チャートはシンプルなものが良いと思います。特に移動平均線は非常にベーシックなものながら、結構役に立つ分析手法です。

私は、5、10、25、90、120、200を良く見ていますが、たとえば25が21であっても、あるいは別に54であっても、それは構わないと思っています。

要は、継続して同じ移動平均線を見続けることが大事です。

  • ドル/円 日足(イメージ)

移動平均線を見てまず思うことは、移動平均線がレジスタンスやサポートになることが多く、これは相場を見る上で大変有用です。

私は、通常1時間足を見ていますが、本当によく移動平均線が、レジスタンスやサポートとなるものだと、今更ながら感心させられます。

また、4時間足、8時間足、日足、週足と期間を変えても、それぞれの時間的なスパンで、移動平均線はレジスタンス・サポートとしてワーク(機能)していることに、さらに驚かされます。

いくつもの移動平均線が収斂してくると、まずはレンジ相場になりますが、この後どちらかに離れてトレンド相場となることが多く、要はレンジ相場からトレンド相場への変わり目を教えてくれます。

5日移動平均線のような短いものが、たとえば目先の上げトレンドを支えることが結構多いですが、いったん5日移動平均線をロウソク足の実体(寄り付きと引け値の間の太い部分)が下回ってしまうと急落するなど短期のトレンドの変化を示すことが多く、また200日移動平均線のような長いものを日足が抜いてくると長めのトレンドの変化を示すこともあります。

また、移動平均線と言えば、ゴールデン・クロスやデッド・クロスが、買いサインなり売りサインなりを示すことが多いとされていますが、厳密な意味でのゴールデン・クロスなりデッド・クロスなりの認識が統一されていないように思われますので確認しておきたいと思います。

ゴールデン・クロスの場合は、厳密には上向きの長期線を上向きの短期線が下から上に抜けた状態のことを言いますが、一般的には、長期線がフラットだったり下を向いたままでも、ゴールデン・クロスと言っているのは拡大解釈だと言えます。

デッド・クロスでも同じことが言え、厳密には下向きの長期線を下向きの短期線が上から下に抜けた状態のことを言いますが、一般的には、長期戦がフラットだったり上を向いたままでも、デッド・クロスというのは拡大解釈だと思います。

ゴールデン・クロスにせよ、デッド・クロスにせよ、実際の相場水準とクロスした水準が離れすぎている場合、クロスしたタイミングでクロスした水準にいったん引き寄せられることがよくありますので、これには注意が必要です。

以上のように説明をしてみますと、シンプルとは言いながらもなかなか奥は深く、大変有用な分析手法ですので、個人的にはお勧めです。

大事なことは、読み手が、移動平均線をしっかりと読み取っているかということです。

読み取るためには、できりだけいろいろな、場面をいろいろな通貨ペアや期間で体験することが大事です。

体感的に、おかしいとか、これはもしかしたらとか、実感できるようになることが大切です。

もちろん、移動平均線がわかったからと言って、相場のすべてがわかるわけではありませんし、相場はそんなに浅いものでもありません、

しかし、相場を理解していくためには、移動平均線は、大きな一歩であることは間違いありません。

相場を、一面的でなく、多面的に見て、攻略することだと思います。

  • 水上紀行(みずかみ のりゆき)

    バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら