テールリスクとは、めったに起こらないはずの事象で想定外の暴騰・暴落が実際に発生するリスクのこと言いますが、これが、過去、結構起きています。

私が鮮明に記憶しているのは、2011年3月の東日本大震災時の福島第一原発での大事故でした。

人間が想定する危機に対して、それを上回る深刻な危機が実際に発生したことで、まさにテールリスクを実感しました。

いったん起きると、社会でありまたマーケットは油断しているだけに相当な過剰反応を起こします。

記憶ベースでは、マーケット関係では。リーマンショックがそうでしたし、スイスショックがそうでしたが、そのリスクを事前に気付いている人もいましたが、まさかここまでという反応を起こすのがマーケットです。

極端なテールリスクの例として、よく上げられるのがスイスショックです。

2011年9月に、スイス国立銀行(スイス中銀)は、ユーロ危機からスイスフランに逃避してくる資金を抑えるため、基軸となるユーロ/スイスフランの、スイスフランの上限を1.2000に固定しました。

これによる徹底介入によりスイスフランの固定は3年余り続きましたが 、2015年1月にECB(欧州中銀)が追加緩和をしようとしたため、大量のスイスフランへの資金流入が収まらなくなり、とうとうスイス国立銀行はスイスフランの上限を撤廃しました。

この措置が、あまりにも唐突だったためマーケットはパニックとなり、ユーロ/スイスフランはものの数分で3950ポイントの急落(スイスフラン高)となり、多くの企業や個人がとんでもない損失を被ることになりました。

これは、めったに起きないことだけに、そのダメージは、計り知れないものになる例だと言えます。

今回の中国発の新型肺炎の感染は、瞬く間に広がり、そして、今も感染拡大は進行中です。

このリスクの発生がドル/円相場でも気づかれてはいたものの、マーケットが事の重大さを認識するのに時間がかかり、下がれば買いが出て反発しましたが、結局上げきれず、ドル/円ではジリ安が進行しました。

昨年末の時点で想定された今年のリスクは、米中貿易摩擦、米大統領選、ブレグジットといった、マーケットの多くの参加者が認知していたもので、ある意味、備えはできていたと思います。

極端な話、1月31日にブレグジット期限(英国がEUから離脱する期限)が迫りながら、シカゴIMMのポンドのネットポジション(売り持ちと買い持ちのネット)は直近ポンドロングになっている有様です。

しかし、今回の新型肺炎の感染拡大のようなマーケットが想定していなかったものへの反応は、油断していただけに大きくなっています。

結局、今年もこのテールリスクで相場が動くことになると見るべきかと思います。

現状テールリスクになる可能性があるのは、今回の新型肺炎の感染拡大以外にも、まだ終息していない香港デモ、米国のジャンク債バブルの崩壊、欧州金融機関の経営不安などが予想されますが、もちろん想定外のものである以上、他にも現在想定されていないリスクは尽きないと思います。

つまり、申し上げたいことは、既に想定されているリスクであろうと、想定外のリスクであろうと発生すれば、リスク回避の円買いになることは避けられず、それを考えると、円安とは一時的なものであり、円安に心を奪われた時に油断が生じ、ドル/円、クロス円の急落が起きることになるものと思います。

要は、世の中、リスクだらけで、それを考えると、ドル買い円買いの、いわゆるリスク回避の姿勢は崩せないと改めて思っています。

もちろん、本邦機関投資家の「(ドル/円の)下がったら買い、上がったら売り」の方針も変わらないと思いますが、テールリスクが発生した時の強力な円買い圧力を抑えることは、彼らですら簡単にはできないものと思われます。

したがって「(ドル/円の)戻ったら売り、下がったら買い」の売り先行の姿勢を崩さないことが必要だと考えます。

  • 水上紀行(みずかみ のりゆき)

    バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら