そこから頭上まで持ち上げる「クリーン&ジャーク」です。段階的に持ち上げるため、スナッチよりも扱える重量が重くなり「引く・立つ・上げる」のすべてに見応えがあります。

一見すると2種目とも重いバーベルを持ち上げるだけのシンプルな動きに見えますが、この中に「身体の使い方」にちなんだ多くのテクニックが込められており、他競技のアスリートも競技力向上のためのトレーニングとして取り入れることがあります。その効果は、地面を強く蹴ることによる「瞬発力の向上」、地面を垂直に蹴ることによる「力を発揮する方向のコントロール向上」、全身をなめらかに使うことによる「連動性の向上」など多岐にわたりますが、実は「脱力の感覚」も身につきます。2種目とも体幹を固定し全力で地面を蹴りますが、意外にも腕は脱力を意識します。そうすることで脚の力が伝わり、バーベルが勢いよく宙に浮いてきます。多くのスポーツ動作や日常動作は「力の発揮と脱力の使い分け」を求められることが多いため、アスリートのみならず多くの方にチャレンジしていただきたいと感じています。

ウェイトリフティングを観戦するときのポイント

オススメの観戦ポイントは3点です。1つ目は「バーベル重量と体重の比較」です。バーベルが何人分の体重に値するか計算することでイメージがつくりやすくなります。「挙上重量÷選手の体重」で求めることができます。また、ご自身の体重に近い階級の試合を見ることで、観戦にさらなる熱が入ると思います。

2つ目は「挙上前のルーティン」です。ルーティンは「集中力を高める効果がある」と言われますが、「自分の長所を高めたり、短所を埋めようとする気持ちが身体に表れる」こともあります。たとえば、バーベルを垂直に持ち上げるために「肩を垂直にすくめる」、脱力を意識するために「手をブラブラさせる」、自分に集中するために「目を閉じる」などです。選手特有のルーティンを経て、夢に向かう姿にぜひ注目してください。

3つ目は「3本目の試技」です。ウエイトリフティングの試技は軽い順に行われるため、後半に進むにつれて重量が重くなります。多くの選手は、1本目は確実に成功できる重量を申告し、2本目以降はライバルに勝つために重量を選択します。特に3本目は順位逆転・自己記録などを狙いにいく選手が多く、非常に見応えのある試技となります。各階級の最後には世界記録が生まれる瞬間が見られるかもしれません。

東京2020でのチームジャパンの展望

2大会連続でメダルを獲得している三宅宏実選手を中心に日本のレベルは上がっており、2019年9月にタイで開催された世界選手権では、女子59kg級の安藤美希子選手がトータル5位に、男子では61kg級の糸数陽一選手がスナッチで3位・トータルで6位、67kg級の近内三孝選手もトータル6位入賞と結果を出しました。また、89kg級の山本俊樹選手はオリンピック実施階級ではないもののクリーン&ジャークで208kgを差し上げ、堂々の1位・トータル5位と世界を驚かせました。

東京2020には男女3名ずつが開催国枠として確保されており、予選結果によって1名ずつ追加できる可能性も! 日本協会は東京2020での目標を「男女ともメダル獲得・出場者全員入賞」を掲げており、国内競争の激化とともに現実味を増しています。東京2020での成功に胸が膨らみ、2020年が待ち遠しいばかりです。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

「重量挙げは他のスポーツにおける成功の基礎となる唯一のスポーツ。そして他のすべてのスポーツにおける卓越を保証する唯一のスポーツ」。これはスポーツトレーナーの間では有名な言葉です。競技力向上につながるため、私が知っているほとんどのトレーニング指導者が、重量挙げをトレーニング種目として取り入れています。最近、重量挙げトレーニングを積極的に取り入れているプロ野球選手もニュースで話題になっていますね。「小さいころから重量挙げなんて危険……!」と思う保護者の方も多いと思いますが、最近は体に負担がかからない軽いバーベルもありますので、安心して実施できます。下半身から上半身へ力を効率よく伝えられるようなる重量挙げは、走力、跳躍力の向上に大きな役割を果たすでしょう。すでにスポーツを始めているお子さまに一度体験させてみてはいかがでしょうか?

競技解説:伊藤知彦

フィットネスクラブを運営する「住友不動産エスフォルタ」のジムディレクターとしてトレーナー育成や施設管理を担当。区民栄誉賞(2019年/横浜市磯子区)。ウエイトリフティング世界マスターズ選手権優勝(2018年)、パワーリフティングジャパンオープン優勝(2008年)。週末は公園で息子とトレーニング。

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数