緊張という感情を上手に断ち切る

人はストレス状況が続く時や、終わりが見えないと、ストレスをより大きく感じます。このようなストレスに対処するためには、自分の緊張した気持ちをリラックスさせる習慣を身に付けるとよいでしょう。

この「区切る」には、主に3つの方法があり、「時間」「空間」「五感」を「区切る」となります。これらそれぞれ1つずつ、順番に見ていきましょう。

  • ストレスを「区切る」方法とは

ストレスの持続期間を区切る

時間を区切るというのは、ストレスの原因に直接対処するのではなく、休憩時間や休暇を積極的に取り入れることを意味しています。疲れてから時間を区切るのではなく、疲れる前にあらかじめ休憩や休暇を入れるようにしましょう。

事前に長期休暇の予定を入れておくことで、1〜2カ月前くらいから少しずつ気分がウキウキする経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。このように、「予定する」のがポイントです。

この時間を区切るという習慣は、実は誰もが日常的にやっていることでもあります。意識するしないにかかわらず、日中働いている人であれば、昼食時にはランチタイムと称して時間を区切っていますし、コーヒーやお茶を飲むなど、休憩を挟むケースもあるでしょう。このように時間を区切ることで、仕事の緊張感を一時的に解きほぐすことができているのです。

時間を区切ることは、ストレスの「持続期間」を区切る効果があります。長期間での「区切り」の場合は、1カ月先でも、3カ月先でもいいので、来月の遊びの予定を決めたり、夏季休暇のレジャーや楽しいイベントの予定を立てたりしましょう。日常生活を送りながらも、「区切り」が明確になり、そこまで頑張るモチベーションにもつながるのです。

緊張した感情を区切る

2つ目は、ストレスや緊張のある場所から空間的な距離を取ることで、連続する緊張した感情を区切る手法です。

例えば、社員食堂でお昼を食べるよりも、会社の外のほうが気分転換になります。休日に自宅でゆっくりするよりも、郊外にドライブに行き日常生活から距離をおくことで、自分の状況を冷静かつ客観的・俯瞰的に考えることができるのです。

遠くに行くのが難しいという方は、会社帰りに展望台などの高いところに登り、垂直方向に空間を区切ってみてはいかがでしょうか。

緊張した気分を区切る

3つ目は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感に変化を与えることで、緊張した気分を区切る方法です。人間の感情は、五感に大きく影響を受けています。だからこそ、気分転換によって五感を区切ることはとても重要になってきます。

例えば、多くの人が無意識に、以下の行為を通じて緊張を和らげたり、気分を変えたりしています。

・壁にかかった絵画や、観葉植物を眺める(視覚)
・音楽を聴く(聴覚)
・アロマをたく(嗅覚)
・甘いものや、エスニック料理を食べる(味覚)
・温泉につかる(触覚)

ここで紹介した習慣をすでにお持ちであれば、今後はよりいっそう意識的に、自分のコンディションをいい状態に保つための「区切る」習慣を、ストレスを溜める前にやってみてください。

マラソン選手はベストコンディションで走りきるために喉が乾く前に水を飲みます。みなさんも疲れてから休むのではなく、疲れる前にあらかじめ「区切る」を実行すると、より効果を実感できるはずです。

身体を使って、ストレスに立ち向かう

また、人はストレス状況が続き、終わりが見えない時、体の強張りとしてストレスを感じます。この緊張した気持ち、硬くなった身体、縮こまった筋肉などをどのようにほぐすかや、どうリラックスするかが重要です。不安に上手に対処できている人たちは、その都度、身体を使うことで、緊張を緩和しています。

その代表的な身体の使い方は3つあります。

酸素運動やリズム運動

水泳、ジョギング、エアロビクスなどの有酸素運動や、一定のリズムを伴う運動をすると、脳内でセロトニンが活性化するといわれています。セロトニンはハッピーホルモンともいわれ、近年、多くのうつ病患者の脳内で不足していることが分かり、注目が集まっている脳内伝達物質です。

セロトニンには身体の緊張を和らげる働きもあり、これが増えることによって、恐怖で緊張した気持ちを落ち着かせてくれているのかもしれません。

例えば、ガムをかむのもリズム運動の1つです。よく、大リーグの選手が試合中にガムをかんでいるのを見かけますが、かむことで不安や緊張を紛らわせているのでしょう。

100メートルダッシュ、腕立て伏せ、懸垂、筋トレなど、強めの運動

人は何かしらの行動に集中しているとき、他のことに悩んでいる暇はありません。ダッシュをしている時に、昨日の喧嘩のことは思い出せませんし、腕立て伏せをしている最中に、明日の会議のことを考えるのは、なかなか難しいことです。つまり、強めの運動をしているとき、人は不安なことを忘れているのです。

また、強めの運動負荷で筋肉ダメージを受けると、その修復のために成長ホルモンやアドレナリンなど、抗ストレスホルモンが多く分泌されます。そして壊れた身体(筋肉)を修復したり、負荷に対する耐性を作ってくれたりします。

強めの運動負荷で積極的に抗ストレスホルモンを出し、緊張した身体を修復し、さらに耐性をつける。不安に悩まない人たちは、意識するしないに関わらず、こうした習慣を持っているのです。

体を動かさずに、その場でできる静止運動

例えば、瞑想や深呼吸をしているとき、人は自律神経の副交感神経が優位になります。そのとき、緊張時に優位になる交感神経は、活動が抑えられるのです。

瞑想や深呼吸の他にも、姿勢を正したり、笑ったりと、いろいろな静止運動があります。姿勢を正せば気持ちもシャキッとしたり、口角を上げたら気分が上向いたりと、姿勢や表情を意識して変えるだけで、気分が変わってくるということは、誰にでも経験があることだと思います。他にも、最近では「笑いヨガ」なども普及しており、笑うことの効果が広く知られるようになりました。

中でも私が個人的にオススメしたいのは、「上を向く」ことです。すぐに実践できて効果も抜群です。電車やエレベータ内など、最近は少し時間があると下を向いてスマホをいじっている人を数多く見かけます。そんなときは、試しに空を見上げてみてください。人は上を向きながらだと、なかなか憂鬱な気分にはなれないものです。

区切る事と、身体を使う事。ストレスに上手に対処できるようになるために、ぜひ、お試しください。