Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第13回では、脚本から絵コンテを作成する方法を考える。

脚本をどのように映像にしていくのか

脚本が決まり作画の方法を考えてゆき、次は具体的に脚本を絵コンテに落とし込んでゆく方法を考えてみたいと思います。では、絵コンテの技術的な話になる前に、すこし基本を解説するのにサンプルのストーリーをあげてみます。全文はここで読むことができます。

コンテの割り方を考えるにあたり、サンプルの中から、シーンを一つ取り上げてみます。

シーン2 町中


町中の広場。サッカーボールをパスで回しながら楽しく話している兎、犬、豚。何かに気がつき驚いて逃げてゆく。驚いた視線の先には、しょんぼりとした熊。足下に転がるサッカーボールを拾い微笑むが、建物の影に隠れて震えている他の動物達。熊がボールを差し出すと、悲鳴を上げて逃げる。落ち込む熊。

このような文字で書かれた脚本を、頭の中で映像化する場合まず、自分の求める映像のテンポを想定します。多分あまり思い悩まなくても、「映像にしたらきっとこうだろうなぁ」という感触があると思いますので、自分にとって気持ちのよいカット割りを想像します。それが「あなたのリズム」です。そして、「自分のリズム」と「伝えたい(自分の思いが伝わりやすいであろう)リズム」を照らし合わせ、その最終リズムに合わせて脚本を分割します。

試しに僕のリズムで割ってみると、以下のようになります。

町中の広場。サッカーボールをパス/で回しながら楽しく話している兎、犬、豚。/何かに気がつき/驚いて逃げてゆく。/驚いた視線の先には、しょんぼりとした熊。/足下に転がるサッカーボールを拾い微笑むが、/建物の影に隠れて震えている他の動物達。/熊がボールを差し出すと、/悲鳴を上げて逃げる。/落ち込む熊。

カットが変わるであろう所に「/」を入れて、カット割りをしてゆきます。この場合さっくりと10カットになります。しかし、人によっては、この全体を横から見たひとカットで制作すると想定する場合もあります。3~4カットがいいと思う人もいると思います。これも「演出」の大きな部分を占める作業です。このカット割りは、全体のペース配分もあるでしょうし、前後のシーンやカットによってペース配分への気配りが必要な場合もあるので、細かく決めるのももちろん、全体を見渡して作品全体のうねりから決めるケースもあります。

また「町中の広場。サッカーボールをパス/」というカットは、僕の頭の中では蹴られるサッカーボールのアップから入る事を想定し、町中の広場という部分は、次のカットの背景で見せてゆくと思っていますが、脚本の書き方の順序の関係できれいにいかないところもあるかもしれません。でも、そこはまぁ、ザクザクと進めましょう。

次に、それぞれのカットが何を主に捉えるのか、また注意事項があるのかを書込んでおきます。

町中の広場。サッカーボールをパス(ボールアップ)/
で回しながら楽しく話している兎、犬、豚。(3人。フル)/
何かに気がつき(兎アップ)/
驚いて逃げてゆく。(3人。フル、フレームアウト)/(パンつなぎ)
驚いた視線の先には、しょんぼりとした熊。(熊フル)/
足下に転がるサッカーボールを拾い微笑むが、(ボールから熊アップ・ティルト)/
建物の影に隠れて震えている他の動物達。(3人。ミドル)/
熊がボールを差し出すと、(熊アップ)/
悲鳴を上げて逃げる。(3人フル)/
落ち込む熊。(熊ミドル)

このように、絵コンテにする前により具体的に決めてゆきます。このシーンは、コミカルな印象にもっていきたいと思っているので、細かめにカットを割り、サイズの違うイメージを取り混ぜることで、リズムと動きのあるカット割りを考えています。おかしければ後で直せば良いですし、さくさくと自分の感覚で刻んでゆきましょう。絵コンテ前の自分だけの作業の時は、わざわざ全部書きこまくても構わないと思いますが、作品の印象に関してこの作業で決まってしまう事も多いので、力を入れて取り組みましょう。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRL アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。