前回は、QoS機能の概要について解説した。それに続いて今回は、ネットギア製のスマートスイッチ・GS116Eを利用して、実際にQoSの設定を行う手順について解説する。

なお、設定に使用する「ProSafe」ユーティリティの入手やセットアップ、それと設定操作の対象になるスイッチを指定する際の手順については、本連載の第2回と重複するため、割愛させていただく。必要に応じて、第2回の記事を参照していただきたい。

優先制御QoSの設定

「ProSafe」の設定画面には「QoS」タブがあり、QoS関連の設定機能はこの下にまとめられている。そして、工場出荷時の設定ではIEEE802.1pベースのQos機能が有効になっている。

IEEE802.1pとは、イーサネットフレームのタグフィールドに設定する優先度の情報を利用して、当該フレームの優先度を判断する仕組みである。IEEE802.1Qで規定しているVLAN用のタグフォーマットの中にCoS(Class of Service)という長さ3ビットのフィールドがあり、そこに優先度を示す値を記述する。3ビットだから、理屈の上では最大8段階の設定が可能である。

こうした事情から、IEEE802.1pによるQoS機能を利用するには、フレームを送出する際に、タグフィールドに適切な値をセットしておかなければならない。そうした仕組みを持たないノードから送出したフレームに対しては、優先制御は機能しないことになる。

GS116Eでは、このIEEE802.1pベースの優先制御に加えて、ポートごとに固定的に優先度を指定する、ポートベースの優先制御機能も備えている。同じポートの中でトラフィックの種類に応じて優先度を使い分けるような器用な使い方はできないが、ポートごとに用途が決まっているのであれば、ポートベースの優先制御機能でも十分に目的は達成できるのではないだろうか。

「QoS」タブに移動したときの画面(工場出荷時状態)

「ProSafe」のQoS設定画面で「802.1pベース」から「ポートベース」に選択を切り替えると、個々のポートごとに、トラフィックの種類を設定できるようになる。切り替えを指示した際に、既存のQoS設定が消去されるという警告を表示するので、「はい」をクリックすると切り替えが行われる。

「ポートベース」に設定を切り替える際に表示する警告画面

ポートベースの優先制御設定では、画面にGS116Eが備えるポートの一覧が現れる。そして、チェックボックスをオンにしたポートについて、一覧の下に現れる選択肢「高」「中」「通常」「低」の中から、適切なものを選択する仕組みである。選択後に画面右下の「適用」をクリックすると、設定が確定する。

「ポートベース」のQoS設定では、ポートごとに優先度を手作業で指定する

ポート#1を「高」、ポート#2を「中」、ポート#3・#4を「通常」、ポート#5を「低」に設定した例

この方法であれば、イーサネットフレームのフィールドを指定する仕組みは必要ないが、その代わりに、ポートごとに用途を明確にする必要がある。たとえば、ストリーミング配信に使用するサーバがポート#1につながっているのであれば、ポート#1の優先度を「高」に設定するわけだ。

帯域制御QoSの設定

次は帯域制御の設定である。この設定は、「QoS」タブ以下の「レートリミット」をクリックすると表示する、「レート制御設定」の画面で行うようになっている。

「QoS」タブ以下の「レートリミット」をクリックすると表示する、帯域制御の設定画面「レート制御設定」

この設定画面ではポートの一覧を表示しており、工場出荷時設定ではすべてのポートが「制限なし」になっている。そして、左側のチェックボックスをオンにしたポートについて、画面右下にあるリストボックスを使用して、送信レートと受信レートについてそれぞれ個別に、利用可能な伝送速度の上限値を指定する仕組みである。選択肢は以下の通りだ。

・512Kbit/sec ・1Mbit/sec ・2Mbit/sec ・4Mbit/sec ・8Mbit/sec ・16Mbit/sec ・32Mbit/sec ・64Mbit/sec ・128Mbit/sec ・256Mbit/sec ・512Mbit/sec

GS116Eはギガビット・イーサネットに対応しているスイッチなので、額面上の伝送速度は最大1Gbpsである。だから、帯域制御ではその半分までを割り当てられる計算になる。

ともあれ、送信側と受信側のそれぞれについて上限値を指定したら、画面右下にある「適用」をクリックすると設定が確定する。この操作をポートごとに繰り返すわけだ。

チェックをオンにしたポートについて、送信レートをリストボックスから選択する

同様にして受信レートも指定する。最後に「適用」をクリックして設定を確定させる

ポート#1について、送信レートと受信レートの両方を512Mbit/secに設定した例

ブロードキャストフィルタの設定

その他のQoS関連機能として、ブロードキャストフィルタリングがある。ブロードキャストフレームが帯域を食いつぶしてしまわないように制限をかけるための機能で、工場出荷時状態では無効になっている。

この機能は、「QoS」タブ以下にある「ブロードキャストフィルタ」をクリックすると表示する、以下の設定画面で設定する。

「QoS」タブ以下にある、ブロードキャストフィルタの設定画面(工場出荷時設定)

まず、「無効」を「有効」に変更して、ブロードキャストフィルタを有効にする。すると画面にポートの一覧が現れるが、既定値は「制限なし」となっている。ここで、個別のポートごとに上限値を指定する仕組みである。

設定できる値は、前述した帯域制御(レートリミット)と同じだが、送信・受信の区別がない点が異なる。変更後に画面右下の「適用」をクリックして設定を確定する点は、帯域制御(レートリミット)の設定画面と同じである。

ブロードキャストフィルタの設定画面。ポートごとに上限値を指定できる

もっとも、ブロードキャストによって他のトラフィックを阻害する事態が頻繁に発生しているのであれば、まずはそのブロードキャストを止められないかどうか検討する方が先決で、ブロードキャストフィルタは「ブロードキャストが発生してしまったときの保険」と考える方がよいかもしれない。いくらスイッチでフィルタリングしても、ブロードキャストフレームがネットワークに流れていることに変わりはないからである。

次回は、連載最後の締めくくりの話題としてポートミラーリングについて取り上げる。ポートミラーリングは、エンドユーザーにとっては特に必要性を感じない機能かと思われるが、管理者にとっては話が別である。しかも、常に設定していると全体のトラフィックが増加してスイッチのメリットを減殺してしまうので、必要に応じて容易に設定、あるいは設定解除できる方が望ましい。そこで、ポートミラーリングがどういった場面で必要となるかについての解説に加えて、ネットギア製の「ProSafe Plus」スイッチを利用して、ポートミラーリングを設定する際の手順について解説する。