コロナ禍において、白物家電、テレビ、パソコンの売れ行きが好調なことが明らかになった。

一般社団法人日本電機工業会(JEMA)によると、エアコンや洗濯機、冷蔵庫などの白物家電などの「民生用電気機器」の2020年(2020年1月~12月)の出荷金額は、前年比1.0増の2兆5,363億円となり、5年連続のプラスとなった。

JEMAでは、「新型コロナウイルス感染症拡大防止による在宅時間の増加に伴い、巣ごもり需要に代表される調理家電製品や、健康清潔意識の高まりから空気清浄機が大幅増となった。空気清浄機は、年間で初めて800億円を超え、過去最高の出荷金額となった。また、特別定額給付金による後押しもあり、ルームエアコンなどの大型製品も堅調に推移し、民生用電気機器全体では、1997年以降最も高い出荷金額となった」という。

  • 民生用電気機器の国内出荷動向

    民生用電気機器の国内出荷動向

過去最高の更新も、好調な白物家電

分野別での出荷台数のデータを見ても好調ぶりが裏づけられる。

ルームエアコンは、前年比0.6%増の986万9,000台となり、5年連続のプラスになったという。これは、データが確認できる1972年以降、過去最高の出荷数量になったという。

「2020年4~5月は、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴い、販売店の休業や営業時間の短縮、外出自粛などの影響を受けたが、在宅時間の増加や特別定額給付金の後押しもあった」としている。

電気掃除機は、前年比7.7%増の471万6,000台となり、7年ぶりのプラスとなった。キャニスター形の数量構成比は減少する一方で、たて形の構成比が伸長。在宅時間の増加により、家のなかをきれいにしたいというニーズが顕在化したともいえる。

空気清浄機は、前年比43.3%増の303万7,000台となり、2年ぶりのプラスとなった。「消費者の清潔意識の高まりから、過去最高の出荷数量となった」とした。普及率が頭打ちとなっていた空気清浄機だが、コロナ禍で家のなかを清潔な空気にしたいというニーズが一気に顕在化した格好だ。

ジャー炊飯器は、前年比1.0%増の561万1,000台。2年連続のプラスとなった。ご飯の食味や食感を追及した高機能製品の購買トレンドが継続しているという。

そのほか、前年実績を上回ったの以下の通りだ。

  • ホットプレート 前年比44.8%増 118万2,000台
  • 加湿器 前年比37.9%増 111万6,000台
  • トースター 前年比16.0%増 292万6,000台
  • 除湿器 前年比7.9%増 72万台
  • 電子レンジ 前年比2.4%増 345万6,000台

このように、在宅時間の増加とともに、料理をすることが増えたり、掃除や空気清浄などの在宅環境へのこだわりを反映した製品が、前年実績を上回っている。また、特別定額給付金を活用して家電を購入するという動きもプラスに影響している。

一方で、前年割れとなったのが、大型家電だ。電気冷蔵庫は、前年比2.3%減の386万2,000台。電気洗濯機は、前年比2.6%減の472万6,000台と、いずれも5年ぶりのマイナスとなった。

だが、緊急事態宣言により在宅時間が増えた4月以降の9カ月間では、冷蔵庫では401リットル以上の大型モデルが1.6%増と前年実績を上回っており、洗濯機も2.6%増と前年を上回る実績となった。洗濯乾燥機も4.0%増と前年を上回っている。「全体の約9割強を占める全自動洗濯機は、まとめ洗いや大物洗いへのニーズが高まり、引き続き大容量へとシフトしている」という。

テレビ出荷も高水準、買い替えも促進へ

テレビの出荷も堅調だ。一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)が発表した、新4K8K衛星放送の視聴可能機器台数は、2020年12月末までに724万7,000台となり、2021年夏に予定されている東京オリンピック/パラリンピックの開催時までに、累計1,000万台を目指すという目標に向けて、順調な動きをみせている。

内訳は、新チューナー内蔵テレビが490万7,000台、4K対応テレビなどに接続する外付け新チューナーが25万2,000台、4Kレコーダーなどの新チューナー内蔵録画機が82万3,000台、CATV契約者が視聴する際の新チューナー内蔵セットトップボックスが126万5,000台となっている。

