新型コロナウィルスの感染は、4月に入って都市部での感染拡大が一層大きくなり、休日や夜間の外出自粛などにより、企業活動も大きな影響を受けています。

特に、中小企業では、資金繰りに逼迫した企業が、公的金融機関の無利子融資に殺到している状況が報じられています。政府では、7日にも「緊急事態宣言」を発令し、これに伴い今後も中小企業へのさらなる支援策を、打ち出す動きも出てきています。

今回は、こうした新型コロナウィルスの感染拡大に伴う中小企業への支援策に ついて、4月6日時点の政府系のサイトなどから、その内容を見ていきましょう。

経済産業省・中小企業庁 支援策をまとめたパンフレットを随時更新中

(図1)は、経済産業省のホームページの、「新型コロナウイルス感染症で資金繰りにご不安を感じている事業者の皆様へ」向けられたコーナーです。

ここでは、日本政策金融公庫や商工中金の新型コロナ感染症特別貸付の内容が簡単に説明されています。こうした内容は、すでに各種報道や、中小企業の支援機関などを通じて周知され、日本経済新聞の4月4日朝刊の「政府の緊急融資8万件(3月末)」によると、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫(商工中金)、信用保証協会への中小企業からの申し込みは、3月31日までに約14万件あり、そのうち約8万2千件の融資を承諾した、としています。4月新年度になって、外出自粛要請がより厳しくなるなか、こうした公的融資への申し込みの勢いは増しているようです。

(図1)の経済産業省のホームページには、「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様にご活用いただける支援策」をまとめたパンフレットへのリンクも貼られています。

(図2)は「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」をタイトルにしたパンフレットの表紙の部分です。

このパンフレットは、表紙も含めて44ページあり、公表以来、政策が追加されたり、内容が変わったりすれば、随時更新されており、4月6日時点で公表されているのは4月2日10:00時点版となっています。

(図3)は、このパンフレットの目次です。

冒頭の「資金繰り支援」では、すでに実施している無利子融資などの要件や内容などが説明され、それぞれの融資について問い合わせ先なども掲載されています。

「設備投資・販路開拓支援」では、「生産性革命推進事業」として行ってきた、「ものづくり・商業・サービス補助」「持続化補助」「IT導入補助」の3つの補助金事業について、「新型コロナウイルス感染症による影響を受け、サプライチェーンの毀損等に対応するための設備投資や販路開拓、事業継続力強化に資するテレワークツールの導入に取り組む事業者を優先的に支援します。」としています。具体的には、「影響を受ける事業者への特例措置」として、「優先的な支援」「申請要件緩和」「遡及適用」を掲げています。

これら「ものづくり・商業・サービス補助」「持続化補助」「IT導入補助」の3つの補助金事業については、4月1日にリニューアルオープンした「中小企業向け補助金・支援サイト ミラサポplus」で推進しており、こちらのサイトで事例なども含めて確認しておくと良いでしょう。

このパンフレットの「経営環境の整備」では、非常に多岐にわたる政策が掲載されています。

このなかで、「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成する」雇用調整助成金について、「雇用調整助成金の特例措置」の項では、4月1日から特例措置を拡大し、要件を緩和するほか、中小企業の助成率を2/3から4/5に増やすなどしています(この「雇用調整助成金の特例措置」については、日本経済新聞4月6日朝刊の記事によると、さらに助成率をあげて中小企業では9/10にするとのことです)。

また、学校等の休校に伴い保護者である労働者に休暇を取らせた事業者向けの支援策も用意されています。「新型コロナウイルス感染症に関する対応として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子どもの保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金を創設します。」とし、休暇中に事業者が支払った賃金相当額を100%助成する内容になっています。

外出自粛要請が続くなかで、自宅で働く「テレワーク」が注目されていますが、このパンフレットでも「テレワークに関する情報提供」「テレワーク導入支援策」が掲載されています。「テレワークに関する情報提供」では、総務省の「テレワーク情報サイト」と、厚生労働省の「テレワーク総合ポータルサイト」が紹介されています。ICTの活用といった立場から総務省が、働き方改革といった立場から厚生労働省が、それぞれテレワークの普及に取り組むために作ったサイトのようですが、内容が被る点も多いことから、できれば政府として一つのサイトで情報展開した方が、見る側としてはありがたいかなと感じました。

「テレワーク導入支援策」では、IT補助金など既存の支援策が掲載されるなかで、「時間外労働等改善助成金特例コース(テレワークコース)」という助成金が設けられています。厚生労働省のホームページで確認すると、この助成金は新年度からは「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」と呼ばれており、このなかに「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」を創設したとしています。(図4)は、この「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」のリーフレットです。

業種や社内の業務によって、テレワークが難しい場合もありますが、これからも外出自粛が続くことを考えると、可能な業務からテレワークに移行することは、感染拡大を押しとどめるために中小企業が取れる対策となります。その際には、こうした助成金を活用することをお勧めします。

都道府県・市町村の支援策

前項でみてきたパンフレットは、国の支援策をまとめたものでした。では、都道府県や市町村など自治体の支援策は、どうなっているのでしょうか。

前項でみてきたパンフレットの最後にリンク集がまとめられており、そこで都道府県や市町村など自治体の支援策については、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-NET21」が紹介されています。

(図5)はそのトップページです。

前項のパンフレットで紹介されていた国の支援策を、ここでも確認できますが、(図5)にある通り、都道府県別の支援策も紹介されています。(図6)は、そのなかの東京都の支援策です。

東京都独自の融資施策やテレワーク助成金などが紹介されています。

こうした支援策が、都道府県ごとに紹介され、さらに市区町村の取り組みも紹介されています。そして、紹介されている支援策のリンクをたどれば、より詳しい内容を知ることができるようになっています。

新型コロナウィルスの感染拡大の中で、「緊急事態宣言」も発令され、経済活動がますます萎縮し、中小企業にとっては事業継続が危ぶまれる深刻な状況になっています。今回ご紹介した国の支援策や都道府県など自治体の支援策が、事業継続に向けた中小企業の皆さんの努力に少しでも寄与できることを願っています。

中尾 健一(なかおけんいち)
Mikatus(ミカタス)株式会社 最高顧問
1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。現在は、2019年10月25日に社名変更したMikatus株式会社の最高顧問として、マイナンバー制度やデジタル行政の動きにかかわりつつ、これらの中小企業に与える影響を解説する。