仕事にも生活にも役立つツールとして広がってきたiPhone。今回はそのiPhoneを情報活用ツールとして使うための、様々なライフハックについて検討してみました。

モバイルデバイスでの情報整理

佐々木 最近はパソコン上だけではなく、iPhoneみたいなモバイルデバイスでも情報収集をしているんですよね?

ええ、パソコンの前でやってもiPhoneでやっても同じことは、なるべくiPhoneですきま時間にできないものか挑戦中です。ただ、モバイルデバイスというと、最近は高機能になって「パソコンと同じことができる」というのが売り文句のようになっていますが、実際にパソコンと同じ量の情報を効率的に消化しようとしても無理がありますよね。

佐々木 では、モバイルデバイスで情報収集・整理としては、どんなことをやるのがいいと思いますか?

やはり、オフィスに行く前にちょっとだけ情報収集の先取りをする、あるいは帰宅するときに、オフィスでは時間がなくて見られなかったものをチェックするというように、タイムシフトのツールとして使うことを意識するほうが、モバイルデバイスの真価を発揮できるのだと思います。

佐々木 堀さんは、それぞれの目的で、どんなアプリケーションを使っていますか?

BylineとInstapaper

前者についてはいろんな候補があると思いますが、定番のBylineを利用しています。これはGoogle ReaderとシンクロするRSSリーダーで、オフラインで利用することもできるので、記事を読み込んでおいて、電波の通じない場所で読み進めるといった利用法に便利です。

BylineではRSSの中の画像を読み込んでもよいですし、文章だけを読むこともできますので、どれだけ急いでいるかによって使い分けることができます。ただし、いくらBylineでも未読RSSをすべて読むのは非効率的ですので、第2回で紹介したように、優先順位でランク付けされたフォルダのみを読むような戦略をとるのがいいでしょう。そうすると、とたんに短い時間でも情報のエッセンスを抜き出せるので気持ちいいですよ。

Bylineの同期中の画面

佐々木 なるほど。では後者の、帰宅するときには。

オフィスで見られなかったもののチェックには、Instapaperがいいでしょう。Instapaperは日本でいう「あとで読む」に近いサービスなのですが、出先で読む目的で、ウェブページを印刷して持ち歩いたことがある人なら、Instapaperを使うポイントをすでに心得ています。つまり「ちょっと帰り道に読んでおこう」というタイミングに便利なツールなんです。

Instapaperで保存したページのリスト

佐々木 Google Readerの英語版を使っていれば、Send to機能でInstatpaperに記事を送ることができたはずですね。

ええ。最近、長い記事を読むことが少なくなっていたのですが、Instapaperを使うと、長い記事で最も読みたいものをiPhoneに送っておいてゆっくり読むことができます。

佐々木 するとInstapaperは、長い、クオリティの高い記事を読みたいときにいいですね。

第1回で紹介した『1000件 10分法』で、あらかじめすごく興味がひかれるものを選んでおいて、あとでゆっくりよむためのツールがInstapaperなのです。ふだんウェブを読んでいて、「あとで読みたい」と思った記事などがあったら、Instapaperのブックマークレットを利用すれば、すぐにその記事の文章部分だけを抜き出して登録しておくことができます。

Instapaperの魅力は、いろんなツールがそれに対応している点です。たとえば、TwitterifficのようなTwitterクライアントや、ブログのブックマークリンクにもInstapaperに対応しているものが増えていて、ウェブのデフォルトの「あとで読む」サービスになる日も近いのではないかと思います。

忙しい時間と暇な時間を交換できる

佐々木 これはつまり、テキスト情報のタイムシフトですよね。放映時間に縛られないように、あらかじめ番組を録画して、空いた時間に視聴するという。

そうですね。iPhoneをはじめとするモバイルガジェットは「忙しい時間と暇な時間を交換する」という使い方を意識することで、日頃利用できていなかった時間や、こんな場所で情報にアクセスできると思っていなかった場所を活性化してくれるツールなのです。

佐々木 忙しい時間と暇な時間を交換する、というのはいいですね。理想的なライフハックだと思います。ところで、iPhoneのInstapaperには無料版と、600円の有料版がありますが、両者の違いというのは何ですか?

有料版は記事を250個まで保存できたり、iPhoneを傾けると自動スクロールするなどの便利な機能を使えるのでだんぜんお得です。

佐々木 なるほど。今週もいろいろとありがとうございました。私は、無料のInstapaperを使っていましたが、有料版を使い込んでみたいと思います。

対談後記(佐々木正悟)

対談中に出てきた「忙しい時間と暇な時間を交換する」というのは、ライフハックの基本だと思います。生きている限り、時間が本当の意味でなくなるということはないわけですが、代わりに私たちは、常に「時間切れ」という問題を抱えて生活を送っています。子供の頃には「早く食べなさい」「早くお風呂に入りなさい」「早く寝なさい」という「時間切れ」に迫られていたはずです。強制的な優先順位があるために、常に限られた時間の中でやることを選択し続けなければならない私たちは、巧みなタイムシフトを助けてくれるツールを重宝するわけです。

佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト

「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。

ブログ「ライフハックス心理学」を主催

堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者

1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」(日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2(技術評論社、共著)がある。「ブログ Lifehacking.jp を主催」。