ここまで、航空機のステルス化に関わる話を取り上げてきた。しかし、航空機だけでなく艦艇の分野でも、ステルス化が進んでいる。

艦艇のステルス化は航空機と事情が異なる

航空機のステルス化は、「レーダーによる被探知を妨げる」、つまり「敵の状況認識を妨げる」という狙いが大きい。もちろん、レーダー誘導ミサイルが当たりにくくなるようにという考えもあるが。

それに対して艦艇のステルス化は、「ミサイルが当たりにくくなるように」という部分の比重が高いように思える。もちろん、その前段階としてレーダー探知を避けることができればそれに越したことはないが、艦艇の場合、航空機ほど徹底したステルス化は難しい。

それは、単にガタイが大きいというだけの話ではなく、「フネとして、あるいは軍艦として機能するために必要な付属品が多い」という事情も影響している。

レーダーをはじめとするセンサー機器のアンテナなどが各所に突出しているほか、信号旗を掲げるための旗甲板や索、法規で設置するよう求められている灯火類、非常時に必要となる救命筏や搭載艇、岸壁に横付けしたときの乗り降りに使う舷梯、錨泊する時に不可欠な錨、舫い綱の固定や繰り出しに必要な繋留機材など、挙げ始めればきりがない。

もちろん、最近の軍艦では搭載艇や舷梯を上部構造に設けた凹み(レセスという)に取り込んで、外から蓋をするようにしている事例が多い。蓋を閉めたときには真っ平らになるので、レーダー電波の乱反射は抑えられる。

さらに徹底すると、錨までレセスに納めて蓋をしたり、繋留機材を上甲板ではなく一層下の甲板に納めて露出させないようにしたり、といった工夫をすることもある。ただ、そうした工夫は運用面の面倒くささと表裏一体のところがある。

横方向から飛来する対艦ミサイルが主敵

艦艇がステルス化を図る目的の1つは「対艦ミサイル避け」にある。

対艦ミサイルの多くはシースキマーといって、海面スレスレの低空を飛んでくる。これは、敵艦のレーダーで探知されるタイミングをできるだけ遅らせて、さらに海面からの乱反射に紛れ込む狙いがあるから。

そして、終末誘導段階でレーダーを作動させて、敵艦を捕捉したらそこに向けて突っ込む。ということは、対艦ミサイルの目標捕捉レーダーの電波を艦艇の側から見ると、ほぼ真横から飛んでくると考えてよい。飛翔高度が低いので、そうなる。

つまり、側面から飛来するレーダー電波を逸らして、元の位置に返らないようにすれば、対艦ミサイルの目標捕捉レーダーによる探知を困難にできるかもしれない。

拙稿「海上自衛隊護衛艦「あさひ」に見る情報通信技術のトレンド(2)の末尾に載っている護衛艦「あさひ」の写真を見ていただくと、上甲板を境にして、側面の断面型が「く」の字になっていることが、おわかりいただける。真横から来た電波は上方、あるいは下方に逸らされる。

今時の軍艦はすべて似たようなデザインになっている。もちろん、実際のステルス性の度合は艦によって違うだろうが、とりあえず「ステルスっぽい外見」をしていないと古くさく見える。輸出商品として見た場合、それでは商売に差し支える。だから似たような外見の艦ばかりになった。

海上自衛隊の「はやぶさ」型ミサイル艇だと、上甲板の上部構造側面に手すりが付いているが、その手すりが円形断面ではなく、「◆」型断面になっている。これも考え方は同じで、側面から来た電波を逸らす狙いによる。

  • 海上自衛隊の「はやぶさ」型ミサイル艇 写真:海上自衛隊ホームページ

  • 海上自衛隊の「はやぶさ」型ミサイル艇 写真:海上自衛隊ホームページ

手すりだけでなく、艦尾に設けられたウォータージェット推進装置を保護するためのガードも同様に、「◆」断面の棒材で作られている。また、艇首にある76mm砲の砲塔基部は周囲を板で囲んで、支筒を周囲から補強する部材の凸凹が露出しないようになっている。

ただし、対艦ミサイルの中には赤外線誘導のものもあるので、そっちの対策も必要だ。最大の赤外線発信源は機関の排気が出てくる煙突だから、周囲の冷気と混ぜて温度を下げるような工夫がなされている。

アンテナはどうする?

船体や上部構造はそれでなんとかするとして、問題はレーダーや通信機器などのアンテナだ。レーダーといっても1つではなくて、対空捜索レーダー、対水上レーダー、航海用レーダーと、少なくとも3基は必要になる。

さらに、通信用のアンテナも多種多様。近距離用のVHF/UHF、遠距離用のHF、衛星通信といった具合に複数ある。そして軍艦だと、対艦ミサイルから身を護るための電子戦機材も不可欠で、これも傍受用のESM(Electronic Support Measures)と妨害用のECM(Electronic Countermeasures)が別々にある。

そうした多数のアンテナ群が別々に突出して、しかも互いに電波干渉が起こらないように配置するのは面倒な仕事である。そして、この分野で最近、「統合マスト」という考え方が出てきた。

つまり、マストにプラットフォームを設けて個別にアンテナを載せるのではなく、四角錐の構造物の表面に平面型のアンテナを並べるという考え方。するとアンテナのところに若干の凸凹は発生するが、基本的にはノッペラボーとなる。

それを徹底したのが、米海軍の駆逐艦「ズムウォルト」。同艦については以前にも触れたことがあるが、その時に使用した写真を再掲する。

  • 米海軍の新型駆逐艦「ズムウォルト」。のっぺりした上部構造の表面に、レーダー、電子戦、通信などのアンテナが埋め込まれている Photo : US Navy

ズムウォルトは上部構造のステルス化をトコトンまで突き詰めており、上部構造物と統合マストを一体化してノッペラボーの外見になってしまった。上部構造物の表面を見ると、平面アンテナらしき輪郭線がところどころに見える。

そこまで徹底させるのではなく、マスト部分だけ平面アンテナを並べた統合マストにしている事例もある。そうした一例として、タレス社が手掛けている「i-Mast」の製品ページを紹介する。下のほうまで見ていくと、サイズや内容が異なる複数のモデルがある様子がわかる。

海上自衛隊が来年度から建造に着手する新型護衛艦も、こんな感じの統合マストになるようだ。