前回は、マウスコンピューターのサーバPC「MousePro SV200ESX」でWindows Server 2012 Essentialsを動かして、基本となるフォルダ共有機能の概要やクライアントPCの接続などについて取り上げた。

続いて今回は、Windows Server 2012 Essentialsが備える特徴のひとつである、サーバとクライアントの双方を対象とするバックアップ機能について解説する。

なお、Windows Server 2012 Essentialsそのものの機能や基本操作については、マイクロソフトの技術文書も参照してみていただきたい。

サーバ自身のバックアップ

Windows Server 2012 Essentials自身のバックアップには、[バックアップの構成ウィザード]を使用する。スケジュール化による自動バックアップも可能で、ウィザードの推奨設定は「一日2回の自動バックアップ」となっている。

このバックアップでは、個別のファイルやフォルダだけでなく、システム全体の復元も可能だ。各種の設定まで復元する手間、あるいは復元後にセキュリティ修正プログラムを適用し直す手間を考えると、システムをまるごとバックアップできるのは助かる。

なお、サーバ自体のバックアップ先となるストレージデバイスは、サーバOSで使用しているストレージデバイスとは別に必要になる。もちろん、サーバのディスク容量より大きな容量を持つストレージが必要である。

試用機は2TBのHDD×2基でRAID 1を構成しているから、利用可能な容量は2TB。したがって、バックアップ用のストレージも2TB以上必要になる。バックアップ用のストレージはネットワーク接続でもUSB接続でもよいが、USB接続の方がネットワークにかかる負担は少なくなると思われる。

まず、ダッシュボードでバックアップの設定を指示する

バックアップ先となるストレージデバイスの選択が必要なのはいうまでもない

バックアップのタイミングは、既定では一日2回の自動実行となっている。実行するタイミングと回数はカスタマイズも可能

クライアントPCのバックアップ

一方、クライアントPCについては、前回に取り上げたコネクトソフトウェアをインストールすると、自動的にバックアップのための設定を行う。これにより、Windows Server 2012 Essentialsに接続しているすべてのクライアントPCで、デイリーで自動バックアップを行うようになる。

また、クライアントPCの側でスタートパッドを起動して、手動でバックアップを指示することもできる。その画面例については、前回の末尾で取り上げた。

なお、Windows Server 2012 Essentialsのダッシュボードでは、クライアントPCごとのバックアップの成功/失敗履歴や、セキュリティ修正プログラムの適用状況をまとめて確認できる。バックアップに失敗したPCやセキュリティ修正プログラムの適用をサボっているPCがあれば、すぐ分かるわけだ。

サーバ側のダッシュボードで[デバイス]画面に移動すると、クライアントPCとサーバの一覧を確認できる。そこで選択したクライアントPCについて、タスク一覧画面でバックアップを指示できる。また、バックアップの成功/失敗も確認できる

クライアントPCのプロパティ表示例。[全般]タブではOSのバージョンやコンピュータ名などを確認できる

隣の[バックアップ]タブでは、バックアップの履歴や成功/失敗を確認できる

そこで[詳細の表示]をクリックすると、さらに詳しい情報が分かる。ことに「失敗」の場合には重要だ

クライアントPCの右クリックメニューで[コンピューターのアラートの表示]を選択すると…

たとえば、セキュリティ修正プログラムの適用漏れを把握できる

これが通常のWindows Server 2012だと、サーバ側でバックアップ用に共有フォルダを用意して、クライアント側で何らかのバックアップ用ソフトウェアを実行することになるだろう。その際にバックアップ先をサーバの共有フォルダにすればバックアップデータの一元管理が可能だが、サーバ側でまとめて面倒を見ることができるWindows Server 2012 Essentialsの方が敷居が低いのは、もう一目瞭然だ。

ストレージの容量に注意

クライアントPCのバックアップをサーバ側で集中して行うには、すべてのクライアントPCをカバーできるだけの、充分な容量のストレージをサーバ側で用意する必要がある。クライアントPCが1TBのHDDを搭載していて最大25ユーザーなら、それをまるごとバックアップすることを考えると25TB必要という話だ。

もっとも、会社の業務で使用することを考えた場合には、大量の写真や動画を溜め込まない限り、そこまで大量のデータにはならないと思われるが、それは状況によりけりだ。

試用したMousePro SVは最大4基のHDDを内蔵できる。そして、購入時のカスタマイズ メニューでは3TB×4のRAID 10(利用可能容量6TB)がマキシマムとなっている。したがって、クライアントPCのバックアップで必要となる容量がこの数字を超えそうなら、外付けHDDの増設が必要だ。もちろん、Windows Server 2012 Essentialsの記憶域管理機能を使えば、増設するHDDも含めて面倒を見ることができる。

グループポリシー機能で自動でファイルをサーバに保存

さらにデータ保全を徹底するには、データをクライアントに保存しないようにする必要がある。もちろん、個別のアプリケーションソフトごとに設定を変更して既定の保存先をサーバの共有フォルダにすれば解決するのだが、それをクライアントPCごと、アプリケーションソフトごとに設定しなければならないのでは、設定を忘れる可能性がある。

そこで威力を発揮するのがフォルダリダイレクト機能だ。たとえば、各PCの[マイドキュメント]フォルダをサーバの共有フォルダに付け替えれば、ユーザーにいちいちそれと意識させることなく、ユーザーはマイドキュメントに保存すれば、それは自動的にサーバ上に文書を保存されるようになる。その上でサーバのバックアップ体制を整えれば、サーバをバックアップするだけで、クライアントのデータも保存できる。

これを実現するには、ダッシュボードの[デバイス]画面に移動して、右下にあるデバイスタスク以下の[グループポリシーの実装]をクリックすると有効化される。これにより、クライアントPCのプロファイルフォルダ以下にあるフォルダ群について一括して、サーバの「\<サーバ名>\フォルダリダイレクト」以下に保存されるようになる。

ダッシュボードの[デバイス]画面で[グループポリシーの実装]をクリックすると、ウィザード形式でフォルダリダイレクトを有効化する

セキュリティポリシー設定(セキュリティ上強制するルール)については、どの項目を有効にするかを個別に指定できるが、すべてオンにするべきだろう

また、グループポリシーを有効にした後には[グループポリシーの実装]が[グループポリシーの変更]に変わるので、それをクリックすると、リダイレクトの可否を個別の項目ごとに指定することもできる。なお、設定の内容は[グループポリシーの管理]管理ツールで確認できる。

[グループポリシーの実装]をクリックした後の設定変更で、フォルダリダイレクトの対象を変更できる

詳細な内容は、[グループポリシーの管理]管理ツールで確認する必要がある