もし、米政権が交代した場合、為替政策にも、大きな変更があることは間違いないでしょう。

トランプ大統領の為替政策の大きな特徴は、各国の自国通貨安政策ににらみを利かせていたという点です。

そのため、2016年のトランプ氏が大統領に当選して以来、日本の政府・日銀は、表立って為替介入ができなくなりました。

因みに、政府・日銀という言い方を、為替管理上で言いますが、ここでいう政府とは財務省であり、日銀は日本銀行です。

財務省と日銀の役割分担は、財務省が為替介入の決定権があり、その指示に従って、日銀が為替介入を実際に行う執行機関となっています。

この4年間、トランプ大統領の手前、政府・日銀自身が動けなかったことを補うために、公的年金の運用機関であるGPIFや、民間の機関投資家である生保の「下がったら買い、上がったら売り」の、いわば機関投資家による疑似介入に大きく頼ってきたところがありました、

そして、それが結果的に、ドル/円は17円というタイトなレンジを形成することとなりました。

しかし、もし、民主党に政権が交代した場合、政府・日銀に対するここ4年間のようなトランプ大統領のにらみがなくなる分、相場自体の変動幅は広がるものと思われます。

実際、トランプ政権の前のオバマ民主党政権時代(2008年~2016年)は、50円というワイドレンジであり、これが再来する可能性があります。

その分、政府・日銀は、為替変動に神経を尖らせなくてはならなくなります。

さて、最後の為替介入は、2011年秋ですから、もう10年近く前になり、一般的な介入についての知識を、たぶん多くの方が持ち合わせていらっしゃらないと思われますので、為替相場のいろいろについて、ここでお話ししてみたいと思います。

本格介入に先立って通常行われるのが口先介入で、財務相幹部などが口頭で為替介入の可能性を匂わせ、マーケットに警告を発するものです。

特に、ドル安円高を止めたい時の口先介入をトーク・アップ(Talk-up)発言とか円高牽制発言と呼びます。

実際に実弾での介入となった場合、通常、政府・日銀が単独で介入(単独介入)するのは東京時間に行われますが、決して東京時間だけで終わるものではありません。

相場状況に応じて、海外市場でも介入は行われます。それを委託介入と呼びます。

つまり、ロンドン市場なり、ニューヨーク市場なりで介入する場合、現地の中央銀行、つまり、ロンドンであればBOE(Bank of England)であり、ニューヨークであればニューヨーク連銀(Federal Reserve Bank of New York、略してFED)に介入を委託します。

これら、現地中央銀行が、日銀に代わって介入するというのが委託介入です。

これとは、全く別に協調介入というものがあります。これはそれぞれの国・地域の介入当局が、協調して介入する必要性を感じ、協同して行動に移すというもので、最近では見受けられませんが、以前は華々しく各国当局が次々と介入すると、逐一ロイターなど通信社のヘッドラインで伝えられました。

この通信社が介入を報道するのは、介入していることを当局自身がその動きをマーケットに知らしめること(アナウンスメント効果)を狙って意図的に通信社に介入の実施を伝えたからでした。

本邦当局も、このようなアナウンスメント効果を狙った介入をすることはもちろんありますが、それだけでなく本邦当局特有の介入手法があります。

それは、覆面介入というもので、介入していることを伏せて介入するもので、自立的に反発しているのを演出しているのかもしれないとも思いますが、個人的には、アナウンスメント効果を狙った方が効果的なのに、なぜそのような手を本邦当局が使うのか、本当のところはよくわかりません。

以上、知っておかれて損はないと思います。