  • 新4K8K衛星放送視聴可能機器台数

A-PABでは、「12月単月では、55万8,000台と過去最高を記録。そのうち、新チューナー内蔵テレビも、40万台が出荷され、過去最高となった。年末商戦では、量販店などが販売に力を入れるなか、引き続き旺盛な買い換え需要と、新型コロナウイルスの感染拡大による年末年始の巣ごもり需要が相まったものと考えられる」としたほか、「NHKとBS民放5社が、2020年12月を、『新4K8K衛星放送で見ようよ!月間』として、スポットやPR番組を共同で制作して放送。番組ラインナップを強化したことなども設置台数の増加を後押ししたとみられる」と分析している。

期待しているのは買い替え需要の促進だ。2011年7月の地デジへの完全移行では、それに伴う2008年~2011年の4年間合計で6,840万台の薄型テレビが出荷されている。とくに、2010年の出荷台数は2,519万台と過去最高を記録していた。今まさに、これらのテレビが買い替えサイクルに入ってきている。テレビの今後の需要拡大において見逃せない要素だ。

なお、A-PABでは、新4K8K衛星放送コールセンター(0570-048-068)を設置し、新4K8K衛星放送に関する質問に応じる体制を用意。こうした活動を通じて視聴環境の整備や普及に向けた取り組みも行っている。東京オリンピック/パラリンピックに向けての普及も注目されるだろう。

記録的出荷台数だったパソコン、追い風続く

そして、パソコンの出荷台数も増加している。

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2020年の国内のパソコン出荷実績は、前年比7.4%増の1,045万5,000台となった。同調査において1,000万台を上回ったのは、2014年度以来、6年ぶりとなった。また、ノートパソコンは、前年比25.1%増の894万5,000台となり、2012年の821万2,000台を抜いて、過去最高の出荷実績となった。

児童生徒への1人1台のパソコン整備が進められている政府のGIGAスクール構想によるパソコン導入の本格化や、コロナ禍におけるテレワークの広がりに伴うパソコン需要の促進などがプラスに影響した。

  • JEITA 2020年パソコン国内出荷実績

注目されるのは、2020年12月の出荷実績である。

市場全体では、前年同月比67.6%増の161万3,000台と約1.7倍に増加。さらに、ノートパソコンの構成比は92.4%と過去最高を記録した。とくに、ノートパソコンだけの出荷台数をみると、前年同月比116.2%増となり、約2.2倍という高い伸びをみせている。

前年同月となる2019年12月は、2020年1月14日のWindows 7のサポート終了を直前に控え、旺盛な買い替え需要があった時期であり、パソコン市場全体で14.0%増と2桁の伸びをみせていた。2020年12月は、それを大きく上回る結果となっており、Windows 7特需を超える需要が訪れているともいえる。

また、GIGAスクール構想で導入されるのは、Windows搭載ノートパソコン、Chromebook、iPadとなっており、これがノートパソコンの構成比を一気に引き上げる要因になっている点も見逃せない。2019年度までは、ノートパソコンの構成率は70%台だったが、2020年4月以降、在宅勤務の用途でノートパソコンの購入が促進され、80%台に上昇。GIGAスクール構想の導入が本格化した9月以降は、90%台にまで高まることになった。

その一方で、デスクトップパソコンの需要は低迷。2020年のデスクトップパソコンの出荷実績は、前年比41.5%減の151万1,000台と大幅なマイナスになった。

デスクトップパソコンは、GIGAスクール構想による特需や、テレワーク需要の恩恵を受けなかったといえるが、味方を変えれば、デスクトップパソコンの出荷実績の水準が、特需を含まない市場全体の実力値だったともいえそうだ。

だが、市場全体の好調ぶりはしばらく続きそうだ。テレワーク需要は以前ほどの盛り上がりはないものの、継続的な需要が期待されるほか、2021年1月~3月にかけて、小中学校を対象としたGIGAスクール需要のピークが訪れ、さらに2021年4月以降は、高校などでの整備が進められることになるからだ。

いずれにしろ、テレワークの広がりや、教育現場への導入によって、1人1台のパソコン環境が整い、パソコン市場の規模が底上げされたことは明らかだ。