日立システムズが提供するオープンクラウドマーケットプレース「MINONARUKI(みのなるき)」。前回は、「MINONARUKI」が業務システムをクラウドに移行する際の難しさを解消する「SEの代わりになるサービス」として構成されていることに加え、ユーザーが自社に最適なサービスを見つけやすくする工夫やサポート窓口としての機能があることなどを紹介した。今回は、サービスの画面を使って、「MINONARUKI」がどのような形でSEとしての働きを行うのかについて説明しよう。

ユーザーの使いやすさを配慮した画面構成

株式会社 日立システムズ ネットワークサービス事業部 ネットワークセキュリティ基盤本部 新事業推進センタ 担当部長 和田博氏

まず、画面構成のポイントとして挙げられるのは、商品カテゴリの分類方法と商品を選択するまでの手順だ。「MINONARUKI」にアクセスすると、上部の動画によるサイトの説明の下に「商品を探す」という項目があり、そのすぐ下に「お困りの課題」「お客様の業種」「ご担当の業務」「ご存知なら商品名」といったボタンが配置されている。ボタンをクリックすると、それぞれ、課題別、業種別、業務別、50音順の商品リストが表示される仕組みだ。

通販サイトなどでは、例えば、ディスプレイならPC周辺機器など商品の属性や特長ごとにカテゴリが設けられるのが一般的だが、業務システムを対象にしたマーケットプレースでは、そうした分類方法では使い勝手がよくないという。その意図について、ネットワークサービス事業部 ネットワークセキュリティサービス基盤本部 新事業推進センタ 担当部長の和田博氏は、次のように話す。

「ユーザーにとって重要なことは、サービスの利用により、『自社の課題がどう解決されるのか』、『どの部署でどのような効果が上がるのか』ということです。商品の販売が目的の1つではありますが、『MINONARUKI』で重視しているのは、訪れたユーザーが自社の課題を知り、解決策を探る手段として利用していただくことです」

「MINONARUKI」のトップ画面

実際に、「お困りの課題」をクリックすると、「売り上げアップ」、「業務効率向上」という2つの商品カテゴリに分かれる(画面の左側でのメニュー表示)。これらはIT、特にクラウドサービスに対して、ユーザーが最も求めるものだろう。

「売り上げアップ」「業務効率向上」といった課題解決に役立つクラウドサービスを検索できる

同様に、「お客様の業種」をクリックすると、「業種共通」「建設業」「製造業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融・保険業」「不動産」「飲食店・宿泊業」「医療・福祉」「サービス」の9つの業種カテゴリに分かれ、ユーザーが自社の業種に特化したサービスを探しやすいようになっている。

課題のほか、業種に特化したクラウドサービスも検索可能だ

SEの代わりとなる「適合診断」メニュー

株式会社 日立システムズ 第一マーケティング本部 シニアチーフセールスマネージャ 阿部佐富氏

こうした配慮は、トップページでの動画を使ったサービス紹介、クラウド/SaaSのメリットを解説するコーナーの設置、分かりにくいIT用語についての用語集の設置などにも現れている。商品紹介ページで、すべての商品について「知る」「分かる」「買う」という3ステップで説明されていることも、和田氏の言う「課題を知り、解決策を探る」ことを手助けするための仕掛けだ。

中でもユニークな機能が、サービスを利用する際に、そのサービスが適合しているかを事前に「検証」できることだ。第一マーケティング本部 シニアチーフセールスマネージャの阿部佐富氏はこう話す。

「当社はこれまでシステム開発から、導入、サポートまで一貫して手掛けてきた経験から、ユーザーがどのような悩みを抱えているか、課題をどのように体系立てて整理していくべきかについてのノウハウを蓄積しています。それらを『MINONARUKI』の製品選択時の診断メニューに生かしています」

ここでは「TENSUITE Sシリーズ」を例に見てみよう。TENSUITE Sシリーズは、日立システムズが提供する個別受注生産型(多品種少量生産)に特化した低価格の生産管理パッケージだ。

「TENSUITE Sシリーズ」のページ

まず、トップページのメニューから「商品を探す」(または「お困りの課題」)をクリックすると、「お困りの課題」に関する商品リストが表示される。「売上アップ」に属する商品リストの上のほうに、個別受注型生産管理パッケージ「TENSUITE Sシリーズ」が見つかるので、「詳しくはこちら」をクリック。続いて表示された商品紹介ページを上から見ていくと、「分かる」のステップに、「適合診断」というオレンジ色のボタンが表示される。

課題のほか、業種に特化したクラウドサービスも検索可能だ

そして、適合診断をクリックすると、次のような「適合診断:TENSUITE Sシリーズに対する設問」画面が表示される。

「TENSUITE Sシリーズ」の適合診断のページ

Q1~Q15までの15個の設問が用意されており、内容は「生産形態の割合は?」「MRP(資材所要量計画)は必須の要件ですか?」「部品表における最大階層数を回答して下さい。」といった生産管理システムで必要になる要件のほか、「導入予定クライアント数は?」「サーバーは自社設置が必須ですか?」「他社とのEDI接続がありますか?」といったシステムの要件などで構成されている。

それぞれの設問に答えていき、ページ下部の「診断」ボタンを押すと、次のような「診断結果」画面が表示される。

「TENSUITE Sシリーズ」の適合診断の結果ページ

今回の適合診断の結果は「B」で、適合率は72%。診断コメントとして「カスタマイズまたは一部アドオンが必要になります。システム相談室に御相談ください」と表示された。また、その際の推奨ポイントとして、「初期導入時の教育メニューを推奨します」「部品表の階層が20を超える場合はつど手入力での登録が必要になります」「EDI接続に関するアドオンが必要になります」などが表示された。

「『MINONARUKI』の適合診断では、相談の内容に適した対策のポイントを提示し、今後クラウドへの移行を進めていく上でガイドにしてもらいたいと思っています」と阿部氏。適合診断は、いわば、通常はSEが顧客に行うべきアドバイスをWebサイトで実現したものと言える。

診断の結果によって別の製品も提案

ここで興味深いのは、適合しない場合の結果だ。適合診断で、「MRP(資材所要量計画)は必須の要件ですか?」に「はい」、「配合表を管理していますか?」に「はい」と回答すると、次のような診断結果が表示される。

診断で「適合しない」という結果が出た場合

適合診断の結果は「C」で、適合率は0%。不適合の理由として、「SシリーズはMRPをサポートしていません」「TENSUITE Sシリーズは配合表管理をサポートしていません」が表示され、それぞれ「TENSUITEシリーズをご検討ください」「Ross ERPを推奨します」といった提案がなされる。MRPや配合表を利用している場合は、あらかじめ適した製品が他にあることが事前に分かるわけだ。

このような適合診断が行える製品は限られているが、その他の製品も導入効果を事前に検証するメニューや動画による操作説明が設けられるなど、ユーザーが疑問に思う点をサポートする仕組みは備えており、今後さらに充実させていく予定だという。

ところで、こうしたユーザーに配慮したユニークなサービスはどのように生み出されたのだろうか。次回は、日立システムズのこれまでのクラウドコンピューティングに対する取り組みや強み、それが「MINONARUKI」にどう生かされているかを紹介する。