相場では、なぜ「勝ち組」と「負け組」が出るのか?

日本において「システムトレード」の認知度やその利用度といえば未だ発展途上であるといえるでしょう。正確なデータがあるわけではありませんが、ひまわり証券での顧客状況から判断すると、その利用度は10%~15%程度であり、おそらくこの数字はプロを除く日本でのシステムトレードの普及率とさほど乖離(かいり)していないと思います。

誤解を招かないように始めに断っておきますが、このコラムでは、システムトレードの具体的な解説をするつもりはありません。また、システムトレードは、あまたのトレード手法におけるひとつの手法であって、"究極"の投資手法とか、"万能"のトレード方法でもありません。しかし、今までの自己流の取引では儲からないとか、損失ばかりが積み上がってしまうとか、そのような状況からなかなか抜け出せない方にとって、お勧めのトレード手法であると考えます。現実のトレードに活用するかどうか、その答えは後ほど述べるとして、まずは、「なぜ儲からないのか」、「なぜ損失ばかり繰り返すのか」、この辺りの話から進めていきたいと思います。

相場では、儲かる人と、儲からない人がいます。これはゼロサムのマネーゲームでは当然のことですが、それは単に「運が悪い」とか、「読み違い」を主因とするものではありません。仮に100回のトレードで100回全敗という方がいらっしゃるとすれば、それは恐らく相場に手を出してはいけない方なのでしょう。

普通に考えますと、相場は上がるか下がるかの二者択一のものですから、そのトレードが当たる確率は50%でなければなりません。もちろん外れる確率も50%です。ところが、相場はなかなかこのような数学的な結果になりません。そこで、まず始めは、「なぜ儲かるのか?」と「なぜ損するのか?」これを"勝ち組"と"負け組"に区別して、そのトレード手法や考え方にどのような違いがあるのかを考察したいと思います。

ひまわり証券での「模擬売買研修」の結果を活用

対象となるトレードデータは、2010年2月~4月までに実施したひまわり証券での「模擬売買研修」の結果になります。これは、一般のお客様のデータでは、売買条件や資金量、その他の取引環境が個々によって全く異なるため、統計的な結果を得ることが困難であるからですが、「模擬売買研修」のデータにおいても、その結果が一般論として当てはまるのかどうかという問題は残ります。しかし、その結果を見てみると、今回の「模擬売買研修」のデータは、ある条件においてお客様の実売買に類似したものであり、参考データとしては充分に活用できるものと判断しました。そして、その「ある条件」とは「取引経験がまだ浅いトレーダー」を意味します。

【別表(1)】

「模擬売買研修」の募集要項については、【別表(1)】でご確認いただきたいと思いますが、特記したいのが、その参加対象者を35歳以下の社員に限定したことです。それはネット証券の特徴でもあるのですが、相場や投資家との直接的な接点がとても希薄であることに問題があると考えたからです。

ネット証券では一部の部署を除きますと、相場の動きや材料などを一切見なくとも仕事にはなんら支障は起きませんし、個人的な相場観を語る必要もありません。それはそれでいた仕方のない時代の流れでもあるわけですが、投資家という、ある意味で特殊なお客様を対象にしている商売として、それはいかがなものかという不安感を持ったことに起因します。また、もう一つの理由として、経験値が少なく、固定観念に囚われず、新鮮な発想からの新たなトレード手法が開拓されるのでは、といった期待も少なからずありました。

そのような思惑から、今回の「模擬売買研修」は相場の初心者という観点から35歳以下という条件のもとスタートしました。もっとも、いかに初心者といえども、全員が全くのゼロからというレベルではありません。個別株を取引中という社員もいますし、個人的にいろいろと研究している社員も混在しています。結果的にはとても有意義なデータを得ることができたと思います。

"勝ち組"はプラス2,200万円、"負け組"はマイナス1,100万円超

この「模擬売買研修」の結果は、参加社員数18名、3カ月のトレードにおける損益は、プラスとなった"勝ち組"が10名で、残念ながらマイナスで終わった"負け組"が8名になりました。この総合成績表は【別表(2)】にてご確認ください。

【別表(2)】

まずこの成績表で目に付くのは、その「勝率」にあると思います。"勝ち組"の約72%という好成績はもちろんですが、"負け組"であってもその数値は約53%と決して落第点とはいえません。しかし、これを「売買損益額」の項目に目を移しますと、その景色は一変します。"勝ち組"の総損益額はプラス2,200万円に対して、"負け組"のそれは、マイナス1,100万円を超えているといった、"天"と"地"ほどの差になってしまいました。

それでは、なぜこれほどまでの差が付いてしまったのか、この差となる要因を究明することにより、"負け組"から"勝ち組"への転身が可能になると思う次第です(続く)。

執筆者プロフィール : 久保修眞(くぼ しゅうま)

ひまわり証券 情報企画チーム マネージャー。大学卒業後、一貫して先物取引やFXを中心とした相場関連業務に従事。30年にわたる経験で培われた相場やトレードに対する深い洞察力をベースに、現在は投資セミナーの企画・プロデュースや、メールマガジン『どるうえざー』の執筆活動などを展開している。著書に『為替取引・7日間速攻ゼミ-誰にでもできる身近な資産運用』(同友館)などがある。