11月9日に、ファイザーのワクチン開発のニュースで、2円上昇後、ほぼその週一杯高止まりしました。

  • ドル/円 1時間足

これに対して、11月16日に、モデルナのワクチン開発のニュースで70銭上昇したものの、高値にいたのは2時間ほどで、その後全戻しとなりました。

この同じようなニュースによる急騰なのに、その後の反応に違いが出た原因はどこにあったのかを、お話しします。

結論から申し上げますと、それは、ニュース発表時点での、マーケットのポジション状況に原因がありました。

  • ドル/円 1時間足(ファイザー)

ファイザーのケースでは、その前の週の木金曜日に103円台が売りで試され、かなりマーケットのポジションがショートになっていたため。ファイザーのニュース発表直後、ショートの買戻しが集中し、2円もの急騰を見ました。

そして、ショートが買い戻されて、マーケットがスクエア(ポジションなし)になっていたため、高値圏で長時間の横ばい推移となりました。

たとえば、この高止まりしている時に売っても、マーケットがスクエアのところにショートができるだけですので下がらず、やむなく買い戻され横ばいが続きます。

  • ドル/円 1時間足(モデルナ)

それに対して、モデルナのケースですが、ニュースが出る少し前、確かにマーケットはショートだったのですが、そのことをロンドンが気づき、ショートスクイズを既に行っていたため、マーケットはそれほどショートではありませんでした。

因みに、ショートスクイズとは、ショート筋を買い上げて買い戻させて利食うというロンドンの得意技です。

そういうわけでマーケットはショートではなかったところに、ニュースがでて、買い上げてロングになったため、高値圏を維持できず、時間を置かずして反落となったというわけです。

このように、ポジションの偏りによって、マーケットのリアクションは全く異なってきます。

それだけに、今のマーケットのポジションの偏りがどうなっているのかについては、十分把握する必要があります。

特に、ここで挙げた対局的な2例では、ファイザーのケースは結構良く起こります。

一方、モデルナのケースは起きるのはたまにですが、相場の反応はファイザーのケースとはかなり違いますので、両方のケースの急騰後の反応の違いや原因をよく覚えておく必要があります。

  • ドル/円 1時間足(リターンエース)

尚。ファイザーのケースでは、2円の急騰の過程で連続陽線が出現しています。

この連続陽線を、広い意味での窓と呼んでいます。

相場では、大陽線、大陰線、連続陽線、連続陰線が出現すると、その後その広い意味での窓を埋めにいく習性があります。

これを、リターンエースと呼んでいます。

今回の連続陽線のスタート点は、103.70近辺でした。

そして、時間はかかりましたが、8営業日を経て、今週水曜日のニューヨークタイムに103.66まで下げたことで、スタート点まで丸々戻し、リターンエースは完成しました。

こうした習性が相場にはあることも、合わせて覚えておかれることをお勧めします。

  • ドル/円 1時間足

最後に。もうひとつ付け加えておきたいことは、マーケットの慣れです。

今回の場合は、ワクチン開発報道に対するマーケットの反応は、時間が経てば経つほどに緩慢になっているということです。

最初の11月9日のファイザーの時は2円の上昇、2度目の11月16日のモデルナの時は70銭の上昇、そして、さらに3度目の11月19日のアストラゼネカの時は45銭と、反応は漸減しています。

つまり、反応すべきテーマに対する免疫が、時間の経過とともに出来上がってきたということです。

これは、マーケットではよく見受けられることで、テーマがステール(古くなる)になるということです。

したがって、テーマに対するテンションも落としていかないと、うまく相場に対応できませんので、注意が必要です。