もはや、電子機器(アビオニクス)なしに飛行機は飛べない時代になっているので、大抵の飛行機には電子機器室がある。電子機器を作動させるには電源がいるし、それを使えば当然ながら発熱がある。その航空機の電源に関する話は、以前に第234回で書いた。

GCSは電子機器の塊

実は、無人機(UAV : Unmanned Aerial Vehicle)を管制するための地上管制ステーション(GCS : Ground Control Station)も、事情は似ている。大型で高級な機体を相手にするものになると、多数の電子機器を組み合わせた大がかりな仕掛けになるからだ。当然、消費電力も発熱も増える。温度が上がりすぎると、デリケートな電子機器は使えなくなってしまう。

そのため、GCSは単に「箱」があればよいという話にはならない。そこに収容するコンピュータ、ディスプレイ装置、通信機器などが消費する電力を供給する仕掛け、それと電子機器が発する熱に対処するための冷却装置(早い話がエアコン)も必要になる。

しかも、想定される運用環境は幅広いから、灼熱の砂漠地帯でも使えなければならない。「機体が中東やアフリカで飛んでいても、GCSをアメリカ本国に置いておけばいいのでは?」と考えそうになるかもしれないが、アメリカでも暑いところは暑い。

米空軍で、MQ-1プレデターやMQ-9リーパーといったUAVの遠隔管制を担当している基地の1つがネバダ州のインディアン・スプリングス基地だが、所在地はラスベガスの北方。ラスベガスは、真夏だと気温が40度を突破する。ちなみに、1997年に航空自衛隊のブルーインパルスが米空軍創設50周年のエアショーで展示飛行を実施した際、現地で拠点にしたのがインディアン・スプリングス基地だった。

閑話休題。 米空軍のMQ-1プレデターでは、GCS内部の温度が上がりすぎて飛行任務がストップしたことが実際にあったらしい。機体には何の責任もなくて、GCSに付いているエアコンが故障すると任務が止まるのである。こうなると、エアコンも大事な「兵器」である、といっても過言ではなくなる。

壱岐空港には発電機も持ち込まれた

ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)社がガーディアンUAVとともに壱岐空港に持ち込んだGCSは、隣に電源車を従えていた。そこに積み込まれたディーゼル発電機が、電子機器やエアコンの動作に必要な電力を供給する仕組みになっている。

そのディーゼル発電機自体も4輪のトレーラーになっていて、牽引車を用意すれば引っ張って移動できる。

  • 右の大きな白い箱形トレーラーがGCSで、右側面後部の扉から出入りする。左側にある小さなトレーラーが発電機

GCSの側面には2個のコネクタがあり、そのうち片方に太いケーブルがつながれていた。これがディーゼル発電機からの電源供給用だろう。現地で見てみたところ、GCSとは別に設置してあったKuバンド衛星通信のパラボラ・アンテナにも、専用のディーゼル発電機を用意してあるようだった。

発電機を自前で用意すれば、配備先となる飛行場などの施設のインフラに依存しなくても済む。もしも、配備先の施設から電力の供給を受けるとなると、それが配備先を制約することになる。また、場所によっては「24時間フルタイムで安定した品質の電力を得られるのか?」という問題も出てくるだろう。すべて自前で用意すれば、そういう心配はいらない。その代わり、発電機を動かすためのディーゼル燃料(軽油)は運び込まなければならない。

他社のUAVでは?

ここまではGA-ASI社製品の話を中心に書いてきたが、それ以外にもUAVはたくさんある。他社のUAVはどうだろうか、ということで調べてみたところ、英陸軍砲兵隊で使用しているウォッチキーパーUAVのGCSに関する記事を見つけた。

ウォッチキーパーとは、イスラエルのエルビット・システムズ社が製造しているUAV・ヘルメス450に、英陸軍砲兵隊の要求に合わせたセンサー機材を搭載して、目標の捕捉や弾着観測に使用するUAVに仕立てたもの。

そのウォッチキーパーを管制するためのGCSは、ISOコンテナに合わせたサイズになっていて、GA-ASIのそれとは違い、トレーラー式にはなっていない。だから、移動の際にはフォークリフトでトレーラーに載せる必要がある。

英文記事だが、軍の現場における貨物用コンテナなどの利用について解説したWebサイトがあり、その中にUAV用のGCSに関する記述もあったので紹介する。

Military Pallets, Boxes And Containers - Part 3 Containers And Flat Racks (ThinkDefence)
https://www.thinkdefence.co.uk/2014/11/military-pallets-boxes-containers-part-3-containers/

上の記事の中程に「Watchkeeper」というセクションがあり、写真の上部に「Watchkeeper 1」から「Watchkeeper 4」まで4枚のタブがある。

「1」は外観写真で、中央に出入口、左手に電源供給用ケーブルと思われる物体が見える。「2」は内部構成図で、「UAVのオペレーターが2名、画像分析担当者が1名、通信担当者が1名、内部に詰める」との記述がある。その内部構成図を見ると、オペレーター用のコンソールに加えて、やはりエアコンらしき機材が見える。

「3」と「4」は機体輸送用のコンテナで、主翼や尾翼を外して分解した機体をコンテナに収容する模様を撮影した写真。これらは本題から外れるので解説は割愛する。

GA-ASI社のそれと比較するとコンパクトだが、「移動しやすい構造にしたGCSとエアコンなどの道具立て一式に、発電機を付けてワンセット」という点は共通している。

GA-ASI社の製品でも、あるいは英陸軍のウォッチキーパーでも、発電機とGCSは別々になっている。一体化してしまうほうが合理的、と考えそうになるが、騒音を発生するディーゼル発電機がオペレーターの近くに陣取ってしまう。それに、燃料タンクのスペースも必要になる。そう考えると、発電機は外付けにする方がよさそうだ。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。