東日本大震災の直後に、通話制限によって東日本全域で携帯電話の電波がつながらなくなるという現象が起こりました。緊急時にこそ必要なライフラインである携帯電話に、利用者はある意味で裏切られた形となったわけですが、これに代わってにわかに通信インフラとして注目を集めたのがTwitterやmixi、Facebookといったソーシャルメディアでした。

利用率を伸ばすTwitter、Facebook

インターネット広告業界では、今年「ソーシャルメディアマーケティング」がキーワードとして注目を集めています。まだその手法を含め試行錯誤が繰り返されている段階ではありますが、今後、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアでのマーケティング活動は、企業にとってより重要なファクターとなってくることが容易に想像できます。

そこで今回は、主要なソーシャルメディアの中でも、特にmixi、Facebookの2つのSNSサービスに絞ってリサーチしたユーザーインサイト調査について少し掘り下げてみたいと思います。

以下の内容は、当研究所が東日本大震災直前の2011年3月4日~10日の7日間、携帯電話・スマートフォン・WEBユーザー2,584人を対象に実施した調査結果です。

まず、利用者の割合を年代別に集計してみた結果を見てみましょう。

mixiの年代別利用者の割合 (MMD研究所調べ)

Twitterの年代別利用者の割合 (MMD研究所調べ)

Facebookの年代別利用者の割合 (MMD研究所調べ)

まずmixiですが、利用率は20代をピークに他の2つのサービスに勝っていることがグラフから見てとれます。ちなみにTwitterの利用率グラフですが、30~40代ではmixiとほぼ同じくらいの利用率であるという結果が得られました。

過去の当研究所の調査と比較すると、これまではあまりTwitterに反応しないと思われていた若年層の利用者が増加傾向になっており、10代に限ってはTwitterの利用率がmixiを上回るという結果となっています。

mixiやTwitterに比べ、Facebookの利用率についてはまだこれからという印象ですが、過去の調査と比較しても30代を中心に確実に利用率を伸ばしつつあります。10代の利用率が極端に低いことも特徴的ですが、これも恐らく30代を中心に、その周辺年代へクチコミが浸透していることの現れではないかと思われます。

若年層の「mixi」と30代以上の「Facebook」

次に、SNSサービスとしてよく比較対象されるmixiとFacebookに絞り、利用者の重複を年代別に見てみたいと思います。

今回の調査で、mixiを利用していると回答したユーザー(1,489人)の回答のみを抽出し、Facebookにも登録している重複登録者の割合を年代別に集計した結果、以下のような内容になりました。やはりFacebook利用率の高い30代が重複率が最も高く、20代よりも40代以降の方が高いという興味深い傾向が見られます。

Facebookとmixi利用者の年代別重複割合 (MMD研究所調べ)

次にこれをそれぞれの年代のアクティブユーザー比率で見てみると、以下のような結果になりました。

mixiでは利用率の高い20代を中心に若年層のログイン頻度が高く、年代が高くなるにつれ下がる傾向が見られます。Facebookについては、全年代を通じて50%以上の利用者が毎日ログインしているという結果が得られましたが、これは恐らく、登録後間もない利用者が多いことが反映された結果だと思われます(Facebookの10代利用者についてはサンプル数が少ないためグラフからは割愛しました)。

mixi利用者のログイン頻度 (MMD研究所調べ)

Facebook利用者のログイン頻度 (MMD研究所調べ)

mixi、Faccebook、今後の棲み分けは?

インターネットマーケティングの業界では、国内最大手のSNSであるmixiと、現在利用者を伸ばしつつあるFacebook、それぞれの利用者が、今後これらのサービスをどう棲み分けていくのかという点に注目が集まっています。

これは1つの仮説に過ぎませんが、もし今回の調査結果が「30代以降がmixiを離れ、Facebookに移動しつつある」ことによってもたらされた結果であるとすると、近い将来「10~20代のmixi」と「30代以上のFacebook」という棲み分けの図式になってくるのかもしれません。

現在のFacebookの広がりを見ていると、かつて"国内初のSNS"としてサービスインした2004年当時のGREEが思い出されます。当時のGREEにゲームコンテンツはなく、携帯端末にも対応しておらず、サイトのデザインも無機質でした。ゆえに、PCを日常的に利用し、Webリテラシーの高いインターネット業界のビジネスマンを中心に利用者が広がっていったという経緯がありました。

追ってすぐにmixiがサービスインすると、GREEユーザーの中で仕事上のつながりに窮屈さ(?)を感じていた層が、匿名でどんどんmixiに引っ越し、プライベートなネットワークを構築するという民族大移動のような現象が起こり、mixiユーザーは爆発的に増えていきました(余談ですが、恐らくmixiの匿名文化もその頃のユーザーたちのカルチャーがベースになっているのではないでしょうか?)。

ソーシャルメディアはユーザー同士のつながりをベースにしているため、ユーザーの引越し(他のSNSへの移動)が始まると連鎖的にそのネットワークごと移動するという特性があります。とはいえ、つながりをすべて絶ち切って引越しをすることは人間関係上難しいので、往々にして複数のSNSサービスのアカウントを残したまま使い分けるということになりがちです。

ソーシャルメディアマーケティングにおいては、登録者の属性や数でなく、どの年代のユーザーが何を目的としたネットワークを構築しているのかという「つながり」をベースとしたインサイトと、アクティブ率を把握しておくことが非常に重要になってきます。

当研究所では、今後もソーシャルメディアのユーザーインサイトについての調査を定期的に実施していきたいと思います。

調査テーマに関するご要望いついては、Facebookの当研究所ファンページで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。

今回引用した調査データは、下記のMMD研究所Webサイトで一部公開しています。より詳細なクロス集計結果に関しては、以下のサイトよりお問い合わせください。

Facebookユーザーの55.2%が友人のシェアしたURLに対し日常的にアクセス Facebook利用者の約8割がプロフィールで実名を公開、mixi、Twitterでは約2割 - MMD研究所

<本稿執筆担当: 田川悟郎>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。